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Scene3:天敵

 城下町を抜けて、僕は草原へと出る。そこまで来た時点で僕は身構えていた。魔物と出会っても、すぐ様逃げだせるようにだ。……だって、この世界で一番弱いとされる、スライムにすら勝てないんだ。恐らく、この世界の人なら、少なくとも子供とか以外で勝てない人はいないんだ。それに、僕が勝てないんだ。


「なんで、この世界に魔物ってものがいるんだろう……」


 本当に不思議なんだ。魔物と言われる化け物のせいで、人は死んでいったりするんだ。まさに、僕らの天敵なのになんでこの世界に居るんだろうか。……そんなこと考えてても仕方ないけれどさ。


「……一人も案外……寂しいな」


 一人で問答してると、ふとそんな気持ちが湧き上がった。街道を歩く人影なんかなくて、チラホラと魔物のような影が見えるくらいだ。まだ見つかってないからいいものの、魔物に目をつけられたら厄介なので足早に歩く。だだっ広い草原の中に、目的の赤い木はまだ見えない。所々にある丘などで邪魔されてるみたいだ。


「……」


 本当にこっちであってるの? ふと、そう疑問に思ったので地図を取り出してみる。ペラッと広げると、今どこにいるのか、分からなくなりそうだったが、大体の位置は把握したので安堵する。


「ここからもう少し歩けば、赤い木が見えてくるかな」


 ……不安が拭えない。初めて一人で、違う所に行くので合っているか不安になる。本当のこと言うと、旅なんか出たくなかったのに……。今更出てきてしまって後悔するという始末だ。なんでったって僕が魔王討伐に行く事になったんだよ……。


「……なんで僕なんかが行かなきゃならないんだよ……あーもうッ! 全部、魔王のせいだからなぁッ!」


 今、何処にいるかも分からない魔物の王様に向けて怒鳴る。今なら魔王相手にも勝てそうな感じがしてくる。……すると、ガサガサと脇道の方から何やら音がしてきた。……体が硬直する。呼吸を止めて、耳を澄ます。……ガサガサとまだ鳴る。……やばい。やばいやばいやばい……!


「ど、どうすればいいんだっけ……こんなとき……! えっと……ええと……!」


 必死に頭の中を掛け巡らせる。死んだフリ? 剣をとる? 一目散に逃げる? それとも、そこらへんの小石の真似でもしたらいいのか!? やばい……本格的に頭が回らない!? えっと……ええと……!?


「これか……!?」


 その場で体育座り! ……よし、


「僕は……石……小石……」


 ブツブツと魔法のように何かを唱えていると、ダムッという効果音と共に、白い毛玉が飛び出してきた。可愛げのあるキラキラした目に、フワフワしていそうな耳が頭頂部に二つ。……スライムだ。それが跳ねてドンドンと近付いてくる。


「……」


 見たけれど……怖い。これに小さい頃、頭でド突かれて僕はそれ以来、魔物の前じゃ、まともに動けなくなった。その時はいつの間にか、スライムが死んでたけれど……でも今、それに陥ってる。口はガタガタと震えて、何も発せないし、動けない。……来るな……来るな来るな来るな来るな来るな来るな……! 必死に念じた。必死に願った。可愛らしい顔は、まるで不気味に微笑んでるように見えて、ダムッダムッと近付いてくる。


「く……る……な……!」


 石だと思わせて、固めていた体はガタガタと震える。スライムがまるで僕を嘲笑っているような感じで、目が笑っている気がする。汗が噴き出す。額から、体から、色んな所から嫌な汗が出て、ちょっぴり涙も出てきた。


「……!」


 ついに、目の前に来た。スライムが目の前で、僕を見て止まった。……何もしないのか……?


「……た、たすかった……の――――」


 気がついたら、強烈な衝撃を顔に受けていた。何かが弾けた……それがちょうど良く顔面に当たったような……鈍い痛みなのに、確実に痛いと分かる、衝撃。油断していた僕は、スライムの攻撃をマトモに喰らっていた。体をバネのようにして頭突きを行うスライムは、攻撃こそ単調だけど、当たったらそれなりに痛い。


「……いっ……たぁ……ぃ……!?」


 うつ伏せにいつの間にかなっていた僕が、顔を上げると増えていた。白い毛玉が二つ……三つ……四つ……。ダムッダムッと跳ねながら、スライムは目でニタニタと笑っている。


「もう……駄目……なのかな……」


 城下町をでて……すぐにこんな目にあうなんて……ついてない。僕は、戦うことすら出来ないんだ。ここで……死んじゃうのかな……。


「結局……僕は……!」


 群れとなったスライムたちが、ぞろぞろと近付いてきて、僕は目を背ける。こんなの、嫌だ……。死にたくない……死にたくない……! こんなとこで死ぬなんて……絶対に嫌だ……!! だって、帰りたいんだ……! 僕は、帰らなきゃいけないんだ……心配はもう、掛けたくないんだ!!


「うわぁぁあああああッ!!」


 僕は断末魔を上げながら、その場から逃げ出した。走る姿勢に無理矢理して、スライムから距離を取るようにして、街道を走りだした。足が、動いてくれた。……けど、情けない。母さんに、大丈夫って言ったのに、こんなに臆病になる自分は……情けない。

 天敵との遭遇は、僕にとって、重いコンプレックスとして積み重なっていく……。

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