故に麻里亜はラッパーである。
この度はクリック、閲覧ありがとうございます。
まだまだ、ラップバトルというものは一般には浸透しきっていませんので書きました。
よろしければ見てください。
――昔、むかし、あるところに教員の夫婦がおりました。
一人は、進学校で英語を教える、バリバリのキャリア女性教師。
一人は、進学校で特進相手に数学の講義を行うバチバチの男性教師。
家は二階建ての庭付きの一軒家。
交友関係にも恵まれ、ご近所づきあいも良好。
まさに、順風満帆な生活をほしいままにしているような、そんな夫婦でした。
しかし、何の因果かある一つのことに恵まれなかったのです。
『庄司さん...ごめんなさい』
『晶子気にするな。 また頑張ろう』
そう子宝にだけは、なかなか恵まれなかったのです。
お互いが教員という忙しい職種で、責任の大きな役職を多々任されていたのもありなかなか、子作りに励むことはできませんでした。
ただ、そんなある日のことです。
『先生! 本当ですか!』
『ええ、確率はかなり高いかと』
『あ、ありがとうございます!』
病院の、それも産婦人科の一室に響き渡った声は歓喜に震え、時間を忘れてしまうほどに夫婦は喜びあったのです。
ただ母体も、決して若いというわけではなく夫婦ともに気を使った毎日が始まりました。
初めての経験への不安があったのでしょう、妻の方は高校時代にたまたま学校の関係で呼んでいた聖書を手に取ったのです。
別にここから、宗教堕ちしたなんて言う展開が起こるわけでもないのですが、彼女は聖母マリアに対して深く感動を覚えるようになったのです。
だから、ある日言いました。
『この子。 女の子で無事生まれてくれたら、マリアって名前にしたいわ』
『へぇ、いい名前だね』
『ええ、きっと元気に生まれてくれるわ』
庄司は妻が少しでも前向きならそれでいいと思い、ただただ頷き、生まれてくるわが子へ思いを馳せました。
そして、その日はついに訪れたのです。
『おぎゃあ!!! おぎゃあああああああ!!!!!』
季節は秋。 ただその時期にしては珍しく降った雪。
あまりの軌跡に庄司もついに認めたのです。
2485gで生まれた女の子。
二人は生まれて、無事看護師さんに連れていかれたのを見届けた後、出生票に
『麻里亜』
そう記しました。
その日、地球上に『音羽 麻里亜』は誕生したのです。
彼女は親の愛情を受け、まっすぐに育ちました。
両親が教育者ということも影響しているのでしょうが、そこに過保護や箱入りなどの要因が足されただただまっすぐ。
だからでしょう。
ある日ネットで見た一つの動画に心を奪われたのです。
それは、一つの音楽のミュージックビデオ。別段情報規制をするようなサイコパス親にまでは発展していない家庭だったので、彼女もアイドルの曲や、バラードのような曲だって嗜んでいるつもりでした。
ただ、その曲は彼女の今までの価値観を壊しました。
箱入り娘だったからか、なかなか人付き合いが苦手で、はっきりとモノを言えなかった彼女。
そんな彼女は、
『yeah! なんだって本気になりゃ叶う! やらなきゃダメ? ならやってやる!』
「かっこいい....」
ヒップホップに、のめり込んだのです。
中学二年の時に出会ったヒップホップの世界。
それはあまりにも彼女に大きな影響を与えたのです。
反対されると思い、両親にやってみたい!そういえば帰ってきたのは
『麻里亜の好きにしてみなさい』
そんな優しい言葉。
だから彼女は......
――だから私は
照明がほとんど落とされてくらい店内。
それなのに、暗がりには所せましと人がいる。
そして、ただ一か所だけは煌煌と証明を当てられ光輝いていた。
「お姉ちゃん、はじめて?」
「はい!」
「そっか、なら楽しんでね」
マイクを片手に持った、人に軽く元気づけられ気張っていた気持ちもいくらかは楽になる。
真横に用意された、DJブースではDJの人がネットでみた動画みたいに音の調整をしている。
「嬢ちゃん。 初見だからって手加減はしねぇぞ」
「はッ.....はい」
「ああ、そんなビビんなくてもいいよ」
「はい」
私の目の前にいた、マイクを持った人は意外にも気さくに話してくれるが正直あんまり落ち着かない。
腕にびっしりと入った刺青にただただ圧倒されてします。
でも、だからって逃げられない。
「それでは! ラップバトル! 第5試合を始めます!!!」
「「「「イエェエエエエ!!!!!」」」」」
「!」
思わず、歓声にのけぞりそうになるが我慢だ。
「赤コーナー! 甚太郎!」
そんなMCの言葉と共に歓声が上がり会場が揺れる。
「そして! 青コーナー!! 今日が初参加! MARIA!!!」
――そう、今日は私の、MARIAの初陣なんだから!
読了ありがとうございます。
まだまだ試行錯誤を要すると思いますので、アドバイスなどいただけるとありがたいです。
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