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【怪物貴婦人 part3】

戦いというものには必勝法がある。

これを大半の人間は気付かない。若い戦士に聞くと大事なのは力だとか速さだとか面白味のない答えが返ってくる。成熟した戦士に聞くと大事なのは覚悟だとか忠義だとか訳の分からない答えが返ってくる。所詮兵士とはその程度なのだ。


大事なのは負ける戦いをしない事。

つまり相手と自軍の力量を正しく理解する事こそが勝者への道。技術は手段の一つであると割り切り、視野を広く持つ事こそが重要なのだ。


貴婦人の形をした怪物が現れた惨劇の夜。戦士団が怪物によって文字通り壊滅的な被害を受けた日、公爵は奇跡的に生き延びていた。逃げるのが困難だといち早く判断し死体の残骸に隠れその場を見事にやり過ごしたのだ。


「勇敢なる聖戦士の諸君! よくぞ本日は集まってくれた! 今宵この国の歴史に新たなる伝説が刻まれる! 邪悪を滅ぼす戦士達の伝説だ!」


そしてまさに今。公爵はあれから一日も経たないうちに怪物退治の名目で奇襲を行うべく兵団を率いている。

国中から猛者という猛者を財力で集めた。

同胞を殺され復讐に燃える戦士団の生き残り達。

前回は不意を突かれたが今回は大盾大槍からなる重装備に身を固めており並の魔獣なら相手にもならない。

冒険者からなる傭兵団。装備も実力もバラバラだが日頃から魔物の相手をしている為怪物退治には適役だろう。普段少人数でしか活動しない彼らですらオークなどの大型の相手をも討伐し得る。

魔術師組合から直接雇った魔術師部隊。魔法による圧倒的殲滅力で敵を蹂躙する。平時ならばワイバーン等の上級魔物を相手にする精鋭部隊だ。

教会から直々に派遣された祈祷師達。退魔の専門家であり今回のような得体の知れない相手にこそ実力を発揮する。

間違いなく当代最強の強者達が目の前に並んでいる。一体の魔物相手には過剰なほどの戦力投入。

それほどまでに公爵は怪物の得体の知れなさに恐怖していた。しかしだからこそ己の持てる最大戦力で事に当たる所存だった。


「怪物はあろうことか宴で油断した我らを襲うという卑劣極まりない手段をとった! 捕虜を宴に同席させるほど慈愛を持ち合わせた戦士達だった! よって正義は我々にある!」


偽りの聖戦士達の士気は公爵の演説によって十二分に高揚した。この手のスピーチは彼が最も得意とする事の一つであった。勿論宴での性的催しについては根回しをして一部の人間以外には隠してある。復讐のお題目の為にも戦士団には高潔な勇者でいてもらわなければいけない。亡くなった捕虜が会場にいた理由も共に酒を酌み交わすためと言い訳は通してある。外道な事に代わりないが恐ろしく有能な男ではあった。


「いやはや、これは公爵殿。 噂には聞いておりましたがよくぞ短期間でここまでの戦力を揃えられたものですな」

「いえ、私は自分が出来る限りの事をしたまでして。 これも皆様のご協力あっての事。 それにこれだけの戦力を投じなければならない怪物ともなれば戦勝会での損失の言い訳も立つというもの」

「ははは、これはまた抜かりないですな。 しかしそれにしても少々過剰戦力ではありませんかな? 我々王国最強の魔術師部隊が一撃で終わらせてご覧にいれましょう」

「おお、これは頼もしい! どうですかな? 野暮用は早く終わらせて戦勝会の仕切り直しとしましょうぞ! その際は公爵殿、期待してもよろしいのですかな?」

「勿論ですとも。 美女と奴隷は我が街が誇る一大産業ですので。 幸い先の大戦で捕らえた奴隷がそろそろ仕上がる頃合いでして。 必ずや皆様には満足していただける事でしょう」


早くも終わった後の算段を立てようとする指揮官達。緊張感のない状況だが実際通常の魔物を相手にするには強大過ぎる戦力であった。その数百近い正真正銘の実力者達。それこそ伝説に出てくるドラゴンでさえ討伐出来るだろう。

だがこの時点で既に何人かの祈祷師達は感じていた。この街に巣食う二つの巨悪の存在に。

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