【暗殺者の女 part14】
「『あらら』」
貴婦人が首を傾げる。暗殺者の片腕がまる霧のように拘束をすり抜けたのだ。その現象に初めて怪物の表情に困惑の色が浮かぶ。頑丈な触手が多少の抵抗で獲物を逃すとは考えにくい。
拘束から解き放たれ俊敏な動きで暗殺者は距離を確保する。ただしこれまでのように逃走する素振りは見せない。真っ直ぐ怪物を正面から見据える。その動作や気迫は先刻までとはまるで別物。
砕けた【夜父の面】を脱ぎ捨て暗闇に投げ飛ばす。仮面の恩恵を完全に失い感情が溢れ出る。勿論その涙が止まる事もない。だがその瞳は力強く敵を睨みつける。
(以前の私が見たら笑うだろうか。何が恋だ。馬鹿みたいだ。くだらない。弱くなってるだけじゃないか。だが、それも否定しようのない私の一部だ)
暗殺者が臨死体験による覚醒状態の中で辿りついた一つの答え。それは自らの内なる悲しみを拒絶することなく。
ただ愛しい思い出と共に別れを受け入れることだった。
「『我こそは死者への手向け。 人の生は産まれ老い塵へ帰る。 しかしその輝きをこそ愛しく想う。 私を一瞬の君に捧げる。 ありがとう。 君が何よりも愛しかった』」
それは決別の【断章】。生まれ死にゆくすべての命を祝福しその一瞬への愛しさを肯定する鎮魂歌。それが終わりあるものである事、その美しさを讃える弔いの術式。その効果は単純であった。スキルの詠唱省略。言うなれば自動発動。
そして今、暗殺者の三十ニ年間蓄積され続けた膨大な量の顕能が起動する。
スキル【消音】を適用。もの音を立てにくくなった。スキル【気配遮断】を適用。相手に存在を悟られにくくなった。スキル【斥候】を適用。敵状を把握しやすくなった。スキル【密偵】を適用。視覚範囲が広くなった。スキル【沈黙】を適用。自身に無音状態を付与。スキル【生命探知】を適用。生命を遮蔽物越しに知覚できるようになった。スキル【感覚敏化】を適用。自身の五感が鋭くなった。スキル【隠蔽】を適用。自身の情報を相手は把握しにくくなった。スキル【秘匿】を適用。自身に正体不明を付与。スキル【夜父の加護】を適用。精神汚染に耐性がついた。スキル【加速】を適用。敏捷が上がった。効果は時間毎に累積する。スキル【透過】を適用。身体の一部分に透明状態を付与。スキル【疾走】を適用。敏捷が大幅に上がった。スキル【疾駆】を適用。装備重量及び身体重量の影響を受けなくなった。スキル【回帰】を適用。被ダメージ時一定確率で自身の分身を生み出せるようになった。隠密ボーナスにより確率上昇。スキル【断罪刃】を適用。自身に罪人特攻状態を付与。スキル【叫ぶ鎖】を適用。使用する投擲武器の速度が上がった。スキル【終の誘惑】を適用。死の状態異常を付与する。一定値を超えると効果が発現する。スキル【死の宣告】を適用。敵対状態の相手の死の状態異常値がたまりやすくなる。スキル【死告天使】を適用。一定確率で敵の攻撃を無効化する。この効果はクラススキル【影の祝福】の熟練度によって強化される。スキル【告解】を適用。相手に攻撃する際部位別の耐久性が確認出来るようになる。スキル【浄化】を適用。自身に闇属性特攻を付与。スキル【煉獄の宴】を適用。攻撃を回避した際攻撃力が上昇する。この効果は累積する。スキル【天と獄】を適用。被ダメージと与ダメージを上昇させる。スキル【永遠の眠り】を適用。睡眠の状態異常を付与する。一定値を超えると効果が発現する。スキル【生命の警鐘】を適用。残り体力が低いほど敏捷が上がる。スキル【宵闇の使い】を適用。発見された状態でも隠密ボーナスを維持する。スキル【乱舞】を適用。攻撃が連続するほど攻撃が上がる。スキル【夜の女王】を適用。魅力が大幅に上昇する。スキル【影の主人】を適用。影を操作して攻撃出来るようになる。スキル【暴虐】を適用。一定確率で相手の武器を奪う。この効果は隠密ボーナスに依存する。スキル【夜霧の射手】を適用。天候による悪影響を矢が受けなくなった。スキル【月化粧】を適用。時間帯が夜の場合隠密ボーナスを付与する。スキル【漆黒の旋律】を適用。隠密状態時消費魔力が零になる。スキル【毒蛇の牙】を適用。自身の攻撃に猛毒状態を付与。スキル【移りゆく影】を適用。影の中を移動出来るようになった。スキル【修羅】を適用。攻撃力を大幅に上昇させ攻撃行動以外を封じる。スキル【血の祝福】を適用。撃破した敵の数に応じて攻撃力が上昇した。スキル【純血】を使用。自身の攻撃に出血状態を付与。スキル【夜父への供物】を適用。隠密状態時ダメージをくらう代わりに無敵状態を付与。スキル【骸の詩】を適用。撃破した敵の数に応じて体力を回復し続ける。スキル【黒の夜】を適用。周囲を暗闇で包み込む。スキル【鷹目】を適用。弓による攻撃力が上昇する。スキル【凶手】を適用。幸運が低い敵特攻を付与する。スキル【重ねる黒】を適用。一定確率で闇属性の攻撃が重複する。隠密ボーナスによって効果が上昇する。スキル【呪い火】を適用。魔力の棘を操れるようになった。スキルスキル【凍てつく躰】を適用。自身の攻撃に氷結状態を付与。スキル【踊る矢尻】を適用。弓による攻撃に追尾性を付与。スキル【重ねる罪】を適用。適用スキルの数に応じて状態異常付与値を上昇させる。スキル【弔いの鐘】を適用。不死者特攻状態を付与。スキル【超加速】を適用。一定確率で敏捷が上昇する。スキル【麻痺毒】を適用。スキル【重量落下】を適用。落下系の罠に隠密ボーナスが適用された。投擲武器による攻撃に麻痺毒を付与する。スキル【神経毒】を適用。投擲武器による攻撃に神経毒を付与する。スキル【終わりなき葬送】を適用。周囲の敵に継続ダメージを与える。隠密状態時効果が上昇する。スキル【月灯の調べ】を適用。時間帯が夜の時幸運が上昇する。スキル【彷徨う棘】を適用。呪術による攻撃が時間経過で分裂し相手を襲う。スキル【贖罪】を適用。撃破した敵に応じてダメージを与える。攻撃が外れた場合ダメージは反射する。スキル【月の欠片】を適用。隠密ボーナスに応じて回復力を上昇させる。スキル【破壊工作】を適用。罠を設置する速度が上昇した。スキル【闇夜の彩】を適用。暗闇の中で目が見えやすくなった。スキル【暗闇の舞台】を適用。明るさが一定以下の時回避率が上がる。スキル【穢れた手】を適用。状態異常時状態異常蓄積値が上昇する。スキル【揺蕩う命】を適用。隠密状態時回避率が下がるが隠密ボーナスが上昇する。スキル【時の裁き】を適用。攻撃に老化状態を付与。スキル【幻影】を適用。幻を操る事が出来るようになった。スキル【夜刀】を適用。攻撃が視認出来なくなった。【影の祝福】を適用。死を司る神タナトスの加護を得た。その他142件のスキルを適用。
それは生ける死神の顕現。
全ての生命に死をもたらす存在。
橙色の瞳が暗闇で妖しく光る。
「返せ。それは私のだ」
哭く死神が嗤う怪物と対峙する。




