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第六話 一日目の終わり

 桐生家へと戻った鈴音と沙希の二人を琴菜は心配そうに迎え入れて、その時には美咲に笑顔が戻っていた。そんな美咲の笑顔に鈴音は複雑な事を思う。

 う〜ん、こんな事件が続いて慣れてるとはいえ、こんなにも早く切り替えが出来ることは良い事なのだろうか。

 未だにショックが抜け切らないというのに、一緒の現場に居ながらもう笑うことが出来る美咲に鈴音はそんな事を思う。

 それから鈴音達は夕食を頂き、美咲のリクエストで鈴音は一緒にお風呂にまで入った。

 そして今、鈴音は一人で窓から顔を出して涼みながらよく見える夜空を見ていた。

 そこへ風呂上りの沙希が戻ってきた。

「鈴音」

 沙希が声を掛けてきたので鈴音は窓を閉めて部屋の中に戻る。

「美咲ちゃんは?」

「宿題をするって自分の部屋に戻っていった」

「そう、それじゃあ」

 沙希は自分の荷物を漁ってシャーペンとノートを取り出した。

「沙希も宿題するの?」

「そんな訳無いでしょ。それに休学届けを出す前にレポートは全部出してきた」

「嘘! 私まだ残ってるんだけど」

「じゃあ頑張れ」

「さ」

「断る」

「う〜、まだ『さ』しか言ってないよ」

「言いたい事は分かる。だから頑張れ」

「……ケチ!」

 不貞腐れてそっぽを向く鈴音、そんな鈴音を無視して沙希はノートに何かを書き始めた。鈴音も最初は無視しようとしたけど、どうしても好奇心を捨てきれないのだろう。沙希が書いているノートを覗く。

「……なにこれ?」

 ノートには美咲や静馬の名前、それから羽入家や村長と書かれている。

「今日知った事をまとめようと思ってね。こうすれば来界村での出来事を整理できるでしょ」

「ふ〜ん」

 鈴音は先程琴菜が持ってきてくれた麦茶を二つのコップに注ぐと、一つを沙希の前に置く。

「っで、何処からまとめるの?」

「う〜ん、まずは静音さんが来界村に来た経緯かな」

「来界村開発戦争だね」

「そういえば、なんで来界村開発の話が出たんだろう?」

「姉さんの話だと、確か……国が交通網を広げる為に、最初は道路と線路を引くだけだったんだけど、県が地域活性化の為に開発もするって話しになったんだと思う」

「そう」

 沙希は鈴音と話しながら、整理した事をノートに書く。



 来界村開発戦争

 来界村開発は国と県が地域活性化の為に始めた公共事業。それを請け負ったのがセリグテックスという静音が勤めていた建設会社。

 セリグテックスは開発にあたり、来界村の住人に詳しい事を説明するが、村長と羽入家を始め村の住人が猛反対した。

 話はいつまでも平行線を辿り、一向に進展しない。

 そこでセリグテックスは強攻策に出る。公共事業という名分あったからこそ、セリグテックスはそのような手段に出たものと思われる。

 重機を率いて来界村に乗り込もうとしたセリグテックス。だがその動きは事前に来界村に伝わり、村長は住人を連れて村の入り口に座り込み、道を塞いで重機を村に入れようとはしなかった。

 結局、その場での話し合いになったが、そんな状況でまともな話し合いができるはずも無く。最後には乱闘騒ぎの寸前まで行ったらしい。

 更に睨み合いが続くセリグテックスと来界村住人。夕暮れを迎えてこのまま夜になるのはないかと誰もが思ったその時に現れたのが羽入家当主、羽入源三郎だった。

 源三郎は村長を説得させると住人に道を開けるように指示。羽入家の指示となれば来界村住人は逆らう事が出来ないのだろう、しかたなく道を開ける来界村の住人達。こうしてセリグテックスの強攻策は成功したかに見えた。

 だがその夜、重機を村に置いて帰って行ったセリグテックスの隙をつき、羽入家は重機の爆破を成功させる。

 重機を爆破されてはどうにもならないセリグテックスは次に手段を考えるが、その前に羽入家が動いた。

 セリグテックスの会長、その孫が誘拐未遂に遭う。犯人は捕まっていないが警察は羽入家と関連があると思っているようだ。

 そんな事件が続き、セリグテックスは羽入家を恐れて来界村からの撤退を検討し始めた。そんな時、村長から意外な提案が持ち掛けられる。それが来界村の外れにある平坂の開発。

 これは当初の予定とは大分外れるが、国としては問題は無かった。問題があったのは県の方だ。平坂は県境になり、どうしても隣の県と話し合う必要があるし、利益も大分持っていかれることになる。だが、反対すれば羽入家からどんな仕打ちが待っているか分からない。こうして県も折れて、平坂開発が始まるはずだった。



「それにしても凄いよね」

「開発ってことは、かなりの重機を持ち込んだはず。それを全部爆破したんだから、その時から羽入家が本格的に動き出したんだと思う」

「何もそこまでしなくてもいいと思うんだけど?」

「それはセリグテックスが無理矢理開発を推し進めようとしたから、羽入家の逆鱗に触れたんだと思う。許せなかったんじゃない、強攻策に出たセリグテックスが」

「でも、なんでわざわざ爆破なんて派手な事をしたんだろう?」

 沙希は手を休めると、先程鈴音が入れてくれた麦茶を口にしてから言葉を出す。

「たぶん……脅し。いくら強攻策に出ようと羽入家にはそれを潰す事が出来る、それを示したかったんじゃないの」

「私設軍隊だっけか、羽入家が持ってる力って」

「それに権力。武力と権力を持っているんだから、羽入家はかなりの力を持ってるって思っていいでしょ」

「でも、それだけの力をもってながら、なんでこんな田舎に居るんだろう」

「……そう言われればそうね。ここなら東京か大阪、どっちにでも出て行けるのに」

「なにか来界村に留まる理由があるのかな?」

「う〜ん、こればかりはね」

「まあ、明日聞いてみればいいか」

「鈴音……あんたやっぱりのんきすぎ」

 呆れた目線を送ってくる沙希に鈴音はすねた目線を送る。

 う〜、そんな目で見なくてもいいじゃない。でも……

「そういえば、さっき思い出したんだけど」

「なに?」

「来界村に怖そうだけど優しいおじいちゃんがいるって、姉さんが言ってた。もしかしてそのおじいちゃんが羽入源三郎なんじゃ」

「絶対に違う!」

 はっきりと言い切る沙希に鈴音は更にすねた目を向けた。

「そこまではっきりと言い切る必要ないでしょう」

「鈴音が絶対にありえない事を言うから」

 すねる鈴音を無視して沙希はシャーペンを持つともう一度ノートと向かい合う。

「じゃあ次は静音さんの失踪まで」

 それだけ言って、二人はまた話をまとめ始めた。



 静音の失踪

 平坂開発に乗り出したセリグテックス、だが一つだけ問題があった。いざこの話を来界村に持ち込むと猛反対を受けたからだ。それから村長に話を聞くと、どうやら平坂開発は村長の独断で決めた事らしい。

 やっと光が見えた開発事業をここで止めるわけには行かないセリグテックスは、どうしても平坂開発を行わなければならなかった。だが強攻策に出ればどんな目に遭うか分かった物ではない。そこでセリグテックスは住人の説得に乗り出そうとしたのだが、ここで問題が起きる。

 羽入家の脅威は社員に伝わっており、誰も来界村とは関わりたくないようだった。だが誰かが来界村に行って住人を説得しなくてはいけない。困り果てたセリグテックスは一人の社員に白羽の矢を立てる。それが京野静音。

 こうして静音は来界村に行く事になったのだが、それは単身で来界村に乗り込む事を示していた。

 羽入家を恐れているセリグテックスは静音に全てを任せて支援をしようとはしなかった。そのことを静音はよく愚痴っていたらしい。

 今考えればセリグテックスの意図が分かるというものだ。ようするに静音は捨て駒、たとえ羽入家の怒りを買ってもそれは静音に降りかかり、セリグテックスは静音を見捨てればいいだけだった。

 たぶん静音もそれは分かっていたのだと思う。それでも静音が鈴音に何も言わなかったのには何か理由があると推測される。

 その理由の一つに、桐生静馬の存在があったと思われる。

 来界村には宿が無い。それに住人を説得するにはどうしても来界村に泊まった方がやりやすかったのだろう。そこで静音は村長に相談、村長は青年団のリーダーである静馬の家を紹介した。

 この時の静馬は反対派だった。そして村長が静馬を紹介のもそのためだろう。青年団のリーダーである静馬を説得できれば、青年団そのものが味方になる。静音にとっては来界村での味方を得ることなるのだから。

 こうして静音は静馬の説得から始まったのだが、話し合いを重ねていくうちに二人の心に変化が現れる。いつの間にか互いに思いあうようになったようだ。こうして静馬は静音に付き、二人の仲は村中に広まった。

 青年団を味方につけた静音の説得は一気に加速して行ったが、やはり立ち塞がったのが羽入家。源三郎は頑として折れなかったらしい。

 そこで静音はよく羽入家に足を運んだ。静馬もよく付き合ったらしいが、静音一人で行く事もあったらしい。

 そうした静音の努力が伝わったのか、遂に源三郎が平坂開発を受諾。源三郎が折れた詳しい理由は誰も知らないらしい。だがある日突然、源三郎が村中に公布した。それは「京野静音を妨害してはいけない」と「京野静音に協力すること」だった。

 セリグテックスではなく、わざわざ静音に限定した宣言だった。

 こうして静音を中心に平坂開発がスタートした。

 完全に来界村との交渉役に選ばれた静音は来界村に足を運び、詳しい事をまとめていった。静音の活躍もあって平坂開発も順調に進み、静音と静馬の仲も深まって行った時だった。

 突然静音と静馬が失踪、これにはセリグテックスも来界村も大いに戸惑った。二人は開発に深く関わっていたため、開発は一旦中断せざる得なかった。

 来界村とセリグテックスは二人の失踪届けを警察に提出、そして鈴音にも静音の失踪が伝わった。



「それにしても不思議」

「うん、わざわざ姉さんを名指ししての公布だからね。さっき琴菜さんに聞いてびっくりしたよ」

 夕食時に鈴音は羽入家と静音の関係を琴菜に聞いていた。そしていろいろな事が分かり、その一つがこれだ、

「でも、なんでわざわざ姉さんを名指しして協力しろ、なんて言ったんだろう?」

「もしかしたら……それが罠だったとか?」

「なんで?」

「源三郎の目的が静音さんの排除なら、油断させておいた方が良いに決まってる」

「う〜ん、でも静馬さんも一緒だったんでしょ。そんなにあっさりと罠にかからないと思うんだけど」

「だから静音さんは静馬さんと逃げたんじゃない」

 う〜ん、確かに筋は通ってるんだけど……何か違う気がする。なんだろう、この違和感。

 鈴音は相変わらずこの説明には違和感を感じているようだが、その違和感がなんなのかと言われれば、はっきりと言い表す事が出来なかった。

「……けど、羽入家が鍵なのは確かかもしれない」

「ずいぶんとあやふやな言い方」

「今はまだはっきりと分からないけど、羽入家が姉さんの失踪と深く関わっているんだと思う」

「だから、それが源三郎の仕業なんじゃ」

「う〜ん、そう言われると違う気がする」

「……鈴音」

「なに」

「私に喧嘩を売ってるの?」

「ち、違うよ〜。沙希〜、目が怖いよ〜」

 白い煙でも口から吐き出しそうな雰囲気で迫ってくる沙希を何とかなだめた鈴音は、座りなおして話を別の方向へ持っていく。

「そういえば、姉さんの話はよく聞くのに静馬さんの話は全然出てこないね」

「そう言われればそうね。静音さんから何か聞いてないの?」

「私も静馬さんの存在は警察から聞いて始めて知ったんだよ」

「そういえばそうだった」

 静音からは親切にしてくれる人が居るとは聞いていたけど、まさかそこまでの関係になっているとは思っていなかった。薄々感づいてはいたが、具体的には何も聞いてはいなかった。

「そういえば、私達静馬さんの事何も知らないよね」

「美咲ちゃんに聞いてみる、ってワケにも行かないか」

「そうだよね」

 バスの中で起きた出来事を思い出せばとても美咲に聞くことはできなかった。静音と静馬は美咲の中では苦痛の種になっている。それをわざわざ穿り返す事はしたくなかった。

 結局、そこで詰まってしまい。これ以上考えを廻らしてもどうにもならなかったので次に行く事にした。

「っで、次は?」

「静音さんの失踪から始まった連続殺人事件」



 来界村連続殺人事件。

 静音達が失踪した頃より始まった連続殺人事件。これには奇妙な共通点がある。まず凶器は必ず刀が用いられている。その刀の攻撃、一回ないし二回で被害者は絶命。そのうえ一撃で首を切り落として、必ず首をどこかに持ち去っている。そのことから警察は刀の扱いに長けた者を追っているが、来界村に該当する人物は居ない。

 来界村ではもう何人もの村人が殺害されている。同じ手口に首を必ず持ち帰るという共通点から警察は同一人物の犯行と見ているが、未だに犯人は捕まっていない。来界村の人達には、まだ安心して暮らせる状態ではないようだ。

 皮切りとなった最初の被害者は平坂神社の神主夫婦。この時から上記の特徴が見られたそうだ。もちろん、首は見つかっていない。

 それから何人もの村人が殺された。その中に秋月夕呉の妻、秋月紅葉あきづきくれはと村田俊吾の両親が居る。そして秋月夕呉は村田夫婦が殺される少し前から、妻を殺されたショックで村を徘徊するようになった。その行動は明らかに不審であり、そのため俊吾は秋月夕呉が両親を殺した者だと思い込んでいる。

 ちなみに秋月夕呉も一度、容疑者として警察で事情聴取を受けた。だが村田夫婦が殺された時にはしっかりとアリバイがあった為に、容疑者から外れる事になった。

 それから、これは確証がある話ではないのだが、警察が誰かに狙いを定めて容疑者として連れて行くと、必ずその時に殺人が起きる。そう言われているそうだ。

 これはあくまでも噂だが、実際にそういうことが何度かあったらしい。そのため、警察は何度となく空振りをしている。

 そして噂はもう一つ。この連続殺人事件は平坂神社に奉られている玉虫様の祟りだと言うものが居るそうだ。来界村を汚した祟りだという、そのため玉虫様が人々に乗り移り、村人を殺しまわっている。そういう噂が密やかに広まっているそうだ。

 まあ、噂はしょせん噂でしかないということだろう。



「こんなところかな」

「そうだね、さっき琴菜さんから聞いた話を入れればこれで全部かな」

「そういえば鈴音、あの死体を見た時に何かを感じたでしょ」

「凄い! なんでわかったの?」

「鈴音との付き合いも長くなったからね」

 確かに鈴音は立ち去る最後の瞬間、死体に目を向けてそれを感じ取っていた。

「でも、特別にこれってものでもないよ」

「いいから言ってみなさい」

「うん……あの死体を最後に見たときにね、凄いって思ったの」

「なんで?」

 首を傾げる沙希。凄いという発想がどこから来たのか想像できないようだ。けれども鈴音には、はっきりとそれを見て取れた。

「だって、あの死体……首を綺麗に落としてたんだよ。あそこまで出来るのは、そうとうな修練を積んだ人だけだよ」

「鈴音は出来ないの?」

「……うん、無理かな。しっかりと抑えて貰っても骨で刃が止まるか、無理矢理斬ってもあそこまで綺麗には斬れないよ」

「そうか……というか鈴音、なんでそうはっきりと答えられるの? というか、前に人の首を斬った事がある?」

「そんな訳無いでしょ! 剣術の修行で首に見立てた、竹にわらを巻いた物を綺麗に斬れなかっただけよ」

「そんな事をやってるんだ」

「うん、だから死体の首を斬り落としたのは相当の手練れだよ」

「……ちなみに、静音さんは出来たのかな?」

「姉さんなら……たぶん、居合いで出来たかな? けど首と首に見立てた物は違うよ」

「そんな事は分かってる。私も静音さんがやったとは思ってない。けど、静音さんに出来たってことは、ちょっと習えば誰にでも出来るんじゃない」

「それはない。首を落とすだけなら出来るけど、あそこまで綺麗には落とせない」

「……そういうものなの?」

「そういうもの」

 剣の腕という物は切り口を見れば大体分かるようで、鈴音は死体の切り口からそうとうの手練れが斬った物だと察したようだ。

「それに……姉さんと同じ事が出来る人が多くいると思う?」

「凄い説得力だな」

 静音は神がかった事を簡単にやってしまう事がある。それだけ静音の能力が高いという事かもしれないが、その高い能力と平行して思い掛けない短所もあったりする。

 沙希はその事を良く知っているので簡単に納得した。それでも沙希には引っ掛かるものがあるのか、考え込んでから口を開いた。

「けどさ、刀以外の物でもあそこまで綺麗に斬れるんじゃない。例えば……ウオーターカッターとか?」

「どこから持ってくるの?」

「闇ルート!」

 ぐっと親指を立てて主張する沙希、鈴音は思いっきり溜息を付いて見せた。

「日本刀は刃物中では一番優れた究極の刃物なんだよ。だから日本刀に勝る切り口なんて存在しないし、そんな物を使えば現場がもっと汚れるんじゃない」

「そういえば、死体の周りは綺麗だったね」

 二人ともしっかりと確認したワケではないが、死体の周りに血が飛び散っていない事は確かなようだ。

「あれが日本刀を達人が使った証拠。下手な人が使えばもっと血が飛び散るけど、達人の腕ならほとんど血は出ないって先生が言ってた」

「剣術の先生?」

「うん、先生は山籠りの時に熊と戦って斬り殺したそうけど、そんなに血は出なかったって言ってた」

「……その先生って何者? というか熊と戦ったの? しかも勝利した?」

「沙希、質問が多い」

「ツッコミどころが満載って言って」

「それに警察でも刀のような凶器って言ってたでしょ」

「そういえばそうだった」

 警察でも凶器は日本刀だと断定しているようだが、その凶器が未だに何処にあるのかも分かっていない。この村で日本刀と言える物は平坂神社に奉ってある御神刀だけだが、神社の人の話では持ち出された形跡は無いようだ。

 つまり、この村には御神刀以外の日本刀が存在する事になる。

「どっちにしろ犯人は日本刀を手に、この村に居るわけだ」

「そうなるね」

 昼間死体を見た所為か、背筋が寒くなる鈴音。確かにあまり気味の良い話ではない。そんな話をしてたからだろう、鈴音は急にあの人物が心配になってきた。

「そういえば、俊吾君大丈夫かな?」

「警察の人が送ってくれたんだから大丈夫でしょ」

「けど、また秋月って人を付回すんじゃない?」

「まあ、そうするでしょうね。なにしろ親の敵だと思ってるんだから」

「そんな時に本当の犯人と出会ったらどうするんだろう?」

「……そうならない事を祈ってあげなさい」

 冷たいと思われるかもしれないが、そうするだけしか鈴音達に出来ないのも確かだった。



 結局、情報はかなり集まったが肝心な事は何一つ分かっていない。そのうえ連続殺人事件と思わぬことも起こっており、静音の捜索はどんどん難しくなっていく。

「とにかく、殺人犯に注意しながら静音さんを探していくしかないでしょ」

「そうだね」

「それに、明日は羽入家に行くんでしょ。まずはそっちを心配しないと」

「うん……そうだね」

 明日行く羽入家、そこには静音の前に立ちはだかった源三郎が鈴音の前に立ちはだかろうとしている。鈴音はなんとか源三郎から静音の事を聞きださないといけない。それは容易でない事は今までの話からよく分かる。それでも、行かないと静音には近づけないのだと、鈴音はそう感じていた。

「羽入源三郎、一体どういう人なんだろう」

「どっちにしろ一筋縄ではいかないと思うけど」

「うん、でも、姉さんのことだけは聞き出さないと」

「そうね」

 ……けど、なんだろう、そんなに怖くは無い。なんで……そう思うんだろう、私前にその人に会った事があるのかな? う〜ん、そんな記憶は無いんだけど。まあ、いいか、どうせ明日には分かるんだから。

 そう、明日には羽入家のことが分かる。それだけもかなり進展するだろう。

 それから夜は更けて、鈴音達は明日の為に早めに寝る事にした。



                  ─断罪の日まで、後……六日─







 そんな訳でやっと書き上げた第六話、今までに出てきた話をまとめてみました。これで事件の概要が分かったと思います。

 さて、犯人が分かった!!! という方はご一報ください。特に何かがあるわけではありませんが、謎が解けた快楽をプレゼントします。って、いくらなんでも早すぎますね。

 さてさて、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、この断罪の日は今までジャンルをホラーにしてきましたが……ホラーな展開が思いつかん!!! ということでジャンルを推理に直しました。……耐え切れなかったんです!!! このままホラでいいのかずっと悩んでたんです!!! という事で、別にどうでもいいことですが、そうなりましたのでお知らせしときます。

 ではでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。更に評価感想、そして投票もお待ちしております。

 以上、甘い物が切れると何も出来ない葵夢幻でした。

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