僕は模範生にはなれない。幼少期#1
小さい頃から、他と考えが少しズレている事を肌身で感じていた。
齢4歳の頃。
両親が僕に尋ねてきた1つの質問からだ。
「パパとママ、どっちが好き?」
僕はその時こう答えた。
「りんかん」
両親は驚いたのだろう。
暫くの間固まっていたのを覚えている。
上手く質問に答えられない僕に、もしかして発達障害!?なんて思ったかもしれない。
しかしそれは違う。
ちょうどその頃、父が学生時代に使っていた本などを整理していた。
その中の1つに初代アメリカ大統領、リンカーンについての本があったのだ。
僕はなぜか表紙の顔写真をひどく気に入ってしまって父に聞いた。
「ぱぱ、これなに?」
「これはリンカーンって人だよ。昔結構好きでこの人に関する論文とか書いてたな~」
「りんかん?」
と、言う風に。
当時の僕は伸ばすのが苦手だったのかもしれない。
何度口に出そうとリンカーンといえずリンカンで終わる。
当時の僕にとっては両親よりもリンカーンの方が上だったのだ。
まぁ、パパかママで質問されたのに第三者のリンカーンが出てきたものだから、僕の真意を理解した両親ならもっとガッカリするだろう。
しかし、僕がその場でどちらかを選んでいたら、両親がケンカをする可能性だってあった。
それなら、リンカーンと答えて正解だったのではないかと思う。
齢4歳にして、周囲への配慮がしっかりと理解でき、社交辞令すら学んでいたのではないか。
今思い返すと、我ながら恐ろしいことであった…………