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007 東照凱人07

 俺は街につくと白のレンガのような石造りの建物に直行する。


「東照君、そこ人の家じゃないの!?」

「病院だ」


 中に入ると現代の待合室のような部屋があるが俺はスルーして奥の診察室へと入る。


「あれ? 受付してから来てくれないと」

「よお」


 そこに座ってたのは俺の見覚えがある勇者だ――俺が一度目に召喚された時に一緒になった。


「凱人お前生きて……生きて……さすがに年取らないのはおかしくないか?」

「説明は面倒くさい」

「対価は?」

「金」

「よぉし、じゃあそこのベッドに寝かせて待合室で待ってろ」


 俺が姉ヶ崎を言われたベッドに寝かせると部屋から出て行く。あいつの腕と能力は確かだから大丈夫だろう。

 待合室に戻ると椅子に座っている阿多野、俺を見つけると隣の席を手で叩く――俺はその席に座る。


「どう?」

「まあ、大丈夫だろう」

「知り合いなの? いや、知り合いじゃないとあんな横暴許されるわけ無いと思うけど」

「まあな。勇者の一人だ」

「回復能力とかそういうこと?」


 まあそう予想するのが普通だな。


「違うな、あいつのは……状態を見破る程度の能力とでも言うか」

「どういうこと?」

「目の能力で生物であれば体の状態を見破ることができる。勇者相手なら特殊能力もそれなりに見抜ける能力だ」

「……つまり病気を見ぬいて、治療は自分の腕でってこと?」

「そもそもここは病院というよりは診察所レベルだろう。本当にやばいなら王国か、少なくとも国レベルの場所へ行って治療を受けさせる必要がある」

「そっか……」


 まあ落ち込むのも無理はないか――姉ヶ崎はただでさえ病み上がりに近い状態ではあったからな、俺のせいだが。


「終わったぞ」


 奥の診察室から男――藤原水面ふじわらみなもがでてくる。


「それでどうだった?」

「毒とか病気ではない、精神的疲れと……後はまあ体が突然の反応に驚いちまったんだろ」

「どういうことだ?」

「まあまあそう急くな。仕事中じゃないんだろ……そこのお嬢ちゃんは?」

「友だちだ……俺のじゃないぞ」

「知ってるよ、じゃあまあ聞く権利がある。ということでここで話す」


 水面は俺と阿多野の前の席に座って話しだした。


「まずは初めまして、おれは藤原水面。8年前にこの世界に召喚されてそこの目が暗いやつと旅をした勇者の一人だ。今はこうやってしがない診療所をしている。医者ってほどの腕はないがこの世界の医療レベルの中では比較的高い水準らしい」

「阿多野愛菜です。あの、姉ヶ崎さんは?」

「姉ヶ崎っていうのね、あの子。まあさっきも言ったとおり命に関わるような何かはなかった……けど、特殊能力の発動で体が驚いたんだろうな。もうしばらくは起きないと思うぞ」

「その能力っては一体なんだ? 俺もよく知らないが、魔物の血を浴びて発動するようなものなのか?」


 水面の奴は少し額をおさえて考えてから再び口を開いた。


「説明が難しいんだけどな――魔物の体にある何かを取り込んだ――っていうのが近いと思う状態だ」

「どんな能力だそれは……」

「つまりは魔物の特性とか体の特徴とかを使うことができるようになったってことだ。遺伝子なのかDNAなのかとかそういうのはわからんが血を浴びたことでその魔物の情報を能力が取り込んだんだろ。ただ体とか彼女の脳からすればいきなり異物を取り込んだことになるわけだ」

「処理能力と慣れの問題ってことか」

「だいたいそんなもんだ。能力のおかげで命に別状はないが……まあ魔物だからな人前とか使う場所は考えないといろいろ立ち位置厄介になりそうな能力ではある」

「あの、それはどういう?」


 阿多野がそう質問をしてくる。そうか、この世界を知っていれば常識なことを阿多野たちは知るわけがないのか。


「最近きたばかりか?」

「はい、つい1週間立つか立たないかくらいです」

「そうか。じゃあ知らないわけだな。この世界には人族・魔族・獣人族や他にも少数派の奴らもいるがいわいる人型の種族が存在してる。それでその他にいるのは魔物とかアンデットとかそういう奴らだ」

「魔物と魔族は違うんですか?」

「魔族は人型とか2足歩行の奴らが多くてなおかつ統率がとれてるが、魔物は食欲とか欲のためだけにいきているいわば動物とかそういう類だ。たまに群れを作る奴らもいるがそれは繁殖のための防御や食料を集めるのに過酷な状況で協力する進化がおきたかだ」

「わかりました……でもそれと姉ヶ崎さんの立ち位置が関わるっていうのはどういうことですか?」

「ゲームとか風にいうなら合成獣キメラが近いか――いわゆる知識を持った人型種族と魔物を合体とか混ぜ合わせるような手術・研究はこの世界は禁忌とされてるんだよ。そんな中であの能力だと……勇者的な活動を積極的に行ってないかぎりは禁忌に触れた人間として扱われる可能性がな」


 厄介な能力――ではないが、厄介な人間に来たといえるか。王国に残ってる連中の一人としてならこの能力は問題なかったかもしれんが、逃げ出してきた一人となるとその扱いを受ける可能性はかなり上がる。


「そんで、お前のその体は何なのか教えてもらおうか、凱人」

「現実世界帰ったらフィクションのように時が戻るなんてことはないけど、もう一度この世界に来た時は5年が立っていたってだけだ」

「どこのフィクションだといいたいところだが、この世界が現代にいたおれらからすればフィクションだから納得できちまうな。しかし、学生服ボロボロだな。こっちの服譲ってやろうか? ちょっと溜まってたし」

「もらえるものはもらうぞ」

「とりあえず治療費代だけ払え」


 抜かりないやつだ。俺はとりあえずそれなりに金の入った袋を投げ渡した――残りが17万ってところか。


「まいどあり~。そんじゃ奥にこい、嬢ちゃんにもやるよ」

「えっ? でも私はそんな」

「いいんだいいんだ、嫁もかなり服持ってるし、でもサイズ昔のあわなくなってどうしようって言ってたからな」

「なんだ結婚したのかお前ら」

「おうよ、どうせこっちに永住決まってたようなもんだしな」


 水面のこの発言を聞いた時、後ろの阿多野を見ると表情が一瞬だが曇っていた気がする――が、この時はそれを意図的に気にはせず水面からもらえる服はもらっておこうという感じでついていったわけだ。

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