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第2話


「わ……。とてもおいしい玉露ですね」


漆黒の瞳が柔らかく綻び、珊瑚色の唇が優しい弧を描く。

湯呑を持つ白魚のような手は細くたおやかで。

何もかもが輝くように美しい浅葱色の着物姿の青年は、それは綺麗に微笑んだ。


「そう。口に合ってよかった。この洋菓子も好きなだけ食べていいよ」


出産内祝いでもらっていた洋菓子詰め合わせを差し出すと、彼の笑みが一層深まった。

経年変化が目に見えて楽しめるのが決め手で購入した、ブラックチェリー材のダイニングテーブル。

まさか自分以外に初めて座るのが妖怪だなんて、誰が想像できただろうか。

いつだったか上司にもらった高級玉露をゆったりと楽しむ美青年を見ると、良典の心は重苦しくなった。


どうしてこうなったのか。


良典にとって、今日は久しぶりに運動する爽やかな休日だった。

仕事の疲労で凝り固まった体を動かそうと、近所の公園までウォーキングに出かけて。

本当なら今頃は楽しい昼食だった。

冷蔵庫はほぼ空なので、簡単にペペロンチーノでも作ろうと思っていたのに。


それが、どうだ。


予定していたウォーキングコースを通りすぎた先の旧家が集まる住宅地。

不意に現れた和服の美青年に見惚れたのが運の尽きだった。

座敷童子と自らを称したその青年と目が合った瞬間に詰め寄られて、自宅に住まわせてくれと頭を下げられた。

本来なら、警察に即通報だ。

しかし、相手は鏡に姿が映らない妖怪で。

どうにか逃げようとしていたのに、最悪なタイミングで母親が座敷童子の幸運の恩恵を受けてしまい、家に招かざるを得なくなった。

精霊や神ともいわれている座敷童子を粗末に扱うと、今度は津ヶ谷家に不運が来るかもしれない。

最悪で巧妙な罠に、自分はかかってしまったのだろうか。

ただウォーキングに出かけただけなのに、妖怪を自宅に住まわせるはめになるなんて。


「で……ここで暮らすって、つまりは同居ってこと? 俺、独り暮らしだから生活必需品が一人分しかないんだけど」


腕を組んで、正面に座る座敷童子を見据える。

姿を認識できないのなら家の中にいてもお構いなしだろうが、こんなにはっきり見えている以上は、同居人ができるという認識でいなければなるまい。

妖怪と暮らすなんて想像すらできないが。


「その辺は、どうぞ気になさらないでください。ここに住まわせていただければ、あとは適当に時間を過ごしますので。あ! 姿が見えるのであれば、あなた様のお手伝いができます。家事はしたことがないですが、見る機会は多かったので、その記憶を参考に少しずつですが頑張ります……!」

「いや、別に必要ないよ」


家の中がとんでもない有様になる想像しかできない。

それでなくとも、座敷童子と一緒に住むなんて全く納得はしていないのだ。

余計なことはして欲しくなかった。


「それより、ここに来るまでの経緯。ちゃんと話してくれる? 曲がりなりにも一緒に暮らすんだ。事情は知っておきたい」

「もちろんですっ」


座敷童子は嬉々として語り始めた。


「私が前の家に住み始めたのは五十年ぐらい前になるのですが――」


良典は内心で目を丸くした。

そうだ。相手は妖怪。

人間の良典よりもずっと長く生きていて当然だ。

分かっていたが、二十代の瑞々しい美青年が自分よりもかなり年上だと言われても、なかなか実感がわかなかった。


「住み始めて様々な幸運が家人に訪れましたが、私の存在には誰も気付きませんでした」

「へぇ。気付かない場合もあるんだね」


そんな透明人間のような生活が変わったのは、一人の男子が生まれてからだったという。

その子は第六感が優れていたらしく、座敷童子の姿をはっきり目視はできずとも、存在は認識できるようだった。

やがてその子が家主になると、その第六感を生かして自宅で占いを始めた。

それは、なかなかの人気となり、家人に新たな幸せが訪れるようになった。

しばらくして、続く豊かな生活が座敷童子のおかげだと気付いた家主は、常連客を対象に自宅を宿泊施設として提供し始めた。

幸せが自分達以外にも循環するようにと。


「ああ……座敷童子と会える宿みたいな?」

「そんな感じですね。一部の人に対して、望まれればという感じでしたけど」


自分の存在を認めてくれる人が増えるのも、人生が好転したと喜ばれるのも嬉しかった。

たとえ、誰も目を見て話してはくれなくても、必要とされるのは幸せだった。

そうして目の前で流れていく人を眺める日々を続けていた数ヶ月前のある日。

おかしなことに気付いた。

一日一日、確実に。

少しずつだが、人間よりはるかに勝る速度で、己の身体が成長している。

今まで、座敷童子が成長するなんて聞いたことがない。

未曾有の事態に驚愕するが、何の対策を打てないまま、体はどんどん成長していって。

とうとう座敷童子とは冗談でも言えないような、立派な成人となってしまった。

妖怪仲間に相談した所で原因が分かるわけもなく。

戸惑いばかりが募る中、座敷童子の存在意義を揺るがす出来事が起きてしまう。

占いや宿泊客の常連に、座敷童子がいなくなったと言う人が現れ始めたのだ。

家主を始め、客達の中には座敷童子の気配や姿を少しばかり感じられる人が一定数いた。

そういう人には、成長した姿はもはや座敷童子ではないようで。

変な男がいると言う人まで出てきてしまった。

困惑する家主を見て、座敷童子は危機感に襲われた。

もう幼子は、この家にはいない。

このまま、座敷童子が消えて変な男がいるという噂が広まってしまったら。

家主にとってよくない流れになるだろう。

占いの腕は本物だ。

しかし、いるはずの座敷童子はおらず、気配が感じられるのは謎の男。

放置すれば、家主自身や占いに対しての信頼にも関わってくるに違いない。

そう思うと、家の中を気ままに歩くことすらできなくなり、悩んだ末に家を出る決意をした。

これ以上、家主に迷惑をかけない為に。

もう、小さな座敷童子として、この家にはいられないのだから。


「なるほど」


良典は緩く腕を組み直した。


「確かに、家主の信用問題に関わりそうだな。占いの人気にも支障がでたら嫌だし」


座敷童子は大きく頷いた。


「そうなんです。だから……次の家のあてもなかったのですが、家を出てきました」

「そもそも、座敷童子って住む家を自分の気持ちで変えたりはするんだろ?」

「しますけど……私は、それこそ家がなくならない限りは一つの所に住んでいたい性質(たち)で」

「じゃあ、今回その姿になったのはとんだ災難だったんだな」

「……もう座敷童子ではなくなってしまったようなものですからね……」


切なげな表情を浮かべる座敷童子を見て、良典は胸の中に憐憫の情がわいてくるのを感じた。


いやいや。


事情が何であれ、こちらは罠に引っかかって自宅に押しかけられた身なのだ。

同情の余地はない。

そう。余地は少しだってないのだ。


「……前の家の人は大丈夫なのか? その、座敷童子が出て行った家って没落するとかって聞くし」

「私が嫌な気持ちになって家を出たわけではないので大丈夫だと思います。あの家にある富や人気は、家主の努力の上にありますしね」

「そう……」


座敷童子は湯呑の縁を白い指先でくすぐっている。

前の家を思っているのだろう。

寂しそうに沈む表情。

大人の姿をしていても、良典の何倍も生きていたとしても。

きっと本質は寄る辺をなくした幼子なのだ。


ああ、もう――。


「よし。昼ごはん食べたら、買い物に行くか」

「え?」

「気にするなって言われてもさ。こうやって姿がはっきり見えてる以上、放置するのも気分が悪いだろ。スペースは無駄にあるし、寝具一式ぐらいは揃えた方がいいよね?」


恐る恐る、しかし嬉しそうに漆黒の瞳が見開かれる。


「い、いいんですか!?」

「ごり押しでうちにまで来ておいて何言ってんだよ。まぁ、中年男の一人暮らしなんて、住みついたってつまらないと思うけど」

「そ、そんなことはありませんっ。家主とこうして話せるのは初めてなんです! だから、とても……とても、嬉しくて……っ」


座敷童子の瞳が美しくきらめく。

こんな喜び溢れる目で一心に見つめられるのは、いつぶりだろうか。

心の奥がかすかにざわついた。


「不束者ですが、末永く宜しくお願いします」


湯呑に頭がぶつかりそうなほど、深く頭を下げられる。


「いや……それは、ちょっと違うような……」


まるで婚姻の挨拶のようなセリフに良典の顔がひきつる。


「あなた様のお役に少しでも立てるように頑張りますね!」


美青年が愛らしく微笑む。

誰もが心奪われるような笑みだった。


「……こちらこそ、よろしく。その前に名前だな。俺は津ヶ谷良典」

「わ、私は……幸千代(ゆきちよ)といいます。大人になったのに、幼い名で恥ずかしいのですが」

「ああ。幼名ってやつ? 別に気にしないよ。縁起がよくて可愛い名前だね。似合ってる」


千代に(さいわ)いを。

いかにも座敷童子らしい。


「そうですか? ありがとうございます。良典様」

「やめてくれよ。様なんてつけなくていい」


大仰に様付けされて、良典は苦笑する。


「では……良典さん」

「うん。それでいいよ」


穏やかに名を呼ばれると、不思議と優しい気持ちになった。


「改めて、これからよろしく。幸千代」

「はいっ」


手を差し出せば、白い手にぎゅっと握り返された。

見た目より柔らかく温かい手は、きっと幸千代の心根を表しているのだろうと何となく思った。


こうして、津ヶ谷良典は成長して家出をした座敷童子の幸千代と共に暮らすことになったのである。



○●○



表面が焦げているのに、中は生焼けな野菜炒めと鯵の塩焼き。

沸騰させすぎて風味がぶっ飛んでいる味噌汁。

米は固い気がするが、これは好みの問題としておこう。


「ご、ごめんなさい……」


ダイニングテーブルの対面では、申し訳なさそうに座敷童子の幸千代が肩を縮こまらせている。

生成りの七分袖シャツにベージュのストレッチパンツ。

緑色のエプロンはきれいな蝶々で結ばれていて。

手足の長いバランスよい体は、シンプルなそれらを自然に着こなしている。

優しげな面差しと几帳面そうな雰囲気も相まって、すこぶる料理上手に見えるのだが。


「あの……作り方はちゃんと読んだのですが……」


消え入りそうな細い声が謝罪を続ける。


「作り方をきちんと理解するのでさえ、初心者には難しいですね。説明が飛ばされている部分で悩んでしまったり、適量が分からなかったり……。今まで調理の様子は沢山見ていたので、作り方さえ読めば自分でもできると見くびっていました」

「見るのとするのじゃ全く違うよ。まぁ、すぐに慣れると思うから。しばらくは一緒に作ろうか。俺だって大した腕前じゃないけどね」

「でも……良典さんの家事の負担を少しでも減らそうと思って始めたのに、それでは意味がなくなってしまいます」

「そんな気負わなくても」

「ずっとご迷惑をおかけし続けているので、少しでも恩返ししたくて……。早く一人でも作れるように頑張りますね」

「……ありがと。焦らずゆっくりでいいから」


良典は優しい声音と表情を意識して口角を上げた。

大人の姿になってしまったという超有名妖怪の座敷童子と、突然の同居が始まって約三週間。

出会った時にはどんな悪夢かと頭を抱えたが、最初の印象に反して二人での生活はかねがね順調だった。

買い与えた生活用品をまるで初めて贈り物をもらったかのように喜んで、丁寧に使ってくれている。

暮らしぶりも癖がなく、ずっと人と共生していたおかげか常識もきちんと持ち合わせていて、生活空間を共にするのに思った以上に手間はかからなかった。

それどころか、良典の役に立ちたいのだと、調理や掃除洗濯を懸命に覚えてくれて、そのいじらしさに最初の警戒心なんかなかったかのように頬を緩めてしまっていた。

我ながらチョロすぎるとは思う。

まるで新妻を迎えたような。

そんな瑞々しい気持ちさえ芽生えてきて、己の単細胞ぶりに苦笑する日々だった。


「これ、中まで火を通して食べ終わったら、今日は森林公園にウォーキングに行こうか。ちょうど気候もよくて緑も一番きれいな頃だし」

「素敵ですね! 前の家でも、外出することがなかったので嬉しいです」

「ふらっと散歩とかしなかったの?」

「そもそも、そんな気が起きないというか……」


確かに、外出大好きなイメージは座敷童子にはない。


「じゃあ、今日もやめておく?」

「いえっ。行きますっ! 行きたいです!」

「そんな気が起きないんじゃないの?」


意地悪く質問を重ねると、幸千代は思いきり首を横にふった。


「これまではそうでしたけど、今は違うんです……良典さんとなら、色々新しいことをしてみたいって自然に思えるんです」


漆黒の瞳に直向きに見つめられて胸が高鳴った。

まただ。

他意はないと分かっているのに。

良典だけは特別だと純粋すぎる言葉と表情で何度も伝えられると、寒々しかった心の隙間に何やら温かいものを注ぎ込まれたような心地になる。

座敷童子は人たらしの力も大いに持ち合わせているようだ。


「早く行きましょう! これ、急いで火を通しますね」

「うん、お願い」


皿を持ち上げた幸千代は、嬉しそうに目を細めた。





かつて、この辺りの小学生なら一度は遠足で登らされていた山の麓に広がる森林公園には、老若男女が楽しめる健康散歩道が設けられている。

様々な植物が植えられて四季それぞれの自然に触れられるようになっており、特に春には桜の名所で知られている。

新緑から深緑に変わる今の時期は、歩道の両側に並ぶ葉桜の優しい木漏れ日が心地良かった。


「ここ、桜の名所でね。花の盛りにはこの道沿いに花見客がびっしりなんだ。俺も何度か来たことがある」

「すごい桜の数ですもんね。私、花見は経験がないので羨ましいです」

「え? 一度も? じゃあ、来年は花見をしようか。ここは人が多すぎるから、もっと穴場で」

「本当ですか!?」


何も考えずに来年の話をすると、幸千代が大層驚いた顔をした。


「次の春も……一緒にいてくださるのですか……?」

「あ、ああ……うん。幸千代は一つの家に長くいたいタイプなんだろ? 今更、こっちから追い出しはしないよ」


良典自身も、半ば無意識に来年の話が口から出たことに驚く。

幸千代の存在は思った以上に自分の日常に沁み込んでいるらしい。

ゆっくりと桜並木を抜けると、次はクヌギやコナラが目につく落葉広葉樹林エリアが広がっていた。


「もう少し人がいると思ったんだけどな」

「ほとんど見あたりませんね」


良典たちと同じようにウォーキングしている人が多いかと思いきや、すれ違ったのは双眼鏡で野鳥を楽しむ老夫婦ぐらいだった。


「少なくて良かったですよ。他の人からすると、良典さんは独り言ばかりのおかしな人になっていますから」

「そうか。幸千代は俺以外には見えないもんな。つい忘れるよ」


はっきり見えているから未だに実感はないが、この青年姿の座敷童子が見えているのは基本的に自分だけ。

会話をしている所を他人が見たら、ただの頭のおかしい男になってしまう。

気をつけなければ。


「……私はとても贅沢者ですね」


幸千代は木々を眺めながら歩く良典を眩しそうに見つめながら言った。

並木道から森林エリアに入ると、陽光が遮られる。

流れる風も涼しいものになり、二人の頬を優しく撫でていた。


「ん? 贅沢者?」

「前の家主が占い師をしていたので、人の悩みを沢山聞いていたんです。お客様は女性が多くて、理想の男性に出逢いたいという声が結構あったんですよ」


ふふと笑みながら幸千代は続けた。


「そういう方の話す理想って、ちょうど良典さんのような人だったなって」

「俺!? 変な冗談はやめてくれよ。それが本当なら今頃モテモテだろ。この通り、寂しい独身中年男性だよ」

「冗談じゃないですって。私は素敵な方のお家に住んでいます」

「素敵な方って……」


何とも言えないくすぐったい気持ちが胸に広がる。

それを享受してはいけない気がして、良典はぎゅっと眉根を寄せた。


「……ありがと。まぁ、仕事は頑張ってきたからそれなりだけどさ。あとはすっからかんの空っぽだよ」


良典は仕事以外には何もない自分の人生を思う。


「昔……一度だけ本気で恋をしていたんだ。でも、次第に仕事にしか目がいかなくなって、相手をないがしろにして別れてね。またその気になれば恋愛ぐらいできるだろうって当時は思ってて。気付けば一人寂しい四十前。しょうもない男だよ」


幸千代はゆるく首を横にふった。


「ご縁ってなかなか思うように、予想通りにはいかないものだと思います。私も少し前まで、住処を変えることになるとは考えてもいませんでしたし」


良典は笑った。


「前より狭い家になったあげくに家事までさせられてるもんね」

「もうっ。そんな風には思っていませんよ!」


緑風が二人の間を穏やかに通り抜ける。


「こう言えば、とても失礼になるのですが……。私、今の生活がとても好きなんです。だから、あなたが結婚という道を選んでなくてよかったって、自分勝手なことを思ってしまうんです」

「幸千代……」


心の内で、何やら温かいものが跳ねまわる。

久しく感じてなかった気持ち。

胸が震えるこの感じ。


「……俺も幸千代と会えてよかったよ。最初は頭のおかしい男につかまったって冷汗かいたけど」

「そ、それはっ。この先どうしようかと思っている時に、初めて私の姿がはっきり見える方と出会って、つい感極まってしまって」

「まぁ、その気持ちは分かる気がするよ。あ、そうだ。前から思ってたけど、俺は全く霊感がないのに、何で幸千代がはっきり見えるんだろうな」

「そうなんですよね。私の気配を察知できるのは、いつも霊感がある人達ですし……理由はよく分かりませんね。私が大きくなったのもそうですし」


幸千代は考えるような仕草をした後、己より少し背の高い良典を見上げて無邪気に笑った。


「もう、これはあれですね! 運命ですよ!」


明るい声音で幸千代が言う。

どうしよう。

何も言葉が思い浮かばない。

無言の良典に、幸千代が唇を尖らせた。


「無視しないでくださいよっ」

「いや、無視してないよ。何だか、返事するのが恥ずかしくて」

「恥ずかしいって何ですか」

「ごめん、ごめん」


緑の中ですねた顔をする幸千代が美しいと思った。

出会った頃より、ずっと。

一緒に住むようになってから、一日、一日と幸千代の心に触れる。

まっすぐで純粋な言葉に、いつだって良典の心は射抜かれて。

そして、それが全く嫌ではなくて。

もっと言葉が欲しいと。

もっと心が欲しいと思ってしまっている。

この欲が大きくなってしまったら、どうなってしまうのか。

思いを抑えたらよいのか、成長を熱望してもよいのか。

全く分からない。

とにかく今言えるのは。


美人は三日で飽きるというのは大嘘だということぐらいだった。




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