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戦利品

 ハイオークを倒し、翌日になってから再び組合の隣にあるカフェで集まると、昨日得た戦利品を分けることにした。

 

 ハイオークは中間階層主である。それでも一段階のボスであったゴブリンリーダーよりも手ごわく感じた。

 恐らく種族差によって強さは変わるようだが、一般的には一段階の迷宮主と二段階五層の階層主は強さの強度はそれほど変わらないとされている。

 二段階の階層主よりも強い一段階の迷宮主はいるし、その逆もしかりだ。

 

 ハイオークからドロップしたアイテムは武器である短剣だった。

 ハイオークたちは誰も短剣など装備していないし、パーティーの誰も短剣は使用しない。

 迷宮内で落ちるアイテムは基本的にパーティーのメンバーが使用する装備や、魔物から得られる特有のユニーク装備などが入手することが、運が良いとされる。

 確率としてはまちまちで迷宮や魔物にもよるが、使用しない装備などが落ちるのは運が悪いとされる。

 もちろん装備しない物も、売りに出すことはできる。

 簡易迷宮で得られる装備というのは、カードでドロップするのがほとんどだ。カードで入手したものなら、売買することが可能だ。

 購入した人物が、カードを使用し装備を入手するとその人の身体に合わせてサイズが調整されることになる。そして他人が使おうと思っても、迷宮で得られる超常の影響力は得られない。

 カードに書かれているような、能力が上昇したり、攻撃力があがったりするような効果は、カードを使用した本人しか恩恵を受けることができないのだ。

 

 

「この短剣は売ることでいいかな?」

 

「誰も使わないしね」

「私もそれでいいです」


「一応青色だから、結構レア度高いよね。それなりの金額になるかも」

 

 タブレットで調べてみると、同じような性能の短剣が一本、十万円という結果が出た。

 

「どんな効果なんですか?」


「一応、器用さと攻撃力上昇というのが効果として書いてある。数字が13」


「数字はそれだけ上がるってことですか?」


「いや、多分違うと思う」


 カードの裏面を見ると、効果が表示されている。

 その効果のほどがどれだけ上昇するのかは分からない。一説ではレア度によって効果のほども変わるというが、実際には分かっていない。

 数字もそれが何に値するのかは分かっていない。迷宮の深度、つまり段階が進むごとに数字も増えていく。その数字が高ければ高いほどいいアイテムだとされているが、それらの数字がなにに関係しているのかもわかっていないのだ。

 

 細かい数字や効果量などが分かれば、もう少し装備の選択も楽しくなると俊太郎は思うのだが、そういったことが出来るとは聞いたことがなかった。

 

 

 それから他のアイテムカードも並べる。これらは装備ではなく消耗品などがほとんどだ。

 

 ポーションが二つにマナポーションが一つ。体力値と魔力値を回復してくれるものだ。二段階からはそれなりにドロップするもので、それほど売値も高くない。これらはいざというときに取っておく。

 

 職業カードが全部で五つ。それぞれ剣士、魔法使い、戦士、見習い神官、斥候である。

 基本の職業で、組合にも売ってるものだ。

 一番初めに迷宮に潜るときに持っていた武器によって職業が決まる。剣であれば剣士、杖であれば魔法使い。短剣などであれば斥候になると言われている。

 そしてこれらの職業カードはあまり高くない。組合で買い取りをしてもらうことが出来るが、おそらく一枚千円もしないものだ。

 

 そして深界石が全部で三十個ほどだった。半日の稼ぎにしては多い。


 組合の受付にもっていき、ポーションと短剣以外を買い取ってもらう。

 数分待ってから、呼び出しがかかりお金を受けとる。

 

 全部で二十万ほど。ハイオークが落としていった深界石が大きく、ひとつで五万円ほどの値段がついた。

 

 一度現金で受け取ると、封筒に入れ二人に渡す。

 

「とりあえず今回は三分割にしよう」


「いいんでしょうか」

「そうね。私はもっと少なくていい」


「いや、ここから生活費を抜いて、消耗品や装備の代金に充ててほしい。少なくていいと思うならその分、装備代にするのは君らの自由だよ。組合の口座に入れておけば装備を買うときに引き下ろすのは簡単だから」

 

 俊太郎は一万円と端数を抜いて、あとは口座に入れた。二人もいくらか口座に入金したようだった。

 

「それと短剣はどうするの?」


「ああ、それも手続きを済ませてしまおう」


 組合の受付で、装備の売買登録も行ってくれる。探索者として登録された識別名と合言葉であるパスワードを入力すると、職員が手続きをすませてくれた。

 自分で済ませることも出来るが、どのみちストアのアプリに登録されたアイテムはそのまま引き渡すことになる。

 引き渡しを行うと、最終確認が行われて組合側から正式な登録が行われるようになった。

 

 売り上げの分け方は、入金されてから考えようとあきらめることにした。

 

 

 組合で面倒な手続きを終えた俊太郎たちは、迷宮に向かうことになった。

 この日は土曜日で昼から集まって長く活動できる日でもあった。

 

 電車に乗り二駅のところで降りるとまず近くにある組合に向かった。

 そこで届けられていた紫雨の刀を引き取る。公共交通において探索者の武器になる物は持ち歩けない。例外は魔法使いなどが使う腕輪や杖などは問題ないが、剣や刀など迷宮でなくとも武器となるものは当然持ち歩くことはできない。

 申請を出せば持って帰ることはできるし、交通機関などに頼らなければケースなどに入れておけば問題ない。

 

 組合から出ると迷宮に向かう。向かう先は大蜘蛛やスケルトンが出現する迷宮で二段階のものだ。

 オークの迷宮で二段階を完全攻略するのも良いが、あらかじめ大蜘蛛とスケルトンとは戦っておきたかった。

 

 

 大きな通りの両端には店が立ち並んでおり、そこを歩く人々の数も多かった。

 小さな店がひしめき合い、中にはどんな店かも想像がつかないような妖しい店も存在した。

 

 

「ここかな」


 そう言う俊太郎にも自信はなかった。二階に上がる階段があるが、何の店かも分からない。

 狭苦しい階段は段差が高く歩きにくい。壁にはポスターの貼ってあった後のようなものが残っている。

 二階の扉が迷界の入り口その物になっているようだ。立ち入り禁止の看板が立てかかっており、そこを抜けて鍵を開けた。

 鍵は組合で渡されており、入ったらすぐに閉める必要がある。

 

 

 中に入ると、建物の中だった。まだ迷宮内ではないのかと一瞬思ったが、感覚としてはもうすでに迷宮の中だと分かってしまう。

 雑多な匂いが消え去り、迷宮特有の不思議な匂いをかすかに感じた。

 実は深界石からもこの匂いを感じることがある。

 

 

 迷宮の内部は、古びた館ような内装がある。天井には照明のようなものがあちこちにあるが、あれから光があふれているのかいないのか、不思議と光に満たされている。

 

 初めの部屋には魔物は現れない。装備を整え、準備をする。腰にはカードを入れるためのポーチを装着する。そこにポーションなどのカードを入れておくのだ。必要なときにカードの絵が描かれている部分を押すと現物が現れる仕組みだ。

 不思議なものだがアイテムカードというのはそういうものである。

 

 俊太郎はポーションカードの一つを日菜子に渡した。日菜子が一番手が空いている。俊太郎も持つことにしたが、俊太郎が動けないときは日菜子が、日菜子が動けないときは俊太郎がポーションを使う。

 当然そうならないように気を配らないといけないが、迷宮内では何が起こるか分からない。

 紫雨にも渡したいが、ポーションが足りない。購入しても良かったが、今回はこのままいくことになった。


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