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第三十話 平坂水夏霞

「ごちそうさまでした〜」

「お粗末さまでした」

 すっかり水夏霞の自宅で昼食を済ました鈴音達だが、水夏霞は一向に嫌な顔はしなかった。なにしろしっかいと代金を取っていたのだから。相変わらずの商魂である。

 食後に出されたお茶で一息を付き、午後のまったりとした時間を満悦した鈴音達は井戸端会議をしていたのだが、その話が尽きてくるとそろそろ本題の話へとなっていった。

「要するに、玉虫様伝説の真相を知りたいんですか?」

 崇りだの昔話だのいろいろと出てきたが今度は伝説というのが出てきたらしい。

 沙希が伝説について他の話と違うのかと聞いてみると、どうやら人によって言い方や話が少し違うだけ、そのような違いが出ているようだ。つまり大した意味は無い。

「姉さんも玉虫様について調べてたんだと思うんですよ。それで何を調べてたのかなって?」

 あえて崇りという言葉は出さなかった。そんな単語を出しても意味は無いし、かえって心象を悪くするのではないかと言う懸念があったからだ。

 水夏霞は少し考えるような仕草をすると何かを思い出したのか、手を叩いてから話し出した。

「あぁ、そういえば暇な時によく蔵の文献を漁ってましたね。でも趣味だからって父さんも私もあえて干渉しないで自由に調べて貰ってたんですよね。まあ、元々放置してあった物が多かったですから」

 つまり静音は散らかり放題の蔵を掃除しながらいろいろな文献を探し出しては読んでいたようだ。それをまとめたのが鈴音の脇に有る黒いノートなのだろう。

 けれども全てがそこから出たとも思えない。沙希はその事を水夏霞に聞いてみる事にした。

「でも、知られて無くても伝わっている事って有るじゃないですか。口承……でしたっけ? そういうのはないんですか?」

 その質問に水夏霞は答えずらい顔になった。どうやら軽く話せる物ではないようだ。けれども水夏霞の父が静音に話した事を思い出したので、鈴音達にも話しても構わないだろうと判断したようだ。

「確かにそういうのもあるんですけどね、あまり良い話じゃないんですよ」

「というと?」

「なんというか、怪談……みたいなものかな?」

 顔を見合わせる鈴音と沙希。確かに崇りというのは何度か出てきたが、ここに来て怪談まで出てくるとは思わなかった。

 とりあえず話を聞いてみようと鈴音は水夏霞に話してくれるように頼むと、水夏霞はお茶を入れなおしてから話をする事を告げた。どうやらこの神社は相当暇なようだ。

 それから水夏霞の話が始まった。



 玉虫様は神様であって崇める対象でしょう。けど、この話はそれを根本から覆す事になる話だから神社の親族。しかも継承者にしか伝えられていなかったのよ。

 それは今に伝わっている玉虫様の話とはまったくの逆だからなのよ。玉虫様は確かに人身御供になったけど、それは自らの意思でなったわけじゃなく。強制的にそうさせられたって話なの。

「まあ、よくある話ですよね」

 確かに沙希さんの言う通りなんですよね。生贄になれって言われて素直になる聖人君子のような人は、今までの人類で何人いるかいないかぐらいですよ。

 そうなると当然のように玉虫様は村人を憎むじゃないですか。だから時々蘇って村人を苦しめてるって話が昔から何度かあったみたいなんですよ。

「もしかして、それが玉虫様の崇り?」

 鈴音さん良くご存知ですね。まさかその事を知ってるとはびっくりしましたよ。

 まあ、その崇りなんですけどね。幾つかのパターンが有るみたいなんですけど、そこは私も良く知らないんですよね。

 けれども玉虫様の崇りを起こすためには必ず生贄が必要なんですよ。しかも人の首が、それを幾つか分りませんが、聖域に首を供えると玉虫様の崇りが起こるみたいなんです。

「聖域ってどこなんですか?」

 それはお二人も知ってるところですよ。けどその話をしていると中断されるので今は話を続けますね

 えっと、それでですね。首を備えって何本かの柱を立てて囲むと、囲んだ中に玉虫様が現れて恨みを晴らしてくれるみたいなんですよ。これが平坂神社に伝わってる怪談ですね。



 一通りの話を終えて水夏霞は一息付く。

 その間に鈴音はノートの内容と水夏霞の話について思考を巡らせていた。

 姉さんのノートと水夏霞さんの話で共通する点は首と柱だよね。水夏霞さんの話だと具体的な数は出てこなかったけど、姉さんのノートではしっかいと数が記されてる。まあ、怪談として伝わってた話だから、そういう部分は忘れ去られたんだろうね。

 そうなると首の数は千、柱の数は十。柱はともかく千の首を揃えるのは無理だよね。それに聖域についても私達が知ってる場所って言ってたけど、それは後で聞くしかないか。

 けど、聖域については姉さんは羽入家からの文献から発見したようだけど、この様子だと神社からは聖域についての詳しい文献は出て来そうに無いな。なにしろ先に姉さんが調べてるからし、神社でも怪談で口承でしか伝わってないぐらいだからね。

 あれっ……あっ! そういえば、今回の事件って首が必ず無くなってるよね。それってつまり被害者の首は聖域に供えられてるって事になるんじゃないかな。

 そうなると今回の事件は本当に玉虫様の事と繋がる事になる。今までは姉さんのノートと同じような事が起きてるって事で結び付く事にはならなかったけど、もし聖域で被害者の首が発見されれば確実にこの二つは結び付く。

 そうか! 村長さんはその事に気付いたんだ。だからこそノートを私達に託した。それを知られたから殺された。首を持っていかなかった理由は分らないけど、村長さんは二つの関連に気付いて私達に知らせようとしてたんだ。

 そうなると後で聖域に行かないといけない。それさえ見つければ警察も羽入家さえも動かす事が出来る。それに村長さんの敵も討てるし姉さんも見付かるかもしれない。

 そう、全ての鍵は聖域にあるんだ。

 鈴音が結論を出した時だった。水夏霞は鈴音の傍らにある箱に目を向けた。

「そういえばさっきから気になってたんですけど、その箱なんなの?」

 模造刀が入っている箱を指差しながら水夏霞が聞いて来たので、鈴音は箱を開けて模造刀を取り出して村長が作った物だと説明した。

「あぁ、そういえば前に村長さんが勝手に御神刀を持ち出して模造刀を作ってたっけ、なんでそんな事をするのかは誰も知らなかったみたいだけど。なにしろ私も両親の葬式やらなんやらで忙しい時だったから、持ち出された事も知らなかったのよね」

 少しだけ悲しそうな顔をした水夏霞に鈴音は反応しなかった。ここで気を使ってはかえって水夏霞にも気を使わせる事になる。だからこそ何事も無かったようにしている。

 それにしても、やはり村長は誰にも言ってはいない様だ。

 それに沙希には少しだけ模造刀に関して気になる事があったので尋ねた。

「そういえば御神刀の模造刀なんてそう簡単に作れる物なんですか? 同じ刀を作るのは無理って静音さんに聞いた事があるんですけど」

 確かにその通りだ。刀など寸分違わないで同じ物など存在しない。『反りが合わない』という諺が有るように。一つの鞘に二つの刀が納まることなどありはしない。つまりまったく同一の刀など存在しないという事だ。

 それなのに村長はわざわざ模造刀を作った。例え型を取ったとしても簡単に作れる物なのか沙希には分らないようだ。それは水夏霞も同じでどう答えて良いのか分らないようだ。

 そんな二人を見かねて鈴音が代わりに答えた。

「真剣、つまり本来の刀ね。これは人を斬る為の道具や装飾品として職人の手で一つ一つ作られてた物だから同じ物なんて作れないの。今のように大量生産出来るような物じゃないからね」

「じゃあ、その模造刀はただの増産品?」

 つまり型を取っての大量生産の用法で特別製作された物だと沙希は言いたいのだろう。けれども鈴音は首を横に振った。

「正確に言うと違うの。これは私の想像だけど、たぶん鉄を型に流して大まかな形を作ってから叩いて鍛えてるの。それからまた型に入れて鍛えて、、そういう工程を繰り返してる物。つまり大量生産されたものじゃなく、大量生産の用法に手を加えて特注した一品。だからただの模造刀じゃないと思うよ」

 つまりこの模造刀は手間隙掛けて作ったという事だ。大量生産の模造刀ならわざわざ打って鍛える必要は無い。強度など有る程度あればよいのだから。けれどもこれは真剣とは言わないが、それなりに鍛えて強度が有る事は確かなようだ。それは鈴音だからこそ分った事だろう。

 そうなるとこの模造刀はただの装飾品ではなく、何かしらの使用目的があったために作られたという事になる。

 何に使用するかは分らないが鈴音には模造刀に関して一つだけ疑問に思っている事があった。

「そういえば、この模造刀を作る時に祈祷をやったみたいですけど、それは知ってます?」

 香村の話では模造刀を作る時に祈祷師を呼んで通常の刀から霊刀と呼ばれる物にしたらしい。そんな行動を取ったからこそ村長の奇行と呼ばれる事になったようだ。

 その事については水夏霞は何も知らなかった。なにしろ御神刀を持ち出された事すら気付かなかったのだから、何をしていたのかも分るはずが無い。

 どうやらその事を知っているのは香村を始め、村長に近しい数人だけで後は噂が少しだけ広まったようだ。

 その事については何も分らないのかと鈴音が思ったとき水夏霞が声を上げた。どうやら何かを思い出したようだ。

「そういえば怪談の中に二つぐらいだったかな? 霊刀を使った話があったっけ」

 それから水夏霞はその話をしてくれた。



 これは玉虫様の復活した後。つまり首を供えて柱の囲いで復活した後の話なんだけどね。

 ほとんどの話が玉虫様の崇りが収まるまで祈り続けたんだけど、一つか二つ玉虫様を退治した話があるのよ。

 もちろん玉虫様を退治するなんてもっての外だから、ほとんど伝わってないし、本当にそんな事があったかは確かでは無いけどね。

 どうやらその話は、あっ、そうそう、鈴音さん、玉虫様の本は読みました?

「ええ、暇な時に物語の部分は読みましたよ」

 なら丁度良いです。この話はですね。あの時に現れた僧が言った事を元に作られた話だって言われてるんです。

「なんか出てきてすぐに死んじゃった人ですか?」

 鈴音さん容赦ないですね。まあ、その通りなんですけど。

 あの本の話だと玉虫様の最後を看取った若者が神社を再建したり柱を立てたりしてたじゃないですか。でも実はあれは僧が行ったって話も伝わってるんです。

 まあ、そっちはかなり物騒ですから怪談なんですけどね。

 なんでも無理矢理人身御供にされた玉虫様が化けて出て村人達を殺すようになったんですよ。

 そこに現れたのがあの僧で、村の人達は僧に玉虫様退治を依頼したそうです。そしてそれを手伝ったのがあの若者だったそうです。

 僧はまず玉虫様を封じる結界を作る為に囲むように柱を作ったようです。そこに玉虫様を誘き出して霊刀、これは御神刀と言われてますけどね。それで玉虫様を退治したようです。

 まあ、これを元に同じような話が一つや二つあるんですけどね。つまり霊刀とは玉虫様を退治する為の武器らしいですよ。



 えっ、あれっ、ちょっとまって?

 鈴音は水夏霞が最後に発した言葉に混乱してしまった。

 確か村長さんの遺言じゃないけどノートに記された言葉だと、この模造刀は武器って書いてあったよね。つまりこの武器を使って倒す相手は……玉虫様……いやいや、そんな事がありえるわけが無い。だって玉虫様なんて何処にもいないじゃない。居ない人をどうやって倒せって言うの?

 けれども村長は模造刀を武器だと記している。それはまるで玉虫様を倒せといわんばかりに。

 けど、そんな事……あっ、もしかして。村長さんも琴菜さんと同じなんじゃ。

 琴菜は自分に圧し掛かる責任を軽くする為に静音達の失踪を崇りの所為にした。もしかしたら村長も静音の失踪に責任を感じて崇りを信じたのではないかと、そういう事ではないかと鈴音は思ったようだ。

 鈴音がそう結論を出そうとしていた時だった。どうやら一息付いていた水夏霞がまだ続きが有るといって先程の話を続け始めた。



 それから霊刀、つまり今の御神刀ね。どちらの意味にしても玉虫様にトドメをさしたのですから、それから御神刀として祀る事になったんですよ。

 つまり御神刀とは玉虫様を封じるための武器であり、違う解釈をすると退治するための武器。どちらにしても玉虫様にとっては良くない物なんですよね。

 けれども関わりが深いからこそ敬意を込める意味で祀っているんです。

 だから怪談として伝わっている話には必ず霊刀が出てくるんです。まあ、それは御神刀を意味しているんですけどね。つまり御神刀を使って玉虫様を押さえ込むってのが話のオチですね。

 でも少し興味深い事が有るんですよね。

「まだ怪談の話が続くんですか?」

 ううん、そうじゃないんだけど。鈴音さんも気になっているでしょ。村長さんがわざわざ祈祷師を呼んで霊刀に仕立てた訳を。

 それでこれは聞いた話なんだけどね。どうもその模造刀、怪談に伝わっている霊刀と同じ祈祷をやって作ったじゃなかって思ったの。つまり怪談で出てくる霊刀と同じ力を持っている霊刀を作った。まあ、真実ならね。



 そこで話が終わったのか水夏霞は一服する。その間に鈴音は模造刀について考えていた。

 つまりこの模造刀は……御神刀が霊刀だとしたら同じ力を持った霊刀って言う事? ……でも、それならわざわざ模造刀にする必要が有るのかな? 霊刀を作るだけならわざわざ模造刀にする必要は無いと思うけど。

 もし村長が玉虫の怨霊と戦うための武器だとして残したのだとしたら、わざわざ御神刀を模した刀を作る理由は無い。以前に霊刀を作った時の記録が残っているなら、それと同じ方法で霊刀を作ればよいだけの話だ。

 それなのにわざわざ御神刀を模した刀を作って霊刀としている。そこには別の意味があるのではないか。鈴音はそう思った。

「霊刀については分ったんですが、もう一つ分らない物があるんですよね」

 沙希が質問を出してきたので鈴音の思考は中断されて再び会談へと意識が向かった。

「話に出てきた聖域ですけど、それは一体何処なんですかね」

「ああ、それは私も思った」

 沙希の言葉に同意する鈴音。確かに聖域という場所は気になっていた。来界村にそんなような場所があるとは思いつかないようだ。

 そんな二人とは違って水夏霞は聖域の場所をあっさりと口にする。

「それはお二人もご存知の平坂洞よ」

『へっ?』

 あっさりと出た答えに鈴音と沙希は拍子抜けした声を上げた。先程知っている場所とは聞いていたが、まさか平坂洞が出てくるとは思っていなかった。

 けれども水夏霞があっさりと言い切るには、はっきりとした理由が在った。

「鈴音さんはあの本を読んだんでしょ。平坂洞の奥は玉虫様が死んだ場所だし、ウチの神社に拝殿が無いのも平坂洞があるからなのよ。平坂神社の風習はちょっと違っててね。拝むのは玉虫様が無くなった平坂洞なの、けれども平坂洞まではちょっと遠いでしょ。だからここに本殿が作られて玉虫様が祀られてるのよ」

 つまり便宜上このような作りになったようだ。確かに平坂洞の付近は開けた場所も無いし、岩場も多く平地が無い。とても神社が建てられる場所ではない。

 だからこそ村人達は平坂洞の近くに神社を立てて玉虫様を祀っているようだ。

 どうやら正確に言うと本殿と拝殿は逆らしい。平坂洞が本殿であり、平坂神社の本殿こそが拝殿となっているようだ。けれども神社に本殿を置かないわけにはいかないのだろう。だからこそ神社に本殿を建てて玉虫様を祀って拝殿を作らなかったようだ。

 こんな状態で拝殿と言えるべき物が二つあってもしかたないのだろう

 そして怪談と静音のノートに記されている聖域は平坂洞。その事がはっきりした。となると行くべきだろう、平坂洞へ。

 鈴音は休憩を兼ねた井戸端会議を終えると水夏霞に平坂洞へ行くと告げて、その場を出ようとするが、水夏霞もよっぽど暇だったのだろう。自分も同行すると言い出し、三人で平坂洞へと向かう事になった。



 うっそうとした木々に囲まれて平坂洞は威厳のような堂々とした雰囲気を出しながら存在していた。

 前に見たときと変わらず閉ざされており、幾つもの鎖が扉を開かせないと扉の前に張り巡らされている。

「まあ、言われてみれば聖域に思えない事も無いけど」

 鈴音はそんな感想をもらす。

 本来日本の神様というのは清浄を好む。それは綺麗に整っている事もそうだが、自然その物もという意味もある。

 つまりこの平坂洞の状況は神様が存在するには充分な場所と言え、聖域とも言える場所でもある。

「この中に幾つもの首があるのかな?」

 沙希がそんな言葉を漏らした。もし犯人が今回の犯行を玉虫様の崇りや怪談などに准えて行っているなら、聖域と呼ばれるこの場所に首を供えている事になる。

 けれどもそれを確かめるにはどうしても解決しないといけない問題がある。

「それで沙希、どうやって開けよう?」

 そう、平坂洞は幾つもの鍵穴があり鎖まで存在している。まるで開く事を拒否し続けているような場所だ。そんなところをそう簡単に開けられる訳が無い。

「まずは鍵を見つけないとかな」

 鍵穴の数は全部で六つ。まずはそれを開錠しないとどうにもならないだろう。鎖は後から断ち切ればいけるかもしれない。

「でも鍵なんてどこにあるの?」

 平然と問い掛ける鈴音に沙希は恨めしそうな顔で黙り込む。そんな事が分れば苦労はしない。そこで沙希は六という数字に注目した。

「水夏霞さん、村で六という数字に関する場所ってあります? 例えば六つの家とか?」

 六つの鍵が有るとするすれば全てを個人で管理しているとは思えない。そうなると別々の人間が所有しており、六人の意見が一致した時にだけ平坂洞を開く事が出来るのはないかと、そう沙希は考えたようだ。

 水夏霞は考え込むが何も出てこないようだ。

「村でそんなような話は聞いた事は無いですね。そもそも平坂洞の管理はウチがやってた訳だし、鍵が有るとしても誰かに預けるとは思えないんですけど」

 言われてみればそうかもしれない。そもそも平坂洞の管理は水夏霞の父、平坂神社の神主が行っていたのだから、他の誰かに管理を任せるとは思えない。そうなると頼りになるのは水夏霞だけだろう。

「水夏霞さんはこの平坂洞が開いた所をみた事はあります?」

 もし水夏霞がそのような場面を目撃していたなら、全ての答えは平坂神社にある。けれども水夏霞は首を横に振った。

「前にも言ったけど私も入った事が無いんだよね。それにお父さんやお爺さんも中は知らないって言ってたよ。どうも封印されてからは誰も入ってないみたいだよ」

「でも鎖はそんなに古くは無いですよね」

 確かに長期間も放置されていた場所なら鎖などは腐り落ちていてもおかしくは無い。鉄は腐るのだから。けれども平坂洞の鎖はそんなに古くなく、見た目は数年前に作られたようだ。

「あぁ、ここの封印だけは定期的に行ってるからね。まあ、村の行事みたいな物だよ。さっきも話したけど玉虫様の崇りって話があったでしょ。その話が広まって以来、玉虫様の怨念やら崇りやらが出ないように平坂洞を封印する影祭かげまつりが行われてるのよ」

 影祭、地方によってはいろいろな呼び方があるが要約すると通常の祭とは違い。関係者だけで行う祭事の事だ。人身御供などの生贄の儀式も影祭などに由来する物も多い。まあ、この手の物はあまり人に見せて行う物ではないのだから。

「つまりここの封印は定期的にやってるって事か」

「そういう事だね」

 沙希が確認すると水夏霞はあっさりと答える。そしてすぐに鈴音が口を挟んできた。

「そういえば、そういう封印する影祭の時に開けたりしないの?」

 確かにその可能性はある。中に不吉な物があるのしても誰も確認しないのはおかしいだろう。けど、それにもしっかりとした理由が有るのか水夏霞はすぐに答えた。

「確かに開けようとした時は有ったみたいなんだけどね。どうやっても開かなかったみたいなの。それで絶対に開けてはいけない物って信じちゃったみたいで今でも伝わってるのよ」

 絶対に開かなかった?

 その言葉に鈴音は引っ掛かりを感じた。

 平坂洞が開かないと思ったのは六つの鍵穴と鎖で扉が前に開かないようにしているからだ。もし影祭でその二つが解かれているなら扉を塞ぐ物は何も無いはずだ。たとえもの凄く重くても動きはするだろう。見た目はそこまで重そうではないが動けば開く事が分り、絶対に開けるはずだ。それなのに開けなかったという事は……開けられない何かがあったのだろう。

 けど、それは何なんだろう? もしかして取っ手が無いからかな、だから開けづらかったとか? ……あっ! もしかしたら。

「沙希!」

 突然沙希に呼びかける鈴音。どうやら何かに気付いたようだ。

「もし鍵も鎖も無かったら、沙希ならどうやって扉を開ける?」

 つまり施錠する物が何も無い状態でどうやって開けるか、ということだろう。沙希はそう理解すると当然のように答える。

「それは、もちろん。真ん中の穴に手を入れて開けるかな」

「どっちに?」

「どっちって?」

 つまり押すと引く、どちらに開けるかという事だ。沙希は少し考え込むと鈴音が言おうとした意図を理解した。

「そうか! つまりここに鍵なんて掛かってない。扉を塞いでる物は何も無いんだ」

「そう、そういう事」

 平坂洞の秘密が分ったであろう二人とは違う水夏霞は首を傾げて説明を求めた。そんな水夏霞に沙希は丁寧に説明する。

「この扉には幾つもの鎖がありますよね。そうなると扉は引いて開けると思いませんか」

「そうなんじゃないんですか。扉を開けさせないために鎖をしてるんですから」

「そう、この鎖をした人はそう思いこませるのが目的だったんです」

「……あっ」

 ようやく水夏霞にも分ったようだ。

 つまりこの扉は引いて開けるんじゃない、押して開ける。鈴音達はそう考えたようだ。

 確かにそれなら解除しても鎖を解いても扉が開かない理由がはっきりする。押して開ける扉だからいくら引っ張っても開くはずが無い。

 しかも扉は鉄製、かなりの重さだ。少しぐらい押したって動きはしない。だから誰も押して開ける扉だと気付かなかった。

 そうなると鍵穴も鎖も真ん中の穴も全てはブラフ、はったりである。

「つまり私達は見かけに騙されてたって事ですか」

 水夏霞に言葉に鈴音と沙希は頷く。

「とにかく押したら開くかもしれないから押してみようよ」

 鈴音達の言葉が正しければ押せば開かなくても動くはずだ。扉の重量から言って完全に開くのは無理かもしれない。けれども押して開く事が出来れば吉田達を呼んで手伝ってもらえばいい。

 そうすれば全ての事の証明に繋がる。

 今回の殺人事件が玉虫様の事に准えている事。犯人または犯人組織が捜査を撹乱する為にわざわざ玉虫様の崇りを装った事。まあ、この事はあまり知られていなかった所為もあり、玉虫様の崇り自体が出てこなかったが、明るみになれば混乱する事は間違いないだろう。

 そうすれば殺害後に首を切り落とし未だに見付かっていない事も分る。その首を遺族に返してあげるだけでも大分救われるだろう。

 だからこそ、なんとしてもこの扉を開けないといけない。

 鈴音は一人で扉に近づき押してみるがビクともしない。やはり鈴音一人の力ではどうにもならないようだ。鈴音の左右に沙希と水夏霞も扉に手を掛けて押してみるが動く気配すらない。

 最後には三人とも身体を押し付けて全身の力を込めて押すが扉は動く気配は無い。

 ……あれ? どうなってるんだろう?

 顔を見合わせる三人。どうやら扉が動かない事に納得が行かないようだが、鈴音の理論が正しければ三人がかりなら開かずとも動かす事は出来るはずだ。扉はそんなに大きいわけではない。大体二メートルぐらいだろう、それが出来ないとなると。

「鈴音、どうやら違うみたいね」

「……そうだね」

 沙希の言葉に鈴音は不満な顔で答える。鈴音としては絶対の自信があっただけに納得が行かなかった。

 絶対にそうだと思ったんだけどな。……でも。

「扉は開かないとしても平坂洞が聖域で被害者の首があるのは間違いないと思うよ。姉さんのノートや水夏霞さんの証言だけで状況証拠にはなってるんだから」

 確かに状況証拠にはなっている。あと必要なのは物的な証拠だ。それだえ証明できれば犯人と結び付く。鈴音がそう考えた時だった、少しだけ鈴音の頭が冷静さを取り戻したようで先程の考えに疑問が浮かんだ。

 確かに平坂洞に首があるかもしれない。けれどもそれは犯人に繋がるのかな? まあ、それだけの事をしたんだから何かしら出てくるかもしれないけど、確実に犯人に繋がるとは限らないんじゃないかな?

 鈴音達が今まで調べていたのは玉虫様の崇りについてだ。静音のノートから始まった疑問から平坂神社に来て平坂洞に首があるのでは無いかという推論に至った。

 つまり思考と話が途中でずれてしまっていた。そうなるとやるべき事はなんなのだろうかと鈴音は考え直してみる。

 姉さんのノート、水夏霞さんの証言、更に村長さんが残した記述。この三つがあれば警察を動かす事が出来るんじゃないかな。何も私達が平坂洞を開けなくてもいいんだから。たとえ開けて首が沢山出てきても私達にはどうする事も出来ない。そうなるとここは無理して平坂洞にこだわらない方が良いか。

 そう結論を出すと今度は次にやるべき事を考える。

 少しだけだけど事件の真相が見えてきたような気がする。後で沙希と一緒にまとめた方が良いよね。そうなると次にすべきは情報収集かな? けど粗方の情報は手に入れたし、これ以上は出てこないかもしれない。

 そうなると何を調べればいいんだろう?

 捜査会議やら捜査の熟練者なら次にやるべき事を思いつくのだろうが、鈴音はただの女子大生だ。そんな人物に捜査について何をすべきがすぐに思いつくはずが無い。

 水夏霞と沙希が平坂洞の扉と格闘しているのを横目に鈴音は思考を進める。

 たぶん、村長さんに関してはこんなもんかな? 予想外の事が一杯出てきたけど、

これで全部調べたよね。……あっ、ちょっと待って! 姉さんのノートで一つだけ調べてない事があった。それを調べないと、羽入家が兵って事を。

 村長が残した記述に『羽入は兵、来るべき日に兵となり掃討する』と記されている。これについては何も分ってない。ただ村長がそう記したからには羽入家には何かしらの秘密が有るのではないか、鈴音はそう結論を出した。

「沙希」

 鈴音は沙希に呼びかけると扉の事は警察に任せて羽入家に行こうと言い出した。当然理由を聞く沙希に鈴音は羽入家の秘密を探ると言い出す。

「羽入家の秘密って、秘密を教えて言って教えてくれるわけじゃないでしょ」

 まあ、その通りである。けれども鈴音はある事が引っ掛かっていた。それは玉虫様の崇りという言葉が一度も源三郎から出ていない事だ。

 あえて言わないのかもしれない。けれども羽入家が捜査を撹乱するためなら故意に玉虫様の崇りを広めるだろう。それが無いという事は、羽入家が知らない秘密が羽入家にある可能性がある。

 鈴音はそう沙希に説明した。

 なにしろ羽入家の歴史も長い。その中で玉虫様に関する秘密があっても不思議は無いし、静音は羽入家の蔵から崇りに関する文献を発見している。だから羽入家の人達はすっかり玉虫様の崇りを忘れ去っている。鈴音はそう考えたようだ。

 けれども沙希はそんな鈴音に異論を唱えてた。

「確かに静音さんのノートや村長さんの残した言葉にも玉虫様の崇りはあるけど、そこまで必死に解明しないといけないものなの?」

 そう言われると絶対にやらないといけないとは言えない。けれども今回の事件と静音と繋がっている事は確かだ。だから解明する意義はあるかもしれない。たとえ無駄足だったとしても誰かに迷惑が掛かるわけじゃない。

 それに鈴音達がこの村に居られるのは今日と明日だけだ。だから今のうちに玉虫様について調べておきたいのだろう。

 そんな鈴音の言葉に沙希は少し考えてから返答した。

「分った。鈴音の感は頼りになるからね。だから今日と明日は鈴音の思った事に付き合ってあげるよ」

「沙希〜、ありがとう〜」

 思わず沙希に抱き付こうとした鈴音だが避けられてしまい地面に抱き付くことになってしまった。まあ、そんなそっけないところが沙希らしいだろう。



 三人は平坂洞を後にすると一度水夏霞の家に戻り駐在所に電話する。生憎吉田は留守であり、平坂署の番号を教えてもらい、そちらに電話すると吉田が電話に出た。

 そこで鈴音は平坂洞の事を伝える。村長が残したノートと水夏霞の証言から被害者の首が平坂洞にある可能性が高い事を告げ、吉田はその事について調べる事を約束した。

 平坂洞の事を言い終えた鈴音は電話を切ろうとするが、吉田に止められた。どうやら話があるようだ。

 この事を話そうか迷ったようだが、鈴音には伝えておいた方が良いだろうと判断したようだ。伝えておけば自ら危険に首を突っ込まないと学んだのだろう。

 そんな吉田が伝えた内容が次の事だ。



 これは私の推理で何一つ確証があるわけじゃないんですがね。とりあえず覚えておいて欲しいんですよ。

 静音さんのノートを読ませてもらって思ったのですが、今回の事は宗教が関わっているのでは無いかと思うんです。

 つまり幾つもの殺人を起こして、それを玉虫様の崇りと結び付ける。そうすれば最初から玉虫様の崇りが出てこなかった理由が説明できると思うんですよ。

 不可解な殺人事件が続き、調査するうちに玉虫様の崇りが出てくる。そうなると村の人達は玉虫様の崇りだと思いますよね。そうなると神社の信仰がますと思うんです。

 つまり犯人の狙いは玉虫様信仰の復活。これは先の来界村開発戦争が関わっていると思うのですよ。それを治めたのは村長と羽入家です。つまり平坂神社は蚊帳の外。玉虫様を信仰している人にとっては不愉快な事この上ないでしょう。そこで思いついたのが今回の事件です。

 玉虫様を信仰しているなら崇りの事も当然知っている。つまり崇りの事を利用できたんですよ。そこで警察でも羽入家でも解決できない事件を起こし、捜査が行き詰ったところで玉虫様の崇りを広める。

 これは自ら広めなくても誰かが調べ付く可能性がありますからね。現に鈴音さん達、それに村長さんや静音さんまでも知り尽くしている。

 あっ、もしかしたら静音さんがこの事を誰かに話して今回の犯行を思いついたのかもしれませんね。

 どちらにしても、この説なら説明が付くと思うのですが、如何でしょうか?



 意見を求めてきた吉田に鈴音は少し困った顔になった。吉田の説が正しいとなると平坂神社に一番関係が深いのは水夏霞という事になる。その水夏霞は隣には居ないが近くに居るから言葉を選ばなければならない。もしそうだとすれば鈴音達が危険になるのだから。

 けれども水夏霞がそのような企てをしているとも思えない。だからこそ鈴音は返答に困っている。それに、それを実行するにはクリアしない条件があるのも確かだ。

「確かにその説は正しいかもしれませんけど、たった一人での犯行は無理ですよね」

 そのとおりだ。幾つもの殺人事件をたった一人で出来るわけが無い。しかも警察は容疑者を連行している時にも犯行が行われている事から犯人が一人ではないのは分っている。そうなると水夏霞だけが犯人だけというわけではなくなる。

 もちろん吉田にはそれを説明するだけの言葉があった。



 もちろんたった一人で行った犯行じゃないでしょ。第一、信者がたった一人とは思えませんから。

 それに信者全てが犯行に関わっているとも思ってません。なにしろ最初の被害者は平坂神社の神主夫婦なのですから。

 ですから、この犯行を信者達で話し合い。その中核となった神主夫婦が反対してその場は収まった。けれども過激派は神主夫婦を殺して犯行を実現しようとした。それがきっかけで今回の事件が始まった。これは結構真相に近いと思われますけどね。



 ……確かにそうかもしれない。それなら姉さんが玉虫様の事を調べてて被害に遭ったのも村長が過激派の事を私達に告げようとして殺された事も説明が付く。そうなると容疑者逮捕はかなり時間が掛かるだろうが、証明できればいくらでも手の打ち様がある。

 ……でも、なにか違うような気がする。それなら村長さんが残した武器って何なんだろう? わざわざ作った霊刀、あれは一体どんな意味があるんだろう? 確かに全ての物事に説明がつけられ訳じゃない。勘違いや思い違いが存在するからには、そういう事実も存在する。

 けど村長がそんな勘違いや思い違いをしていたとは思えない。仮にも村人から慕われていた村長が何の切っ掛けも無しに奇行に走るとは思えない。たぶん、それをさせる何かがあったんだ。

 その何かは吉田さんの説とはまったく違う何か。だからたぶんそれは真相じゃない。

 鈴音はそう考えたが口には出さなかった。それは吉田の説を覆すだけの説と証明を持っていないからだ。

 とりあえず曖昧な返事だけをして平坂洞の事を頼んだ鈴音は電話を切ったが、その場から動こうとはしなかった。

 なにしろ水夏霞の容疑が晴れたわけでは無い。水夏霞が生き残っているのは過激派に加担しているからではないのか、そんな考えが浮かんだからだ。

 そうなるとこれから水夏霞と接触するにも気をつけなければいけなくなる。でも……本当にそうなのだろうか? 水夏霞が両親の事について話した時の悲しそうな顔は嘘だとは思えない。

 それに水夏霞には神社の事で知らない事が多すぎる。たとえ信者の会議があったとしても呼ばれるとは思えない。なにしろまだ若いし、その手の会議に呼ばれなくても不思議は無い。

 つまり水夏霞はその手の事とは蚊帳の外ではなかったのだろうか? 鈴音はそう考えた。いや、そう考えたかった。

 この村に着てから水夏霞とはかなり関わっている。だからそれなりの人となりについて分っているつもりだ。本当に少しだけど、そんな事に加担する人とは思えない。でも証拠が無い。それどころが逆の証拠なら出てくる。

 それは鈴音が助六に襲われた時だ。その時に水夏霞は現場に一番早く着いた。いや、もしかしたら最初から居たのかもしれない。なにしろ暗かったから物陰に隠れられたら分りはしない。

 それに御神刀の手入れをしている。本人は使えないと言っているが、それが本当かどうかは分らない。

 そうなってくると何を信じれば良いのか分らなくなってきた。とにかく今はここを離れて少し落ち着ける場所に行った方が良いと判断したようだ。少し沙希と話して整理したい。

 電話の場所から離れた鈴音は平静を装い、そろそろ行こうと告げる。

 水夏霞は玄関まで見送ってくれた。その表情はいつもの変わらない笑顔だ。それが本物の笑顔かどうかは分らない。なんにしても鈴音は今はこの場から少しでも早く離れたかった。だから挨拶もすぐに切り上げて鈴音はさっさと羽入家に向かって歩き出した。

 何を信じて良いのか分らないままに。







 さてさて、なんかもういろいろとワケが分からなくなってきた断罪ですね。まあ、真実とダミーを織り交ぜているわけですから、こうなるのも当たり前ですよね。

 ちなみに、ダミーについては全て説明しないかもしれません。いや、だって、真相を書くだけで精一杯かもしれないし。

 なにしろ真相というか、解答編は凄い事になりそうですからね〜。だからこのまでのフォローができない事と思われる事を今のうちに謝っておきます。ごめんなさい。

 さてさて、断罪も次で最終話となりました。まあ、問題編だけだけどね。というか、たぶん最終話です。もしかしたらもう一話付けるかもしれませんが、私の予定としては次が最終話です。

 そんな訳で問題編もあと少し、できる事ならもう少しお付き合い下さい。

 ではでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。更に票感想もお待ちしております。

 以上、夏風邪だが他の何かなのか体調が良くない葵夢幻でした〜。

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