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短編

どこかの学生のいつかのクリスマス

作者: ZEKE-A-TCC

 日本におけるクリスマスなんて、ほとんど原型なんて残っていないのだが、熱心なキリスト教信者がこのことを知ったらなんて言うのだろうか。まぁ、僕はそんな話がしたいわけじゃないし、とやかく言うつもりもないのだが、若者たちにとって恋人と過ごす日となっていることは気に入らない。正確に言えば、それが当たり前であって1人で過ごすことをまるで悪や落ちこぼれのように扱うことが気に入らない。どう思おうとその人の勝手ではあるが、それを口にしてはならないだろう。だって、それは、相手を自分よりも下に置くことで優越感に浸っているだけじゃないか。そんなことを考えながらカレンダーを睨みつける。今日は12月22日金曜日である。クリスマスイブが日曜なので、きっとデートだったりパーティーだったりがたくさん行われるはずだ。もちろん僕にそんな予定はない。恋人のいない学生はそんなものだろう。ただ、1つだけ感謝していることがある。僕のバイト先はこういうイベント時には給料が増えるのだ。予定のある人はシフトに入らないし、大体忙しくなるのだ。仕事大好き人間な僕からしてみれば悪い事なんてない。


「それでもお前は、くりぼっちだとか仕事中毒だとか言われるのは嫌なんだろ?」


 数少ない僕の友人はそう言った。そんなのは嫌に決まっている。クリスマスに働いて何が悪い。そう返せば「いや、悪くはねーよ」と言ってきた。こんな話をしているが、こいつはクリスマスはデートだと言っていた。僕のような人間に偏見のないとても良い奴なので先日プレゼント選びについて行った。1人で行く勇気は出なかったらしい。そんなところも含めて本当にありがたい友である。さて、そろそろ日付も変わりそうだし、寝るとしよう。




 おはよう。23日だ。土曜日だ。バイトだ。現在時刻朝7時ちょっと前。とっとと出発しよう。

 はい、到着。僕のバイト先であるお菓子屋さんだ。実は甘いもの大好きなんです。ここの店長は気も良いし、そのせいなのか人間関係の素晴らしい職場である。「おはようございます」と言いながら入っていく。僕の仕事は雑用がメインである。一部のお菓子は作ることもあるが、お菓子作りは基本的に店長ともう1人の仕事である。ちなみにここのお菓子は甘さ控えめなものはほとんどない。かと言ってくどいような甘さでもない。もともと僕もここの常連だったのだ。ある日バイト募集の張り紙を見つけて応募した。いや、まぁそんな話はどうでもいいんだけど。ここは店内で食べることもできるのでそのあたりの接客も僕の仕事である。


「そういえば、明日のバイトって私と君だけだったよね?」


 そう聞いてきたのは同い年のバイトである。女性である。僕よりも後から入ってきたのだが、基本的に何をやらせても僕より上手い。だからなんだ、と言う話ではあるが。そうだね。と返した。バイトは5人いるのだが、他の人はみんなデートだ。まぁ、バイトは2人いれば十分なので問題ない。しかしあれだな、クリスマス前日は客が少ないな。明日忙しい人なんかは今日デートなのだろうが、大部分は明日だから、直前は暇である。厨房は大変そうだがな。少し時間ができたので試しに話題を振ってみた。


「明日バイト入ってて良いのかって?別に彼氏もいないし、1人暮らしだから実家みたいに豪華な料理とかないし、やることもあんまりないんだよね」


 まぁ、僕とほとんど同じだった。いや、なんとなくわかってたけど。

 そんなこんなでだらだらしているうちにバイトの時間が終わったので余ったお菓子をもらって家に帰ってきた。アパートだけど。帰って来てしまうとやることがない。なので僕も1日早いがクリスマス気分を味わうことにした。具体的には近所のツリーやイルミネーションを見に来た。やはりなかなかに気合が入っている。俺と同じ思考の持ち主と思われる1人の人も多かった。大体はカメラを持っていた。一眼って憧れない?とりあえず満足したので帰ることにした。家についてからはやることがないのでクリスマスについて考えてみた。

やはり、日本のクリスマスがこの形に落ち着いたのも祭り好きだからなのだろう。ハロウィンもバレンタインも自分たちにとって都合の良いものに変えてしまうのはさすが日本人である。そのおかげで綺麗なツリーが見えるし、街も活気があふれるので文句なんてない。その点に関して言えば、だが。冒頭でも言っているが、若者は自分が王か何かだと思っているのだろうか。自分は大衆と同じ意見を持ち、違う意見の人間を認めない。もちろん例外もあるが。こんなことを言っている僕も若者であることに変わりはないし。さて、もう考えることすらめんどくさくなってきたので、少し早いが寝るとしよう。明日は忙しいだろうしね。




 おはよう。24日だ。日曜日だ。バイトだ。そして忙しくなるだろう日だ。現在時刻朝7時ちょっと前。そろそろ出発しよう。

 はい、到着。昨日は何も言わなかったが、このお店もクリスマス仕様で豪華になっている。この飾り付けが完了したときは携帯で写真をとっていたな。宣伝用だけど。「おはようございます」と言いながら入っていく。店長は今日がクリスマスイブだということをそこまで気にしていないように見える。特別緊張している様子はない、という意味だ。今日は開店前の準備も作業量が多い。やりがいがあって素晴らしい。


「でも、給料良くなかったらただの貧乏くじだよね」


 そうとも言えるが、仕事は好きだから僕としては問題ない。今日は予約が非常に多いし、予約がなくても人は来るのでいつもよりもさらにしっかりと掃除をしておこう。掃除は完了。お菓子の準備も完了。開店である。このバイトを始める前は、クリスマスだからと言い聞かせて少し高いものを買ったり、多めに買ったりしていた。懐かしい思い出である。今では僕が売る側となっているが、あの時はこうなるなんてちっとも想像していなかった。本当に人生は何があるかわからない。相変わらずどうでもいい話だ。

 で、とりあえず今日の営業は終了。やはり普段よりもかなり客が多かった。ありがたいことである。明日は25日だが、日本ではイベントとしては24日のほうがメインだし、平日なのもあって今日ほどではないだろう。そもそも、僕は学校に行くから関係ない。そんなことを考えながら店の片づけをしていた。


「2人とも片付けが終わったら来てちょうだい」


 店長からの呼び出しである。ちょうど終わったところだったので2人で店長の元へ向かった。このあと予定はあるかと聞かれたので2人そろって「ありません」とこたえた。なにがあるのか考えていたら七面鳥がでてきた。もちろん調理されて。どうやらクリスマスパーティーのようだ。このあとケーキも出てくるのだろう。まぁ、たまにはこういうのも、悪くない。

たまにはのんびりとしたクリスマスはいかがですか?

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