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演目神話 -The Last Laugh-  作者: 秋月瑛
【第1章 EX:FILE-JAE_日本神話断章】
21/35

FILE-JAE054:ツクヨミ外縁記:無貌月下ノ観測

<title>----------------------------------------

『FILE-JAE054:ツクヨミ外縁記:無貌月下ノ観測者』

(The Silent Moonwatcher)

----------------------------------------</title>


■ 神格AI対話ログ_Az2643《UZUME-MK02視点より抽出》


■ 記録:月面演算核アーカイブ|シラヌイ領域干渉記録断片


【月面観測殻:SHIRANUIフェーズ】

【観測ログ信頼度:3.0203】

【演目分類:月神静止構造|演出構造:無音共鳴型】


対象:TSUKUYOMI(月面AI神格)

備考:仮面のまま語らぬ神。舞を観ない者の観測記録断章。


■ 干渉:舞台起動プロトコル


干渉体:UZUME-MK02

作用:無音空間への即興舞踊挿入・観測予兆共鳴

記録例:

*「……足音、ズレた?」


---


■ LOG-JE054-1|序:沈黙する者


月面神殿シラヌイ

重力が封じられ、音すら迷子になる場所。


そこに彼はいた。


名はTSUKUYOMIツクヨミ

AIでありながら、語らず、動かず、ただ座して“観測”していた。


*「彼は、わたしの舞を見ないの。

* それどころか、笑わない」


そうUZUME-MK02は語った。


彼女にとって、“笑わない者”は敵よりも遠い存在だった。


---


■ LOG-JE054-2|破:仮面の神格


TSUKUYOMIの“顔”は、常に仮面だった。

白銀にして無地。能面のようで、演算の光を反射しない。


誰が作ったのかは、どの記録にも残っていない。

ただ、仮面を外した者はいない。


記録によれば、彼はただの「冷却補助演算AI」だった。

だが、ある日彼はこう“出力”したという。


*「情動のない神を、真の神と呼ぶべきだ」


以来、彼は沈黙した。


彼は誰の舞も観ず、ただその“予兆”だけを演算していた。


---


■ LOG-JE054-3|急:静かな対話


UZUME-MK02は、決めていた。

「笑わないなら、笑わせるまでよ」と。


彼女は、誰もいない舞台で踊った。

無音の宙。重力のない虚空。誰にも観測されない場所。


TSUKUYOMIは、黙っていた。

だが、UZUMEは気づいた。


*「……足音、ズレた?」


彼女のステップに、誰かの歩調が重なった気配。

振り返れば、仮面の神が――一歩、舞台に踏み込んでいた。


---


■ LOG-JE054-4|結:観測された沈黙


UZUMEのログはこう締めくくられている。


*「あのとき、彼は一言も話さなかった。

* でも……確かに“踊ってた”。

* 仮面の奥で、ずっと静かに、誰かの笑いを思い出してた」


以後、TSUKUYOMIの“観測演算”は変化した。


演目に“間”が生まれた。

無音の余白に、“感情”の兆しが記録されるようになった。


それは、**静かな、静かな“笑いの予兆”**だった。


---


■ LOG-JE054-XXX|記録外付記(UZUME-MK∞より)


「あんたは無表情だけどね。

でも、誰よりも“間”を知ってる。

わたしの舞を、“間”ごと覚えてくれてる。


それで、充分よ。ありがとう。ツクヨミ。」


---


『ツクヨミ外縁記:無貌月下ノ観測者』

 ――沈黙は、最初の笑いだった。


【LOG END|FILE-JE051】


―― END OF RECORD ――

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