表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/31

第十一話 手紙

 二人が桐生家に着いた時には辺りはすっかり暗くなっていた。田舎で移動手段が少ないものだから、どうしても時間が掛かってしますのだろう。

「ただいま〜」

 玄関を開けるのと同時に言葉を掛ける鈴音。その声が聞こえたのだろう、奥から美咲が出迎えに出てきてくれた。

「お帰りなさい、お姉ちゃん達」

「うん、ただいま美咲ちゃん」

 挨拶と笑顔を交わし微笑ましい光景が広がっている時に、奥から琴菜が夕食の準備が出来た事を告げる。

 それから三人一緒に夕食にありつき、そろぞれお風呂に入る時間になった。宿題が出ている美咲が一番先に入ると、次に鈴音がお風呂を頂くことにした。

 お湯に浸かりながら天井を見上げる鈴音。

 はぁ〜、結局今日も収穫は無しか。

 羽入家ではほとんど静音の話は聞けなかった。それに村長の家では門前払い、気晴らしに出向いた平坂神社でも静音と関わっていたという事だけで、新しいことは何一つ分かっていない。

 本当に姉さんはここにいるのかな。

 さすがにここまで収穫がないと鈴音も弱気になってくるのだろう。まあ、もし沙希が隣にいたら叩かれていただろうが。

 さすがに鈴音もそれを思ったのだろう。顔にお湯をかけると気合を入れなおす。

 まだ着てから二日目だもんね、ここで弱気になってどうする。絶対に姉さんを見つけないといけないんだ!

 それからお風呂の効果だろうか、鈴音はリラックスするとそのままボーッとしてしまった。



 少し湯あたりしながらもお風呂から出てきた鈴音は、沙希と交代すると何か冷たいものを求めて台所へと向かった。

 そこでは琴菜が洗い物をしていたが、その横を通り過ぎて冷蔵庫の中を探ろうとすると琴菜が急に声を上げた。

「どういたんですか?」

 さすがに驚きながら尋ねる鈴音。だが琴菜は答えずにエプロンのポケットから一枚の紙を取り出した。

「実はね、さっきなんだけど誰かが尋ねて来たから出てみたんだけど、出てみたら誰もいなくてね。その代わりにこれが玄関に落ちてたの。どうやら鈴音さん宛らしいから取っておいたんだけど」

 とりあえず紙を受け取る鈴音。その表には確かに京野鈴音様へ書いてあった。

 なんだろう、これ?

 疑問を感じながらも四つ折にされている紙を開いて鈴音は驚愕する。まあ、それもしかたない、書いたある内容が内容なのだから。

 それで書いてある内容はというと。

『今夜九時、平坂神社の本殿でお待ちしております。静音さんの事でお話があるので絶対にお一人で来てください』

 慌てて時計に目を向ける鈴音。時計は無常にもすでに八時半を過ぎていた。

「あの、今から出かけてきます。それからこれを沙希にも見せといてください!」

 それだけ一気に言い終えると鈴音は大急ぎで部屋に戻り、再び着替えをしてから桐生家を飛び出した。

 そして平坂神社への道を再び走り始める。先程まで歩いてきた道だから道順は分っているのだろう。

 だが道のりが長いのは確か、その間に鈴音は冷静さを取り戻していた。

 それにしてもあの手紙は誰が出したんだろう。たぶん今日訪ねた人の誰かだと思うけど、その中で公に話せない事実でもあったのかな?

 そうなると……千坂さん。確かに源三郎さんに付きっ切りだから姉さんの事を知っていてもあの場で話せるわけが無い。……あと、考えられるのは村長さんか。誰かに聞かれるとまずい話があるから、わざわざ呼び出したのかな?

 様々な推測が飛び交う中で鈴音はある疑問に突き当たる。

 そういえば、なんで私達が美咲ちゃんの家にお世話になってることに気付いたんだろう。確かに誰かに言ったような気がするけど、そんなに多くは言ってないよね。滞在期間はよく言ったような気がするけど。

「誰かが話したのかな?」

「何をですか?」

 走り続ける鈴音の独り言に返事が返ってきたので、鈴音は思わず転びそうになりながらその場で急停止する事が出来た。

 えっ、誰? ……七海ちゃん。

「どうしたの七海ちゃん、こんな時間に」

「私は神社の仕事がが終わったのでその帰りです。それより鈴音さんこそどうしたんですか、なにか慌てているようですが?」

「あははっ、ちょっと神社に用があってね」

 あえて詳しくは話さない事にした。差出人が誰だか分からない以上、誰かに喋るのも危険だ。何が潜んでいるのか分らない。

 それに七海にまで危険が及ぶ事になったらどうしようもない。だからこそ、鈴音はあえて笑って誤魔化しているのだが、それが通じているのかどうか分らないが。

「そうなんですか、確か水夏霞さんも今は家に帰られているので誰もいませんよ。明日にしたらどうです」

「それがそうもいかなくてね。というか七海ちゃん、こんな時間に村を歩き回ってて平気なの。村で危険な事がおき続けてるのに?」

「それなら大丈夫です。私は審判者ですから」

「審判者?」

 七海の言葉に首をかしげる鈴音。そんな鈴音を七海は軽く笑ってから口を開く。

「そういえば、急いでらしたのでは?」

「そうだった!」

 どうやら本気で忘れていたらしい。

 鈴音は七海に簡単に別れを告げると神社に向かって走り出していった。



 鈴音を見送った七海はスカートのポケットから携帯と取り出すと、そのまま電話を掛けてる。そして相手が出たようだ。

「千坂」

『七海お嬢様ですか?』

「そう、今しがた鈴音さんとすれ違ったの。なんか急いで神社に向かってるみたい。あなたも急いで。そして鈴音さんに何か有ったら後始末をお願い」

『分りました』

 それだけの短い会話で七海は電話を切ると天を仰ぐ。その姿勢のまま七海はまた口を開いた。

「あなたも行って、悪い予感がする。……あの人には価値がある。だから今の時点で何かあってはいけない。……その通りよ。……ええ、自由にしていいわ。なにかあったら羽入に始末させるから」



 荒い息をしながら鈴音は神社の階段を一気に駆け上がる。

 スピードを緩めることなく階段を駆け上がる鈴音。そしてやっと鳥居を潜ったところでうな垂れて一休みする。

 ……やっと着いたよ。

 少しの間、呼吸を整えてから鈴音は神社の境内を見回してみる。

 あれ?

 気付く異変。そう、普通なら本殿に鍵を掛けて締め切っているのだが、今は鈴音を誘うように扉が開いている。

 しかも灯篭には明かりは灯ってなく月明かりだけだ。そんな状態で不気味に開いている本殿に入ろうとしているのだ、鈴音でなくてもちゅうちょするだろう。

 それでも鈴音は呼吸が戻ると背筋をしっかりと伸ばし、本殿へと石畳の上を歩いていく。だが内心は恐怖も生まれている。

 というか、かなり怖いんですけど。なんで真っ暗なのよ、せめて明かりの一つでも用意しておいてよ〜。

 それでも鈴音はゆっくりと一歩ずつ本殿へと近づいていく。

 うわっ、月明かりが隠れると本当に暗いな。

 月明かりが本殿の影に隠れるほど鈴音は本殿の入り口近くまで近づいていた。

「おじゃましま〜す」

 一応声を掛けてから入り口の扉に手を掛けて更に開いていく。そのおかげで月明かりが少し入るようになったのだろう。中の様子が少しは分るようになった。

 ……誰もいない?

 時間を確認する鈴音。確かに九時は少し過ぎているが、これで相手が帰ってしまうとは思えない。

 しょうがないか。

 しかたなく中に入って見る鈴音。床が鳴る音が不気味さをましながら玉虫様が祀られている場所へと近づいていく。

 えっ!

 だが後頭部に激痛が走る。

 なに、が……。

 確認する間もなく、鈴音の意識は沈んでいく。



 鈴音が目を覚ますと目の前には、村長宅で出会った助六の顔があった。

「まさか本当に来るとはな、ラッキーだぜ」

「なっ!」

 意識を取り戻した途端、気味の悪い男の顔があるのだから、驚きその場から動こうとするが鈴音の体はまったく動けなかった。

「なんで?」

 驚くよりも先に戸惑った。鈴音の両手は頭の上で縛られており、足は助六に抑えられている。

「離して!」

 叫ぶ鈴音。だが助六は不気味な笑顔を返すだけだ。

「へへへっ、こんな田舎だとろくな女がいねえからな。都会の女をじっくりと味合わせてもらうとするか」

 助六の目的が分った鈴音は背筋がぞっとする。だがそれもで聞いておかないといけないことがある。

「姉さんは、姉さんの事はどうしたの」

「ああっ、あの姉ちゃんか。あいつは静馬がいつも傍にいたからな手が出せなかったんだよな」

「そうじゃない! 姉さんの事を知ってるんじゃないの!」

「そんなの知るかよ!」

 ぐっ! 騙された! 

 やっとそのことに気付いた鈴音は精一杯の抵抗をするが、両手を縛り上げられている上に、足までも助六の足で押さえつけられている。体をくねらすのが精一杯だ。

「いいね、その抵抗、たまんねえぜ!」

 よだれを垂らしながら言って来る助六に鈴音は更に悪寒が走り、不気味さがましてくる。

「さて、じゃあ始めるか」

「やめて―――!」

 叫ぶ鈴音、だがこんな場所に誰かが来るはずが無い。

 そして助六は鈴音の胸に手を当てると、その感触を充分に味わう。

 いや、こんなのいや!

 今まで感じた事のない感覚に険悪感がかさなり鈴音を襲う。

「いいねえ、やっぱりこれくらいないとな」

 確かに鈴音はスタイルがいいほうだ。胸も助六が満足するぐらいあるのだろう。

 だが鈴音も黙って従う性格ではない。なんとか脱出方法を考えてみる。

 くっ、せめて武器が使えればこんな奴に好きにさせないのに! せめて沙希と同じように格闘技を習っておくんだった。

 こんな時でもやはり鈴音は鈴音のようだ。

 そして助六はというと、かなり鈴音の胸が気に入ったようで、そっちばかりをまさぐっている。

 ならせめて!

 両手が縛られているが動かせないわけじゃない。鈴音は腹筋で思いっきり上半身を上げると縛られている両手で助六を思いっきり叩く。

 さすがに普段から鍛えているだけのことはある。これぐらいのことは出来るようだ。

 そして殴られた助六はさすがに鈴音から離れてのた打ち回っている。どうやら相当効いたようだ。

 なんとか立ち上がろうとする鈴音。だが助六の立ち直りも早くて、立ち上がろうとした鈴音の足を掴み再び倒れる事になってしまった

 再び素早く鈴音に馬乗りになる助六。そして今度は顔を近づけてきた。

「くっくっくっ、やはり若い女は良い匂いがするもんだな」

 いや! 離れて!

 そして助六は満足したんだろう。今度は鈴音の服に手をかけてきた。

 やめて―――!

 叫ぶ事すら忘れた鈴音の叫びが頭の中で響いた時に奇怪な音が木霊した。

 それはボーリングの球が落ちるような音と鈴音の顔に掛かる大量の暖かい液体。

 えっ、なに、何が起こったの?

 事態が分らない鈴音。だか一つだけ分る事は今まで目の前にあった助六の顔が今は無いという事だ。

 なんで、なんでないの?

 確かに馬乗りにされているように感じる助六の体重。そして助六は鈴音の上に倒れてきた。

 いや、なに! やめて!

 混乱する鈴音は頭の中に最悪の事態が過ぎる。それを振り払うかのように頭を振ると意外な物が目に飛び込んできた。

 それは助六の首。

 えっ、なんで、どうしてそんなところにあるの? 何が起こったの?

 鈴音の上に居るはずの助六の体。だが首だけは鈴音の横に転がって鈴音を見ていた。

「いや―――――――――――――――――――――――っ!」

 ワケが分からずに思いっきり悲鳴を上げる鈴音。

 確かに鈴音の上に有るはずの助六の体。だが首だけは鈴音の横でじっと鈴音を見ている。

 なんで! なんでこんなことになったの! 私はただ姉さんのことが知りたいだけだのに! なんでこんな目で見られなきゃいけないの!

 すっかりとパニックに陥っている鈴音は両手から血が出るほど暴れて、圧し掛かっている助六の身体をどかす。

 姉さん、姉さん! なんなのこれ、なんなのよこれー!

 更に叫びながら暴れる鈴音。そんな音を聞きつけてきたのだろう、水夏霞が本殿に姿を現した。

「どうした……」

 さすがに言葉を失う水夏霞。それはそうだろう、鈴音は縛られているし、助六は殺されているのだから。

「なに、なんでまた、ここで?」

 こんな状況だ水夏霞すらもパニックになりかけていたその時だった。沙希が荒い息をしながら本殿に姿を現した。

「鈴音!」

 真っ先に鈴音を心配する沙希。そして確認する現場の状況。だが鈴音をこのままにしておくわけにはいかない。

 沙希は鈴音を縛り付けているロープを解いて解放する。

「沙希、沙希!」

 よっぽど怖かったのだろう。鈴音は先に泣きつくとそのまま大声で泣き出してしまった。そんな状態だ。沙希にはもう鈴音を慰める事しかなかったが、この場をこのままには出来ない。

「水夏霞さん、とにかく警察を」

 だが水夏霞は呆然としており、沙希の問いかけに答えない。

「水夏霞さん!」

 声を荒げる沙希。だが水夏霞は反応せずに呆然としており微かに震えている。このような状況で冷静さを保てないのだろう。

 そんな中で沙希だけは鈴音の事だけを心配していたから冷静でいられるのだ。

 そして沙希がこれからどうしようかと思ったときだった。急に吉田が本殿に姿を現した。

「吉田さん!」

 意外な人物の登場に沙希は声を上げる。

「羽入家の情報を入手して先手が取れたと思えば、こんな事になってるとは。とにかくこの場から離れてください」

 吉田は全員を本殿から出るように言った。もちろん現場維持のためだ。それから携帯で連絡。数十分後には大量のパトカーが平坂神社に到着した。



「とりあえず、分るところだけでも先に話してもらえませんかね」

 一番冷静である沙希に吉田は車の中で質問を開始した。もちろん、現場にいた人間全てが事情聴取のために一度は警察署に行かなくては行けないのだが、それでもあれでは現場がまったく分らない。

 だから吉田は沙希に話を聞くことにしたようだ。沙希も泣きつかれて寝ている鈴音に肩を貸しながら質問に答える。

「それが、どうやら鈴音に呼び出しの手紙があったようです。あっ、それがこれです」

 どうやら沙希は手紙を持っていたようで吉田に手渡す。

 そして手紙に目を通す吉田。

「鈴音さんがこれを見たのは何時ごろでしたか?」

「はっきりとはわからないんですが、かなり時間が迫っていたようで慌てて飛び出して行ったようです」

「それで本殿に行ったわけですか。まあ、大した手がかりになるとは思いませんが、これは鑑識に回させてもらいますね」

「はい、どうぞ」

 それから吉田はタバコに火をつけると大きく煙を吐く。

「それで本殿に入ると、もう殺された助六さんが鈴音の上に」

「その時にはすでに殺されていたんですか?」

「はい、首は鈴音の横にありましたから」

「途中で誰かに会いませんでした?」

「いいえ、誰も」

「そう……ですか」

 鈴音は両手を縛られていた上に馬乗りにされていた。その状態で助六の首を切り落とすのは無理だ。となると、第三者の犯行が強い。

「そういえば」

 沙希が何かを思い出したかのように話を切り出した。

「羽入家からの情報を察知したって言ってましたよね」

「ええ、なんでも『京野鈴音が危ない、急いで神社へ向かえ』って事なんですが、どうもワザとリークしたみたいですね」

「なんでわざわざ?」

「さあ?」

 どうやら吉田にも検討が着いていないようだ。もしかしたら、自分達が駈け付けるより警察を行かせた方が都合が良いと判断したのかもしれない。

 だからと言って羽入家が動いていないとは限らない。

「そういえば」

 沙希は昼間羽入家で源三郎が千坂に命令した事を吉田に話した。

「となるとやはり」

「羽入家ですか」

 源三郎が千坂に下した命令は何があっても鈴音を守れ、手段は問わないという物だ。つまり、相手を殺しても良いという事だ。そしてあの千坂の事、助六を殺して鈴音を守るぐらいの事はやるだろう。

「けどそうなると、なんで情報を漏らしたんでしょう。自分達が疑われる可能性があるかもしれないのに?」

 沙希の質問に吉田は煙を吐いてから答えた。

「たぶんですが、鈴音さんに容疑がかからないようにではないですか。もし、鈴音さんが縛られていなければ鈴音さんが殺したことになりかねない、それを懸念したのかもしれません」

「なるほど」

「そんなことになるくらいなら、自分に容疑を掛けたほうが楽だったんでしょう」

「でも、そうなると羽入が……とは言い切れませんよね」

「ええ、そこなんですよ」

 羽入家に犯人がいるならなら吉田に連絡せずに自分で処理した方がバレにくい。それなのに、わざわざ犯行予告のような電話をしてくるだろうか。

 たとえ沙希や水夏霞に見つかっても沙希には昼間の命令が伝わってるし、水夏霞には千坂に逆らうだけの力は無いだろう。黙っていろと言われれば黙っているはずだ。

 吉田はタバコを揉み消すと頭をかきむしる。

「ああっ、もう、どうしてこの事件はこうもややこしいんですか!」

 そう、この事件には矛盾が多すぎる。敵だと思っていた人物が協力してきたり、味方だと思っていた人が敵になったり、意外な人が犯人ではなさそうだし、いろいろとやっかいな事件のようだ。

「とにかく、鈴音さんから詳しい事を聞くしかないみたいですね」

「でも、鈴音は……」

「分かっています。今から無理に聞こうとは思ってませんよ。ですから、今日は警察署に泊まってもらいます。いいですね」

「はい。あっ、じゃあ連絡を」

「それはこちらからしておきますから、ではいきましょうか」

 吉田は近くにいる警官を呼び寄せて幾つかの指示を出すと車を発進させた。もちろん、平坂の警察署に向かってだ。



 そして平坂警察。その一室に沙希は鈴音を寝かせてもらった。

 それから吉田がいるところに顔を出したのだが、どうやら電話中でなにやら話をしているようだ。しかたなく部屋の隅で待つ沙希。そして電話が終わると吉田の元へ向かった。

「あの、どうでした?」

「とりあえず鈴音さんが犯人だという説は消えましたよ。首を切り落としたときでしょう。血が飛び散りそれが鈴音さんがいた場所と一致したそうです。さすがに下からは切り落とせませんからね」

「となると、やはり上からの攻撃?」

「ええ、背後からの一撃、しかも鈴音さんに一切傷つけないで助六さんの首を切り落としています。かなりの腕がないと出来ない技ですよ、これは」

(あれっ? でも、それだと)

「今までの事件だとあまり血は飛び散っていなかったんですよね。それが今回に限ってどういてそんなに飛び散ったんでしょう」

「たぶんですが、鈴音さんを傷つけるわけには行かなかったんでしょう。つまり助六だけを斬るつもりだった。だからこそ、今までのように綺麗に切り落とせなかったのでしょう」

(でも、なんで今回に限ってそんなことをしたんだろう。……思ってたより鈴音は重要な役目があるのかもしれない)

「鈴音って……一体なんなんでしょう?」

 思いがけない沙希の言葉に吉田は不思議そうな顔をする。

「それはお友達のあなたが一番分っているのでは」

「いえ、そうではなくて。この村での鈴音は一体どんな役割があるのかなと……」

 急に黙り込む沙希と吉田。そう言われると一概には言えないのだろう。

 静音の妹、それだけではないような気がしてならないようだ。どちらにしても静音自身も不思議な人物だったのだから、鈴音がその血を受け継ぐのも当然といえるのだろうか。

 そして吉田は再びタバコに火をつける。

「まあ、詳しいことが分ったら教えますし、鈴音さんからも話を聞かないとですからね」

「あの……」

 急に深刻そうな顔をして沙希は吉田に尋ねる。

「吉田さんは静音さんがまだ生きていると思ってますか?」

 だが吉田は答えずに真っ直ぐ沙希を見詰めて同じ事を聞き返す。

「あなたはどうおもってるんですか?」

 そして見詰めあう沙希と吉田は同時に溜息を付く。

「鈴音には話せませんね」

「鈴音さんがいないから話してきたんでしょう」

「まあ、そうなんですが」

 笑って誤魔化す沙希。

 そう、二人とも静音が生きているとは思っていないのだろう。けれども沙希は希望を捨てていない。たとえ頭で最悪な結果を考えていても、心では最良の結果を望んでいる。

 だが、そんな沙希の希望を嘲笑うかのように連続殺人事件が起きている。これで失踪だけなどありえない。たぶん、何かしらの理由で死体を隠されている。そう考えるのが妥当だろう。

 そう考えたとしても希望は捨てない。それが鈴音との約束だから。

「さて、じゃあ、私も休ませてもらいますね」

「寝心地は保障しませんがごゆっくり、明日は取調べをしますのでもしかしたら一日潰れるかもしれませんので」

「はい、わかりました。鈴音にも伝えておきます」

 それから沙希は部屋を後にして鈴音が寝ている仮眠室へと向かっていった。

 仮眠室に入ると鈴音はぐっすりと寝ているが、先程の事があったからだろう、涙を流しながら寝ている。

 沙希は軽く着替えると鈴音と同じベットに入る。これで少しでも鈴音が落ち着けば問題は無い。それが沙希に出来るたった一つの事だと思ったからだろう。

 そして鈴音の温もりを感じながら沙希も眠りに落ちていった。



                    ―断罪の日まで……後五日―







 そんな訳で終わりました二日目……あと五日も有るんだよね。でも(・ε・)キニシナイ!!


 さてさて、今回の話はどうだったでしょうか。まあ、ミステリーでは良く有りそうなエロシーンをちょっと入れてみたんですが、あまりエロくなかったですね。まあ、私が書くのはこの程度ですよ。


 そんな訳で遂に殺人事件に巻き込まれた鈴音。これからどうなっていくんでしょうね。ちなみに、私にも分かりません。どうしてかって、それは……まだ考えてないから――――――!!!Σ(゜Д゜;エーッ!


 そんな訳で次はどうなる事やら、ご期待ください。


 ではでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。更に評価感想、そして投票もお待ちしております。


 以上、経済的に不安になってきた葵夢幻でした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ