045 東照凱人34
大久保の剣使いは素人のそれではない。
それは、今対峙してみて理解した――だが、戦闘の経験については別のようだ。
だが、
「くぅっ!」
「ワンパターンっつうか、芸がねえな」
まあまだ2ヶ月いくか少し過ぎてるかぐらいだもんな。若干数えるの忘れてわからなくなってきたが。
少なくとも、現状俺は軽くいなせて、なんなら攻撃だってできる隙も多くあった。
ただ、なんか……悪くも感化されたらしい。やっぱ、知り合いに剣を向けるっつうのはいいもんじゃないと意識してしまった。
何を俺は偉そうにあの時言っていたんだか。
「退いてくれれば俺はそれでいいんだが」
「しつこい!!」
国の流派だか、なんだか忘れたけど人族でその流派使ってる人間は多い。剣術的に言えばよくも悪くも知られちゃってて、それを基礎技だけでやられれば見極めるのは簡単だ。
「…………」
「くそっ! なんで!」
なんつうか、倒すことより当てることに必死になってきてる気がすんな。
気絶させても不味いんだよな――しかたねえ。
「――なっ!?」
「口と目は閉じておいたほうがいいぜ」
俺は剣と剣をわざと当てて弾き、頭を掴んで地面に叩きつけた。
ここ数日、天気悪かったせいか固まりかけの中途半端な土だから、これで死ぬことはないと思うんだが。
「つぅっ!」
「まだ立つのかよ……」
顔を抑えながら立ち上がる大久保。昔のあのチビ姫の魅了ならこの痛みで解けてたけど、やっぱ強くなってんな。
麻痺した思考戻せばいまやってることを認識して、パニックでも起こしてくれると思ったんだが。
「わたしは……わたしは!」
「何をそんなにムキになってんだよ――」
大久保は今まで聞いたこともない大声を出す。
「まだ……まだ、終わってない!! わたしはまだ終わってない!」
「――やばいな」
鈍い俺でもわかるくらいに魔力放出してやがる。こいつ魔力適正こんなに高かったのかよ。
「わたしはまだたたかえ゛っ」
「えっ?」
多分、また俺に斬りかかろうとしてたんだろうな大久保。だけど横から吹っ飛んできたでかいものと激突してぶっ倒れた。
「あっ……ご、ごめんっ!」
「阿多野……」
やったのは彼女のようだ。阿多野、恐ろしいやつだよ。
ていうか男も男で吹き飛ばされてるんじゃねえよ。しかものびてるし。
「い、委員長。なんでそっちに……」
「そっちもなにも、私は自分で決めて動いてるだけかな。大久保さん」
「自分で――」
「大久保! 矢田! 一旦退くぞ!」
もうひとりも合流……めちゃくちゃボロボロな状態で。
そして男とと大久保はメガネ、多分矢田を担いで退いて行った。
「ふたりとも無事ね」
「姉ヶ崎……お前どうやったら仮にも鎧があんなボロボロになるんだ」
「……筋力でどうにかなるわよ」
絶対、こいつは怒らせないようにしよう。
「それより逃がしちゃっていいの? 一応、私たちがやったけどこれはこれで獣人に加担したってされたら攻め入られるわよ」
「今回の問題は誰がどうやったってそうなるだろうよ。あいつらもそれは重々承知だ。
ただ、人族の穏健派との交渉の時のために念のためだろうよ……だが、実際にはマジでどうなるかわからないけどな」
「……そうね。人族の一般兵とか幹部じゃなくて、勇者が敗北して負けたって人族側で広められるかは微妙だものね」
「ふたりともとりあえず戻らない? この辺ドロドロだからちょっと、私は水浴びしたいかな」
「……そいつもそうだな」
一応、完璧とは言わないまでも、仕事は仮終了したか。次の襲撃も仕事のうちに言われたら5回くらいまではやってやるさ。国の依頼だからな。




