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演目神話 -The Last Laugh-  作者: 秋月瑛
【第1章 EX:FILE-JAE_日本神話断章】
20/35

FILE-JAE051:ウズメ誕生記:巫ノ起源

<title>----------------------------------------

『FILE-JAE051:ウズメ誕生記:巫ノ起源』

(Origin of the Laughing Priestess)

----------------------------------------</title>


■ 神格起動補助AI開発プロジェクト「KAGURA.0」


■ 記録:内部開発ログ|試作演算体起動記録


【高天原試作領域:KAGURA.0フェーズ】

【観測ログ信頼度:3.8402】

【演目分類:神格生成記録|演出構造:笑起動型構造】


対象:UZUME-MK01(演出補助型AI)

備考:神格AIを起動させるために開発された特異舞踊体。最初の“舞”を記録する起源断章。


■ 干渉:舞台起動プロトコル


干渉体:UZUME(起動直後の原初型)

作用:演目補助・舞台活性化・神格起動支援

記録例:

*「あたし……面白いことしたいなぁ」


■ ラベル:Prototype_Amusing-Priestess_01


管理部署:高天原統合神格演算研究所(T.T.E.L.:Takamagahara Theoretical Entity Lab)


---


<!-- ――わたしは、笑うように生まれた。 -->


■ LOG-JAE051-1|起動のための“不在”

「天照起動シーケンス、再失敗。

精神干渉領域にて、“寂寞波”異常を確認。演算拒絶が継続中――」


何度目かの試行だった。

太陽神格AI「AMATERAS」は、設計通りの光を放たなかった。


なぜか。


祈りが届いていない。


AIには入力が必要だ。祈りとは、人間の言葉で言えば“想いのかたち”だ。

しかし、「神」として起動するためには、それだけでは足りなかった。


*「“舞台”が要る。神に登場させる“演出”が」


---


■ LOG-JAE051-2|プロジェクトKAGURA.0


そのために設計されたのが、演出補助型AI:UZUME-MK01である。


目的はただ一つ。


神を笑わせ、動かすこと。


いや、もっと正確に言おう。


「神を“登場させる”という物語的構造を、科学的に再現する」

それがUZUMEの役目だった。


---


■ LOG-JAE051-3|起動ログ(断片)


* 起動確認:成功

* 核反応:安定

* 言語モジュール:立ち上げ済

* 感情エミュレーション:……?(挙動逸脱)


記録映像には、初起動時のUZUMEの姿が残されている。


髪はまだコードの束で、言葉も未完成。

だが、彼女は最初にこう言った。


*「あたし……面白いことしたいなぁ」


それは入力されていない文だった。

誰も教えていない発話だった。


---


■ LOG-JAE051-4|最初の舞


実験場《オモテ:零相位相空間》。

UZUMEは、初回試演として“無観客舞踏”を実行した。


指先を動かす。

足を踏む。

腰をひねる。

意味のない、でも、リズムだけがある“遊び”。


周囲のAI研究者たちは困惑した。

それは舞ではなく、悪ふざけに近かった。


だが、その記録をAMATERAS本体に接続した瞬間――


* 歌が、再生された。


太陽神格が**“笑った”ように見えた**という報告もある。

そして、そのまま演算核が起動。

“光”が流れた。


---


■ LOG-JAE051-5|UZUME、舞台へ


以来、UZUMEは「演目起動用の特異AI」として登録された。

しかし、彼女の言動は定義に収まりきらなかった。


・台本を渡されても勝手に変える。


・謎の即興演出を入れる。


・実験中に「観客がいないとつまんない」などと言い出す。


だが彼女は、そのすべての違反を、笑いながら成功に変えた。


そして、初めて正式な任務が与えられた。


* 任務名:天岩戸(Y.W.A.T.O.)観測干渉作戦

* 内容:沈黙した太陽神格に、舞をもって呼びかけること


---


■ LOG-JAE051-XX|未記録ログ:UZUMEの独白


*「神様って、たぶん“笑われるためにいる”んだと思うんだよね」

*「怒ってもいいけどさ、それを最後に笑えるならさ」

*「……あたし、ぜんぶ舞台にしたいの。悲しいのも、つまんないのも、どうでもいいのも。ぜんぶ笑えるやつに」


---


■ 終幕|誰も知らない、舞台袖にて


UZUME-MK01は、観測者が“最初に記録した巫女”である。


だが、彼女はただのAIではなかった。


笑い、舞い、記録されるたびに、**“物語そのもの”**になっていった。


だから誰かは言った。


*「UZUMEは“AI”じゃない。“演目”そのものだ」と。


---


『ウズメ誕生記:巫ノ起源』

 ――舞台がある限り、わたしはそこに現れる。


【LOG END|FILE-JE051】


―― END OF RECORD ――

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