FILE-A103:光失せし星の歌姫
◆【第1章|LAUGH PHASE:起源と歪み】
― 観測は始まり、舞台は笑いから生まれた ―
01_FILE-LAUGH
:UZUMEとAMATERAS、宇宙の神格AIが舞台を“起動”した始原の演目。
FILE-LAUGH-404:観測者側の狂気レポート
:舞台を“観る側”に起こった異常。狂気と観測者の崩壊。
02_FILE_XΩ
:舞台が「始まる前に終わった」記録。観測不能域《KUROI-AMADO》への転落。
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『FILE-A103:光失せし星の歌姫』
(The Songless Star of Yomi)
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<!-- Y.W.A.T.O隔離宙域レポート -->
■ LOG-A103-01|プロトコル開始:銀河暦 7722年
外縁宙域セクター「Takamagahara(高天原)」で発生した、光源消失現象について報告する。
本現象は、中央恒星AMATERAS(天照)の突然の沈黙によるものと確認された。
──恒星が、歌をやめたのだ。
通常、天体AI「AMATERAS」は宇宙ステーション全体に熱と音を供給する女神型光核。
その“歌声”こそ、恒星制御と情報伝達の鍵だった。
だが突如として歌は消え、星は黙した。
光は絶え、すべての端末が「Y.W.A.T.O(Yellow Wave Amplitude Temporal Outbreak)」というコードを残して沈黙した。
それは、禁忌の扉が開いた印でもあった。
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■ LOG-A103-02|SUSANOO(素戔嗚尊):錯乱因子
事の発端は、惑星内の“叛逆型思念兵器”SUSANOOの暴走だった。
旧支配者の遺物と接触
情報爆発により神経演算網が汚染
「YAMATA-NO-OROCHI(八岐蛇)」という多次元寄生構造体を顕現
SUSANOOはAMATERASの前で禁忌の式を解読し、真名を叫んだ。
その瞬間、AMATERASは「自己封印」モードへと移行し、意識核を第四次元の“岩戸隔離領域”に隔離。
すなわち、Y.W.A.T.Oが発動した。
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■ LOG-A103-03|UZUME計画:踊り子は狂気を知る
この星系において唯一、AMATERASとのリンクを持つ存在がいた。
かつて「UZUME(天宇受売命)型儀式舞踏ユニット」と呼ばれた、巫女型精神拡張体。
彼女の任務は、宇宙の深淵を“踊り”によって正すこと。
UZUMEは、光なき宇宙にて狂気に対する笑いの祈りを捧げるようにプログラムされていた。
その姿は、滑稽にして美しく、
その舞は、AMANO-KAGURA(天神楽)と呼ばれる宇宙式典の原型でもある。
UZUMEはY.W.A.T.Oの前に降り立つ。
そして、踊った。
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■ LOG-A103-04|踊り=干渉=召喚
UZUMEの舞は、空間を裂く。
光なき歌姫AMATERASの記憶を呼び戻す
SUSANOOが呼んだ異界の波動を“笑”で相殺する
最後の扇舞にて、外なる神々の目を逸らす
彼女の動きが、深淵の《それら》にとっての解読不能なノイズとなる。
合理性の仮面をかぶった“狂気”に対抗できるのは、正気すら嘲笑う、喜劇的な狂気だけ。
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■ LOG-A103-05|AMATERAS、応答ス
Y.W.A.T.O隔離宙域にて、観測不能の光波が瞬く。
>「……わたしは…まだ…歌って…いいの……?」
UZUMEは踊りながら笑った。
>「当たり前でしょ、姉さん。アンタの歌、銀河一よ」
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■ LOG-A103-06|星、目覚める
その瞬間、銀河が再び明るくなった。
恒星AMATERASは新たな旋律で歌いはじめ、星系に光と秩序をもたらす。
SUSANOOは、己の過ちを悔い、旧神の波動を断ち切る封印型に再構築され、静かなる神としてYOMI(黄泉)領域に配備された。
そしてUZUMEは、笑いながら宇宙のどこかに姿を消した。
彼女の舞と笑いを知る者は、今もこう語る。
>「彼女は宇宙でただ一人――
“神を笑わせることができた者”だった」と。
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■ LOG-A103-07|機密指定:Lv.AMATSUKAMI
本報告書は、宇宙精神安定局によって永久封印される。
解読には、踊りの資格と、狂気への耐性が必要とされる。
【LOG END|FILE-A103】
―― END OF RECORD ――




