嘗ての自分
昔の自分と原田を重ねた俺は余計なおせっかいをする。この状況を変えられるのは他人じゃない。彼自身なのだ
「原田。話したいことがある。少しいいか?」
原田は戸惑いながら
「うっうん。わかったよ。」
少しおびえながら俺たちは教室を出た。
人のあまり来ない図工室の前で面と向かって話すことにした。
「原田、なんでいじめられてるのにやり返さない。」
「だってみんな強いし。僕なんかじゃ絶対勝てないよ。」
もし彼がこのまま、いじめられたら引きこもりになってしまうだろう。
「勝つか負けるかはどうでもいい。拳を握ってグループの一番強い奴をぶん殴れ。」
「できないよ……」
「するんだ。でないと何も変わらないぞ」
俺自身がそうだった。教師に言いつけるなんて生ぬるい方法じゃダメなんだ。
目には目を歯には歯を。自分を辱める相手にはそれ以上の屈辱を……
「俺は格闘技のジムにいってるんだけど原田も入れよ。」
「僕が?」
「ああ、大丈夫お前なら強くなれる。」
「本当に……?」
「約束する。」
俺はそう言い残しその場を去った。あとは原田しだいだ。俺にもできることは限られている。
彼が野生動物の子供のように自分で立ち上がるのを見守るほかない。余計な行動はかえって彼の立場を悪くする。
教室に戻ると加藤が残って掃除をしていた。
「加藤、放課後時間あるか」
「えっ、もしかして、デートのお誘い?」
「ああ、ちょっと話したいことがある」
「やったー、もちろんOKだよ。」
よし、これで彼女と仲良くなれば他の女子とも仲が良くなるはずだ。こうやって地道にコミュ力を上げていくのだ。
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