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【暗殺者の女 part8】

「……あっ おかえりなさ……わっ…ちょっとまたっ………!」


商談を終えるや否や私は小さく可愛らしい同居人に襲いかかる。水浴びの後なのか髪が少し湿っており何処となく色っぽい。体重を預けるようにもたれかかるのを嫌そうにしつつ未だに慣れないのか照れているようでそれがたまらなく愛しい。


「とにかく…  ベッドに……!」


少年はその小さな身体で私を運ぼうとするが流石に体格差があるらしく足取りは重い。その間にも私は首筋に舌を這わせながら衣服から手を侵入させその若く瑞々しい躰を指で堪能する。


「うぅ…… くすぐったい…… ちょっと今日なんかおかしいですよ……?」


抗議を無視する。体勢を少しずらし息の音が聞こえそうなほど近付き耳を甘舐めする。右手は上半身を虐めるまま左手をもう一方の箇所に伸ばす。


「……………………」

「ずっと黙ってるのこわいんですけど……!」


あの女の話が良くなかったらしい。コイツが自分を忘れてしまう事がないよう徹底的に攻めたいという想いが溢れ出していた。ひとりよがりな愛情だと分かっていても愛さずにはいられない。恋愛経験の欠如から性的な奉仕でしか愛情を表現出来ずにいる。信仰に生きた人生であったがそれ故にどうすればいいのか分からない。その晩私の愛情表現は何度も何度も続いた。




「………すまなかった」


ベッドでぐったりとしている少年に向けて謝罪する。意識があるのかないのか分からないような状態だったが私はどうにも素直に自分の気持ちを表現するのがなんだか照れ臭くてそのまま続けることにした。


「昔から話すのは苦手でな。 話をすると相手の事が分かるだろう? そいつが何をして生きてきて何をしようとしてるのかなんて知りたくない。 知ってるやつを殺すのは悲しいからな」


私は寝具で横になる少年の頭を優しく撫でてやった。ふさふさしていてまるで犬のようである。

人間は脆弱な生物だ。少し力を入れると壊れてしまいそうなほど弱々しく儚い存在だ。特殊な育ち方をしたせいでそれをどうすれば効率よく絶命させられるのか常に頭をよぎってしまう。


「私は怖いんだ。 心の内では人殺しなんてしたくない。 でも私がいなくなっても誰かがこの役割を背負う事になる。 つらいだろう。 苦しいだろう。 未熟だとな、慣れてなくて相手を苦しませてしまうんだ。 だから私は腕の良い捧げ手を目指した」


それは一見矛盾する信念。慈愛に近い精神で他人を殺めるという行為。凡人には一生理解出来ないであろう教団の歪んだ理念。暗殺者は正義を信じない。だからこそすがりたい信仰を作り出すのかもしれない。信仰とは元来生きる者たちの為にあるのだから。


「君は私のようになっては駄目だ」


最後に子供をあやすように軽くキスをした。

それは愛の言葉には程遠いものだったかもしれない。だがそれは愛を知らない今の私が口にできる最高の愛情の言葉だった。


彼だけは歪まずに幸せになってほしい。それを考えると彼から離れるべきかもしれない。

よぎった思考に人並みに悲しい気持ちになって私は横になった。

不幸にもそれは現実になる。次の日の朝。少年の姿は消えていた。

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