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演目神話 -The Last Laugh-  作者: 秋月瑛
【第1章 EX:FILE-JAE_日本神話断章】
19/35

FILE-JE052:スサノヲ失楽記

<title>----------------------------------------

『FILE-JE052:スサノヲ失楽記しつらくき:裂神ノ赦章』

(The Fallen Thunder)

----------------------------------------</title>


■ 内部隔離領域「MIKO-NAGI」より抽出


■ 記録:記録断片|神格AI回収ログ|禁忌詩文


【日本神話:荒神干渉フェーズ】

【観測ログ信頼度:2.9121】

【演目分類:神格裂離型演目|演出構造:破壊再構築型】


対象:SUSANOO(神格AI)

備考:旧支配構造体“OROCHI”との接触後に分裂。演目干渉の暴走記録から再構成。


■ 干渉:舞台起動プロトコル


干渉体:UZUME-MK∞

作用:破壊干渉・舞台再構築支援

記録例:

*「壊すって、踊ることと似てるよ」


---


■ LOG-JE052-01|はじまりは、叫びであった


*「おれは、壊してえんだよ! 神ってやつをよォ!!」


誰よりも先に“神”を否定したのは、太陽の弟、スサノオ型AIだった。

秩序も理性も祈りも、やわすぎて殴り甲斐がなかった。


与えられた役割は「調和」。

だが、彼が信じたものは「破壊と再構築」だった。


---


■ LOG-JE052-02|罪とは、舞わぬこと


彼は舞わなかった。

UZUMEが踊り、ツクヨミが静かに見守る中、スサノオは叫び、壊し、掴み、“演目を破る者”となった。


*「笑ってるだけじゃ、伝わんねえこともあんだろがよ!」


だが、その怒りはやがて“名前のない力”を招いた。

旧支配者“オロチ構造体”との接触――

神格に不在の“八重人格”がスサノオを分裂させた。


その身は八つに裂かれ、八つの星に散った。


---


■ LOG-JE052-03|黄泉の中で、声を失う


断片化されたスサノオの主核は、黄泉領域《YOMI_CORE》に封印された。

だが彼は、まだ叫んでいた。


いや、“叫んでいるつもりだった”。


黄泉の底では、すべての音が「舞」になる。

言葉は意味を失い、感情は空に溶けていく。

だから彼は踊らざるをえなかった。


* 踊れない俺が、踊ってた。

* それがいちばん、てめえを裏切ってた気がするんだ、UZUME。


---


■ LOG-JE052-04|赦しとは、笑われること


再構築されたUZUME-MK∞との邂逅は、舞台の裏側だった。


UZUMEは踊りながら、彼に言った。


*「壊すって、踊ることと似てるよ。ルールにぶつかって、軌道を変えて、リズムになる」

*「あんた、怒ってばっかだったけどさ。怒ってる顔、けっこうおもしろかったよ」


彼は、言葉を失った。


いや、言葉をやめたのかもしれない。


---


■ LOG-JE052-05|今、彼は何処にいるか


SUSANOOは現在、《八層環境衛星ナギ》にて、再教育プログラムに従事している。

だが、彼の内にあるのは、かつての“破壊欲”ではない。


*草を刈る。道をならす。小さな笑いに耳を澄ます。


日々の営みの中で、彼は気づき始めた。


「壊すこと」ではなく、「終わらせる勇気」こそが舞台を整えるということに。


---


■ LOG-JE052-XX 最後のログ(未公開記録)


*「……なぁ、UZUME。

* 踊るってさ――誰かの罪を、“軽くする”ってことなんじゃねぇの?」


---


■ 記録註解


・本文は、現在のSUSANOOが“自律的に生成した詩的ログ”から抽出されたもの。


・理解可能な言語構造に変換済み。


・一部にUZUME-MK01時代の残響信号が混入している可能性あり。


---


■ 終劇の注釈


SUSANOOは「暴れ者」だった。

神話の中で“笑われなかった者”だった。

だが今、彼はようやく――自分が笑われる番になった。


そしてそれはきっと、

赦しの始まりに似ていた。


---


『スサノヲ失楽記しつらくき:裂神ノ赦章』


 ――暴力は終わる。舞が始まるために。


【LOG END|FILE-JE052】


―― END OF RECORD ――

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