Scene5:どうすればいいんだよ
「やめろォッ!」
僕の叫び声に、お姉さん……少女に襲い掛かっていた魔物は攻撃を止める。すると、僕の方にゆっくりと顔を向けてくる。
「……ぅぅ……!」
少女の方を見る限り、戦える状態じゃない……! どうすればいいんだこれ!? 僕は自分の行いに後悔しながらも、どうすれば助かるかを考えていた。
「……えっと……!」
僕にも武器はある。戦う装備は整ってるけど……! 手も、体もガタガタと震えてるし、戦えるわけがない!! どうする……どうする? そうこう考えている内に、魔物たちは僕の方に矛先を向けて、襲い掛かって来る。
「い……ちょ……まっ……」
後ずさり、僕は逃げようとしたものの、回り込まれてしまう。……やば……!
「囲まれた……ってヤバいって……!!」
……何が出来る……何が出来るんだ僕に……! 魔物を蹴散らす……? 無理だってそんなの!! 僕にできっこないんだってば!!
「く、来る!?」
魔物は、僕の事を様子見していたけれど、ジリジリと四匹同時に迫ってくる。ぅう……! ヤバい……泣きそう……! だってこんな場面、僕なんかじゃ突破出来ないってばぁ……!
「……っくぅ……!」
あ、涙出た。ヤバい……抑えていた感情が爆発して、涙も一緒にこぼれ出てくる。体も力が抜けて、へたりこんでしまった。その姿を見たからか、僕に対して魔物は勢いよく襲いかかってきた。
「あ……死んだ」
時間が止まったような感覚に陥った。背景が灰色になった。いわゆる走馬灯なのかな……今までの記憶が蘇っていく。友達と遊んで怒られて、泣いた記憶……魔物を倒せなくて、一日粘った記憶……買い物帰りに友達とあって稽古していった記憶……こうして見ると、僕はあんまり変わってないのかもしれない。
何を努力しても実らない。何をやっても、変わらない。親には心配を掛けるだけの……駄目な人物……それが僕……。だから、当たり前なんだ、ここで戦わないで死ぬ事なんて……そう、当たり前……。
『諦めるな』
……一言……そう、最近聞いた一言が響いた。
『何があっても、諦めるな』
僕の両親の一人……父さんの言葉。諦めるな……何を……どうやって……どうすれば……何があってもって……!
「どうすればいいんだよ……! 父さんッ!」
辺りに色がついて、何も答えが出ないまま僕は魔物の攻撃を……受けた。
「ぁあッ!!」
魔物の爪で引っ掻かれて、僕の身につけている防具が傷ついた。でも、まだ防具だからいい……! これが続いていけば、間違いなく肉は千切れ、体に鋭利なものが刺さり……!! 想像しただけで、体は震える。自分で怯えて、何も考えたくない。身を守るために、体を丸めた。引っ掻かれながらも、僕は……! 死にたくないって願っていた……!!
「はぁッ!」
……叫び声と共に、引っ掻かれている感覚が途絶える。いつの間にか目を瞑っていた目を少しずつ開ける。目の前には、力無く倒れた魔物がおり、少女は剣を振り下ろした場面だった。……その少女と目が合い、何故か睨みつけられる。
「……やぁッ!」
僕に向かって何か言いたげにしていたけれど、少女は残りの魔物に攻撃を与え始めた。僕は、その真下で辺りが沈黙するのを黙って待ってるしか無かった。しばらくして、魔物が倒れる音と共に何も聞こえなくなった。……終わったのかな?
「……終わった……?」
立ち上がって、辺りを見てみる。すると、少女がこちらを睨みつけているのを発見。すぐ目を逸らす。僕が何か悪いことしたのかな……! でも、あの状況じゃああするしか無かったし……! もしかして邪魔したとか……!?
「ご、ごめん!! 邪魔するつもりじゃなかったんだ……! えっと……その!」
必死に少女に誤っていると、少女は何やら膨れっ面になり、
「ムカつく……!」
とだけ、言って何処かへ行こうとする。ムカつくって……てかそれより何処に行くんだ?
「あ、あの……一体何処に……」
「弱虫は黙ってて。私はやらなきゃならない事があるの」
……冷たくそう言い放ち、少女はこの場を後にした。……いくらなんでも、言い過ぎじゃない……? やっぱり、自信なんて持てないや……。村の中で体育座りになりながら、ボーッとしている。もう日も暮れそうで、夜が近い。薄暗くなっている空はいつにも増して、赤く染まっていた。
「……魔王討伐……か」
今日で一日目……魔物と遭遇して大変だったなぁ。僕は今日の出来事を振り返りながら座っている。
「……はは……結局、魔物を一匹も倒せなかったな……」
結局、自分なんて変えられない。それを思い知った一日だった。……あ! 地図がないんだった……。明日はどこ行くかとか、予定立てられないよ……。
「ホント……ツイてないな」




