序章
●国の成り立ち
精霊の加護と、魔法の力、マナによって繁栄が維持された世界。
それがアーカーシャ。
アーカーシャ大陸は陸続きにいびつな円になった形をしている。
円の東西南北にそれぞれ国がある。南に火の国、北に水の国、東に風の国、西に土の国。
海の向こうの北には光の国が、南には闇の国がある。
大陸はそれほど大きくないが未開の土地も存在した。調査隊を送っても帰ってこないのだ。
その後も何度も調査隊は送られている。しかし一度も、調査が成功したことはなかった。
不穏が残る土地だが、放置しておいてもそれほど危険はなかった。足を踏み入れなければいい話である、というのが未開の土地がある国の見解だった。
危険と言えば、城壁を越えた街の中にまで“モンスター”が現れることのほうが、何倍も危険だった。
モンスターとは、人間に敵意を向け襲いかかってくる存在である。時に同族同士で食事も行う、残酷で残忍な存在。
形はそれぞれ、獣の姿をしているものもあれば人型をとっているものの存在も報告されている。知性はなく、習性はある。
武器や魔法が利くことから、こちらも護衛をすれば大きな問題はないと判断されている。
何しろ、突然街の中に現れることもごく稀にあるからだ。そこまで気を回す余裕は各国にはない。
国が気を回すべきは、一年に一度の儀式。降霊式だ。
大精霊に選ばれた“柱”と呼ばれる、国の王を媒体に大精霊を降ろす。
100人以上もの人員を動員して行われる大儀式。
これに向けて日々準備をしている。
大精霊への貢ぎ物、マナの蓄積、魔法道具の準備。市井の魔法使いも動員され、それは大きなものになる。
それと平行して行われる日々の政務や国交も欠かせないものだ。
各国の王たちは、穏便な国交を保つために頻繁に国を行き来した。
かつて起きた大戦争を再び繰り返さないために、お互いの国々を気遣った。
世界は、穏やかだった。
●火の国
双子王。
アーカーシャの国の王とは常に一人である。一人でなければ軋轢ができ、国の統治が行かなくなる。多ければ多いほど争いの火種になる。
それが双子とあれば、誰もが首を傾げるであろう。
普通は王位継承権を争うか、譲り合い、国を統治する王が“一人”決まる。
しかし“火の国”と呼ばれる、砂漠地帯が広がるこの国には、まさに王が二人いた。しかも双子だ。
一人、兄。名をアルデリア・ロウ・フェアリーロンド。
二人、弟。名をシュタイド・マハ・フェアリーロンド。
王が二人いるのには理由がある。
兄のアルデリア、通称ロウは火の大精霊サラマンデルに選ばれた火の国の王。
弟のシュタイド、通称マハは水の大精霊ウンディーネに選ばれた者。
通常ならマハが水の国を継ぐことになるのだが、成人するまで他国にわたることはできない、火の国の言い伝えがある。
そこでロウが王位を継いだ時に、一次的なものとしてマハも王とした。
柱を王としなければ、他国、特に水の国に示しがつかない。
王でなければ大精霊と契約はできない。王でなければ、国を維持させることができない。
火の国で、マハは水の国の王として君臨することになった。
いびつな王の形、しかし、双子王という異質な名は観光名地として各国に広がる。
双子王はこうして、世間に認められる形となった。




