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第九話 村長宅

「やあ、ご無事でしたね」

「吉田さん!」

 沙希が見送りを拒否したので二人きりで羽入家の門を出た鈴音達を待っていたのは吉田だった。

「どうしたんですか?」

 鈴音が聞くと吉田は呆れたような顔を浮かべる。

「あのですね、昨日も申しましたように羽入家は危険なんです。それで様子を見に来たんですが、どうしたはないでしょう」

「あははっ、すいません」

 吉田の心配は当然な事で、その事を察した鈴音は笑って誤魔化す。

 それから吉田はタバコに火をつけると、羽入家の事を聞いてきた。

「それで、羽入家はどうでした」

 真っ先に口を開く沙希。

「そうですね。思っていた以上に組織力はあると思います。しかも親類縁者の関係が強そうですね」

「まあ、田舎ですからね。そういうのを重視するのでしょう」

「それから千坂という人を鈴音の護衛につけました。たぶん監視が目的でしょうけど」

「千坂氷河ですか、これはやっかいですね」

 吉田は大きく煙を吐くと天を仰ぐ。

「知ってるんですか?」

「ええ、簡単に言うと源三郎の手足ですよ。命令は何でもこなします。もちろん、殺せと命令されればためらいも無く実行するでしょう」

 それが千坂の本性なのだろう。沙希は改めて千坂の恐ろしさに身震いした。

「そんな人が監視してるんですか?」

「まあ、そう思っていいでしょう」

「そうかな?」

 今まで黙っていた鈴音が急に口を開いた。

「どういうことです?」

 鈴音に慣れていない吉田は不思議そうな顔で聞き返す。

「確かに千坂さんは源三郎さんの命令で何でもやるかもしれないけど、逆に言えば源三郎さんが何も命令しなければ何もしないんじゃない」

「……」

 なんで二人とも黙るの!

 鈴音の発言に言葉を失う二人。吉田はタバコを踏み消すと改めて鈴音に聞いてみる。

「ですが源三郎が裏であなたを監視しろと命令してるかもしれませんよ。だから、そこまで千坂を信用するのもどうかと思うんですか」

 そう言われて鈴音は少し考える。

「たぶんですけど……それは無いと思います」

「どうしてですか?」

「源三郎さんですが、なんて言うか、なんか姉さんに好意を持っているみたいだったんですよね。だから姉さんを名指しで協力させたんだと思います」

「それはどうかと思うけど」

 沙希も吉田は納得できないようだ。特に吉田は羽入家と長く対立していたから、わだかまりが溜まっているのだろう。

「ですが、それも源三郎の芝居かもしれませんよ」

「そうかもしれませんけど、こちらにも千坂さんという味方がどうか分からない人がいるんです。だから、頼れる時には頼りましょう」

 思わず驚きの表情を浮かべる吉田。まさか鈴音からこんな言葉が出るとは思っていなかったのだろう。

 そんな吉田を察して沙希が補足してくる。

「普段はけひょんな鈴音ですけど、意外と頭は良いんですよ」

 沙希の言葉に鈴音は不機嫌な目線を送る。

「けひょんってなに?」

「変って意味」

「そんな言葉しるか―――!」

「そりゃそうでしょ、今私が作ったんだから」

「勝手に作らないでよ!」

 いつの間にか漫才になっている鈴音と沙希を吉田は咳払いで止める。それで気付いたのだろう、二人は普段と同じ態度で吉田と向き合う。

「それで、これからどうするんですか?」

 改めて聞かれるとなにも考えていなかったりする。だが沙希が先程言った事を思い出した。

「そうだ、私達これから村を見て回ろうと思ったんですよ」

 それを聞くと吉田は鈴音達の横に並ぶ。

「なら私も同行しましょう。来界村の捜査は警視庁の人間が多く来てるので私は時間が有るんですよ。それにお二人の警護も私の仕事ですから」

「そうなんですか、じゃあついでに案内してください」

 鈴音の提案に吉田は笑顔で答えた。

「ええ、いいですよ。じゃあまず、この事件でもう一つ重要な役割を持っている村長の家にでも行ってみますか?」

「そうですね、村長さんには一度会って話を聞こうと思ってましたから」

 羽入家と村長、この来界村では一番静音と関わった人物だろう。だからこそ、鈴音はその二人に会う必要があった。

「では行きますか、残念な事に今日は車ではないんですよ」

「構いません、ちょうど村を見て周りたかったし」

「まあ、何も無いところですけどね」

 それから三人は羽入家から離れて村の中心に向かって歩き始めた。



「昨日も言ったけど、何も無いね」

「まあ、田舎ですからね」

 道を歩く事三〇分、鈴音はいい加減に飽きてきたようだ。

 だがそんな時だった。吉田がある事を思いつき、突然道を変えた。

「そういえば、こちらに新たに出来た物があるんですよ。面白いかどうか分かりませんがいってみましょう」

 それでも何も無い道を歩き続けるよりかはましだと、鈴音達はそちらの道を進む事にした。

 それから程なく、鈴音達は村の境目とも言える場所にまで来ていた。そこには見覚えがある物があった。来界村に来た時に美咲と一緒に見たオブジェだった。

 黒くクネクネ曲がりくねった鉄製の木が村の端に大きくたっている。

「というか、結局なんなんですかこれ? 村に来た時にも見たんですけど」

「村長の提案で観光名所にしようと建てた物らしいですよ。こんな物が観光名所になると思わないですけどね」

「観光名所ね〜……」

 沙希は呆れた目線でオブジェを見上げる。

「このオブジェは村を囲むように八箇所、そして中心に一個、合計九個有るんですよ。もっとも中心のは未だに建設中ですけどね」

「本当……どういう意味があるんだろうね?」

 改めて問う鈴音に吉田は肩をすくめる。

「まあ、権力者の考える事なんて一般市民には分からない物ですよ」

「私はこんな物を観光名所にしようとしてる村長の考えが分からない」

「くっくっくっ、まあ、そういうものですよ。では、その村長の家に行きましょうか」

 それから再び歩き出す田舎道。もちろん鈴音が目を引くようなものは無い。村人はまばらに田畑の仕事に精を出しており、時々挨拶してくるだけだ。



 そして羽入家から歩いて一時間、ちょうど村の反対側にある村長の家に到着した。

「すいませーん」

 羽入家ほどの大きさは無いが、それでもなかなか大きな家で立派な門構えだ。

 吉田は門を叩いて来訪を知らせるが、すぐに返事は無い。

 それから吉田はかなり門を叩き続けてからやっと開いた。

 そして中から出てきた男、かなり酒に酔っているようで酒臭い。

「やあやあ、助六さん。村長さんはいらっしゃいますか?」

 どうやら門から出てきたのは助六という男らしい。助六は吉田に軽く目を向けると、すぐに後ろに居る鈴音と沙希に目を向けた。

 うわっ、なにこの人、かなり気持ち悪いんだけど。

 鈴音ですらそう思うほど、助六の目線はねちっこくて陰湿なものだった。

「あんたら、余所から来たんかい? やっぱり外の女は違うね〜」

 そう言って助六は更に助平な目線で鈴音達を撫で回す。

 ぐっ、こういうのが一番嫌。せめて襲い掛かってくれば立てないようにしてやれるのに。

 鈴音も沙希も武術の経験はある。だからこそ、それだけの自信があるのだが、こういう風に遠まわしにされる嫌悪感だけでどうすることもできない。

 それを察したのだろう。吉田は助六と鈴音達の間に立つ。

「それで、村長さんは?」

「その前に後ろの女について聞かせてくれよ。そっちの女はどこかで見たことがあるような気がするんだが」

「それは彼女が静音さんの妹さんだからでしょう。それで村長さんは?」

 更にしつこく助六に迫る吉田だが、どうやら助六もしつこいよだ。

 殴りたい! こいつ凄く殴りたい!

 目線もそうだが助六の雰囲気自体に鈴音達は嫌悪感を必至に抑えていた。だが助六はそんな鈴音達に気付いていないのだろう、未だに助平な目で鈴音達の体を見回す。

 そしていい加減に沙希に限界が来たのだろう。沙希の原理だとこういう奴には一発かませば大人しくなると思っているらしい。

 一歩前に出る沙希。だがその前に別なところから怒鳴り声が聞こえてきた。

「なにやってんだい助六!」

 横の庭から出てきたおばさんが助六をいきなり怒鳴りつけた。そして助六もこの人にはかなわないらしい。その場をすごすごとどっかに立ち去ってしまった。

「いや〜、助かりました香村さん」

「あらっ、吉田さんだったんですか。なら手錠を掛けても良かったのに」

「せめて手を上げてくれれば出来たんですけどね」

 そのまま笑い出す吉田と香村。もちろん冗談だが、二人とも助六が嫌いなのは同じようだ。

 そして香村は後ろに居る鈴音達に気付く。

「あら、そちらは」

「あぁ、こちらは静音さんの妹で鈴音さんですよ。そして隣にいるのが神園沙希さん、鈴音さんのご友人のようです。それでですね」

 吉田が言い終わる前に香村は手を叩く。

「なるほど、静音さんのことで緒方さんを訪ねてきたんですね」

「緒方さん?」

 初めて聞く名前に鈴音は首をかしげる。そんな鈴音に香村は説明と自己紹介をする。

「緒方さんっていうのは村長さんですよ。緒方士郎おがたしろうというのが本名なんですよ。まあ、村では村長さんで通ってますけどね。それで私はこの家で家政婦をしている香村節子こうむらせつこです」

 頭を下げた香村に鈴音達は慌てて同じように頭を上げた。

 それから沙希はよほど先程の男が気に入らなかったのだろう。男について聞いてみた。

「そういえば、さっきの人はなんなんですか?」

「あぁ、助六ですか。武部助六たけべすけろくと言って、昔困ってたところを村長さんが助けたんですよ。それからというもの、この家で働く事になったんですが、最近では酒びたりでかなりの厄介者なんですよね」

 助六が去っていった方向を向いて香村は思いっきり溜息を付く。

 話が一段落して吉田はやっと来訪理由を思い出したのだろう。もう一度、同じ事を香村に聞いてきた。

「そういえば、村長さんはご在宅ですか?」

「ええ、さっきから斎輝さいきちゃんと遊んでますよ」

「斎輝ちゃん?」

「あぁ、村長さんの孫で二歳になるんだったかな」

「へぇ〜、そうなんだ」

「それで静音さんについてお話できますかね?」

「ちょっと待ってくださいね。今確認を取ってきますから」

 それだけ言い残すと香村は家の中に入って行った。

 羽入家とは比べようも無いが、それでも村長の家も大きい。だから大分時間が掛かるだろう。

 正直暇を持て余す事になると思っていた鈴音達だが、鈴音達の後ろから一人の男が来た。

「誰だ、あんた達?」

 初対面にしてはいきなり失礼だろうが本人はそう思っていないようだ。

 沙希は文句でも言ってやろうとするが、その前に吉田が口を開いて仲裁する。

「どうもどうも、学さんおかえりなさい。ちょっと村長さんに用があるのでここで待たせてもらってるんですよ」

「なんだ、そうか。それで、一体どんな話なんだ」

 随分と高圧的というか偉そうな人だね。

 鈴音が思ったとおり、学はそういう人間だった。吉田はそんな学の人柄を分かっているのだろう、それなりの態度で対応した。

「いや〜、実はですね。静音さんの事でお伺いしたんですよ。こちらにいる方が静音さんの妹で鈴音さんと申しましてね。ぜひ村長さんのお話を聞きたいと」

「それなら帰った方がいい。まともな話しなんて聞けないからな」

 なっ!

 さすがにこれにはムッとくる鈴音。いきなり帰れと言われれば誰でもそうなるだろう。

 だが吉田は態度を崩さずに理由を尋ねる。

「なぜ、そう思われるのですか? なにか静音さんに関わる事で嫌なことでもあったのでしょうか?」

「さあね、最近の親父はいろいろと変なんだよ。俺達にもあまり話をしようとしないんだ。いくら静音さんの妹だからって会うとは思えないな」

「そうだったんですか。それで、なにかあったんでしょうか?」

「知らないよ」

 それだけ言うと学はさっさと家の中に入ろうとした。

 咄嗟に口を開こうとした沙希だが、吉田がそれを制する。

「あの人はああいう人ですからね。まともな話しは聞けませんよ」

 それでも言いたいことがあったのだろう。沙希は不機嫌な顔になり、代わりに鈴音が口を開いた。

「そういえばあの人は?」

「ああ、緒方学さんといって村長さんの息子さんですよ」

「でも村長さんにお孫さんがいるってことは学さんは結婚してるんですよね。奥さんはどうしたんですか?」

「あぁ、学さんの奥さんですか。実はですね、お孫さんを産むとすぐに死んでしまったんですよ」

「えっ!」

 予想外の答えに驚く鈴音。それから言葉を失ったので吉田が簡単に説明する。

「実は相当な難産らしく、それがたたって体を悪くしましてね。一年もしないで逝ってしまわれたんですよ」

「そう……だったんですか」

「それから村長さんが面倒を見ているわけですよ。たった一人の孫ですし、目の中に入れても痛くは無いのでしょう」

 鈴音は何となく村長の気持ちが分かるような気がした。鈴音達もたった二人だけの家族だからお互いの事を大事にしてきた。だからこそ、分かち合い喧嘩もした。そして大事な存在になって行った。

「じゃあ、村長さんにとってお孫さんは相当大事なんですね」

「でしょうね、たった一人の孫ですから」

 たぶん吉田には鈴音や村長の気持ちは分からないだろう。たった一人の孫だから大事にしている、それだけしか思っていないようだ。

 そしてちょうとその時だった。やっと香村が戻ってきた。

「香村さん、どうでした」

 吉田が聞くと香村は困ったような顔になった。

「それがですね、何も話す事は無いから帰れって。その一点張りで、何を言ってもダメなんですよ」

「何も話す事が無いって!」

 怒りをあらわにする沙希。それを見て香村は困った顔になると、事情を話してくれた。

「最初は斎輝ちゃんと遊びながら話を聞いてたんですけど、静音さんの妹さんが話を聞きたいと言った途端に怒り出して、それから何を言ってもダメなんですよ」

 事情を聞いた三人は顔を見合わせる。どうやらこのまま行っても、まともな話しは聞けそうに無い。

 う〜ん、どうしようかな。村長さんはどうしても話しは聞いておきたいし、けどこのままだとまともに話せないか。

 それから芝から句考え込む鈴音。そして納得したように何度か頷いた。

「分かりました。今日のところは帰ります。後日また来るとお伝えください」

「って、ちょっと鈴音!」

「だって沙希、私達あと六日もこの村にいるんだよ。その間に話が聞ければいいよ」

「でも鈴音」

「無理なときは無理、素直に諦めよう」

 その言葉に何故か香村は軽く笑い出す。

 えっ、なに、いったいどうしたの?

「あっ、笑ってごめんなさい。ただ、そういうところが静音さんとそっくりだなって思って」

「そうなんですけ」

「ええ」

 香村は懐かしい物を思い出すかのように静音の事を話し始めた。

「静音さんも最初は門前払いを食らって、あっさりとするほど素直に帰ったんですよ。それから毎日来て、毎日門前払いを食らって。そしてとうとう村長が折れましてね。それで話が進むようになったんですよ」

「でも、平坂開発は村長が言い出したんですよね?」

「ええ、でも開発会社はどうしても来界村開発を推し進めようとしたんですよ。そこで中間に入ったのが静音さんって聞いてます」

「えっ、そうだったんですか」

 どうやら吉田も知らなかったらしい。

「静音さんも大変だったみたいですよ。必至に会社を説得させるのと村長を納得させないといけなかったみたいですから」

 えっと、つまり、村長は平坂開発を持ちかけたけど、セリグテックスはそれで折れなかった。そこで仲介に立ったのが姉さんで双方を納得させて平坂開発が始まった、ってことかな?

 なるほど、確かにそう考えれば静音がどれだけ重要な役目を背負っていたのかが良く分かる。そしてその功績があったからこそ、来界村では静音の存在は大きいのだろう。

 だから源三郎さんは姉さんを名指ししたのかな? たぶんセリグテックスより静音さんと交渉した方が有利に持っていけそうだったから。

 けど、そうなるとやはり分からない事がある。それは村長が静音さんの事を話そうとしないからだ。

 先程の話が正しければ村長と静音は協力者であったはず、それがもう係わり合いになろうとしないということは、そこに何かがあったと思って良いんじゃないだろうか。

「結局、また怪しい人がでてきたという事か」

 どうやら沙希も同じ結論に達したらしい。そして吉田も同意するかのように頷く。

「静音さんの失踪。それを隠そうと思ってた羽入家が協力的で、協力してくれると思ってた村長が拒絶する。どうやら一筋縄ではいかないようですね」

 タバコに火をつける吉田は大きく煙を吐き出す。

「香村さん、村長さんのご機嫌は直りそうですかね」

「そうですね……難しいかも」

「そうですか」

「やっぱり今日は無理だね」

「でも、何か手を打っておかないと明日も無理でしょ」

 うっ、それもそうか。

 考え込む鈴音。だがこれといった考えは思い浮かばない。無理に記憶を引き出そうと試みるが、何故か昨日の事件を思い出してしまい身震いした。

「どうしたの?」

 心配そうに聞いてくる沙希。鈴音は笑顔を返して昨日の事件を思い出した事を話した。

「そういえば、例の殺人事件も静音さんの失踪後に起こり始めたんですよね」

 沙希の質問に吉田は頷き、香村は恐ろしそうな顔でその身を抱える。

「もう村では普通に歩けないほどだよ」

「無差別殺人なんですよね」

「いや、実はそうでないことが分かったんですよ」

「と、言いますと」

 吉田は手帳を取り出すと該当するページを開く。

「昨日殺されたのは竹村さんという方でしてね。それに被害者は全て来界村の人間なんですよ」

「つまり外から来た人は狙われない?」

「その可能性が高いです。だから玉虫様の祟りなんて言われているんでしょうね」

 なるほど、来界村を汚そうとした理由から来界村の人々が殺されている。だから祟りか。でも、逆に考えると祟りを利用して何かをしようとしてるのが妥当かな。

「もしかして」

 鈴音が口を開いたので全員の視線が集中する。

「祟りって噂を流してるのが犯人じゃないかな。そうすれば自分に捜査の目は向きずらくなるし、信仰心が強い村人はそう思い込む」

「なるほど、なかなかいい推理ですな」

 思わず手を叩く吉田。沙希も思わず笑顔を向ける。

「さすがけひょん、なかなかの名推理ね」

「だからけひょんはやめて」

 恨みがましい目線を向けてくる鈴音に沙希は笑い流した。

「さて、村長さんにも会えないですし、これからどうしますか?」

「どうもすいません」

 別に香村が悪いわけではないのだが、一応頭を下げてきたので鈴音達もそれなりの対応を返す。

 そしていつまでもここにいるわけにもいかないので、三人は村長の家を後にするのだった。



「う〜ん、結局なにも聞けなかったね」

「まあ、会えなかったんだからしょうがないでしょ」

「普段はあんな人ではないんですがね」

 三人で歩きながらそんな会話をする。そして鈴音が何かを思い出したのだろう、突然口を開いた。

「そういえば、玉虫様ってなんなんですか?」

「平坂神社に祭られている神様ですよ。詳しいことは知りませんが、行ってみれば分かるのではないのでしょうか」

 吉田の言葉に鈴音は即決する。

「じゃあ平坂神社に行こう」

「決めるのが早いな」

「思ったら即行動だよ」

「ならご案内しましょう」

 再び同行する事になった吉田。そんな吉田を鈴音は一応心配する。

「そういえば吉田さん、ずっと私達に付き合ってもらってるんですけど、仕事は大丈夫なんですか?」

「まあ、今のところは事件も起こっていないですし、あなた達の方が重要なんですよ。だからこうして同行してるんです」

「それはやっぱり、私が姉さんの妹だから」

「ええ、静音さんの影響力は来界村ではかなりの力がありますからね」

 ……影響力か。姉さんは何も話してくれなかったけど、いったいここで何をしていたんだろう。まあ、姉さんの事だから悪事に手を染めるなんて事は無いけど、姉さんが演じる役割って一体なんなんだったんだろうな?

 改めて感じる静音の存在。来界村での静音と鈴音が知っている静音はまったく違う人物に思えてきた。

 けど、聞いた話では鈴音が知っている静音はしっかりと存在している。

「姉さん、来界村だとどういう人だったのかな?」

 鈴音の呟きに沙希は不思議そうな顔をしている。

「それは鈴音が一番知ってるんじゃないの?」

「う〜ん、そうなんだけど。なんか、来界村での姉さんが見えてこないんだよね」

 鈴音の発言に沙希は首をかしげる。静音は静音だし、なにか特別な事があったわけじゃないと思ってるんだろう。

 そうなると結論は一つしかないだろう。

「分かった!」

 突然、沙希が手を叩くと二人の視線が沙希に向く。

「たぶん、村の人達は静音さんの事を何か隠してるんだよ。だから鈴音が知ってる静音さんとは違うんじゃない」

「……ううん、たぶんそれは違う。これは私の予想なんだけど、姉さん仕事だと別人のような活躍をしてたんだと思う。だから私にも何も話さなかったんじゃないかな?」

「それはありえますね」

 今まで黙っていた吉田が口を開いた。

「静音さんは混沌としてた来界村をまとめる事が出来た人物ですよ。それなりの能力を持っていても不思議は無いでしょう。そして家庭と仕事を分けるタイプなら、鈴音さんに仕事の事を話さないのも納得できると思うんですが」

 ……そうだね。

 つまり鈴音は静音の事で知らない一面がある。だから戸惑いもするし、困惑もする。だからまずはそれを知らないといけないのかもしれない。

「どちらにしても姉さんの事を知ろう。そして全部知った上で判断すればいいや」

「そうだね、それが鈴音らしいよ」

 沙希は頷き笑顔を向けて鈴音も笑顔を返す。

「さて、それではそろそろ行きますか」

 話が一段落したところで吉田がそんな事を言って来た。

「……えっと、どこえ?」

 沙希は大きく溜息を付く。

「これだからけひょんは」

「けひょんって言うな!」

「平坂神社ですよ。静音さんとは直接関係無いかもしれませんが、連続殺人事件とは関係がありますからね。それに、もしかしたら二つの事件は繋がってる可能性がありますから」

「ですね。静音さんと殺人事件、静音さんの失踪と始まった事件だから無関係だとは思えない」

「それに意外なところから姉さんの事が聞けるかもしれないし」

「なら行きましょうか」

 こうして三人は村の奥にある平坂神社に向かって歩き出した。

 事件は今現在もおきているかもしれないけど、三人には情報がまったく無い。殺人事件すら静音の事すら分かっていない。

 つまり必要なのは情報。どんなことでもいいから情報を集めないと何も見えてこない。そしてその情報から必要な物を取り上げればいいだけだ。

 けれども鈴音も沙希も気付いているのだろうか、すでに連続殺人事件に深く関わっている事に。







 そんな訳でお送りした第九話。……まあ、これと言って進展は無かったですね。自分で言うのもあれですが、まだ二日目ですからね。事件が動くのはこれかです……たぶん。

 さてさて、そんな訳で、明日は給料日だ――――――!!!キタ━━━━ヽ(゜∀゜ )ノ━━━━!!!!

 これで在庫があればリインが買えるし、武装神姫にもつぎ込めるぞ!!! でも、その前にグラボ変えたいな、そろそろFEZをスムーズにやりたいし。

 後は新三国無双か……オンラインの方ですよ。こっちにもちょっとつぎ込みたいですからね。まあ、そんな訳で、少し遊びます。断罪を楽しみにしてくれてる方は少々お待ちください。……まあ、なるべく早く次をあげますね。

 ではでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。更に感想評価、そして一回ぐらい投票してくれてもいいんじゃないかとお待ちしております。

 以上、でも再び病気で仕事をやめたから、また就職活動をしている葵夢幻でした。

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