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異世界を歩む者~元勇者と新たな勇者たちは何を思う~  作者: 初雪しろ/Yuyu*
第1章 異世界に現る

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003 東照凱人03

 その夜、部屋で俺はルルムを待ちながら思考を整理する。

 まず俺が現代に戻って高校に入り転移するまでの帰還は数ヶ月だ――が、その間にこの世界で進んだ時間は5年だということだ。

 そして半ば強引に終戦したはずの戦争が掘り返されて何かが起きているとあの王は言っている。これが本当だとしたら魔族軍の回復が早過ぎるか嘘を付いているかで後者の可能性が高いを俺は考えている。

 よし、そして前回魔王を――倒したかは定かじゃないが戦闘不能にはした、その報酬は受け取れそうになく今回に至っては衣食住を提供するというなの、俺にとっては無償の仕事をさせようとしているから今夜、ここから出ようと思っている。

 さて俺……ここで質問だ。自問自答で答えろ。

 あの王の間で明らかに王女は魅了系の何らかの魔法を使っていたと推測できる――が、その魅了を食らってない奴もちらほらいた。疑い深いか特殊能力や聖剣が原因だろう。

 ようするに魅了を食らわなかった少数派、多数決で食われた連中をここに残していくかどうかということだ。

 一応俺も理不尽に召喚された経験がある以上、放って置くのはココロガイタイ。

 だが、金にならないのが目に見えている。ここから数人をつれてでたとして今度はそいつらの衣食住を考えればむしろ出費のがでかいんじゃないか。

 よし、今回はやめておこう。俺の行動に気づいて勝手についてくるような奴くらいには敬意を払ってどっかの街くらいまでは連れて行ってやるとしよう。

 矛盾しているが、要するに俺はいい人なんだ。金を払えばやれる範囲のことはかなりやるからな。

 思考がずれ始めた時に扉の鍵が開く音がする。

 ノック音だと今借りてる部屋を考えれば近くの部屋のやつが気づく可能性がある。だが、鍵の音ならまあ不思議ではないだろうという判断だ――と思うんだが、実際にどうだかは知らん。

 とにかく外から鍵を開けて入ってきたのはルルムだ。


「待たせたな」

「いや、むしろ考えをまとめる時間ができた」

「そうか……ほら、とりあえず城で預かっていたお前の金だ」

「他の荷物は」

「お前金以外に関心なさすぎて預けるようなものなかっただろ。金だけは全国各地の保管所で預けておきながら」

「……そういえば、そうだったな」


 倉庫にそもそも金を預けていたとは――おそらく2年目の俺だな。3年目に入ってからは手元か唯一信用できてきな臭いあいつのところにしか預けなくなった覚えがある。


「王が行方不明のようなもの、それにその戦闘では生きていることも望めないだろうといって処分というなの強奪をしようとしていたのをわたしが止めておいた」

「そいつはありがとうよ」


 渡された金の入った袋、中身を計算すれば日本円換算で30万ほど入っている。


「…………」

「言っておくが中身は触ってないからな」

「わかってる、そもそもお前は金より色気というか恋愛の人間だっただろ」

「言うな……今思えば恥ずかしさしか残らん」


 まあ確かに純粋にも程がある恋愛模様だったな。フィクションじみてて吐き気がした時もあったほどだ。


「まあ、それだけだ」

「あいつとは上手くいってるのか」

「もちろん、ラブラブだぞ。いや、だがあいつも今の国王の行動にはおかしさを感じて今は別の国で情報を集めている」

「そうか、じゃあまた会うかもしれないな」

「会ったら挨拶でもしてやってくれ……では、またな」

「また会えるだろうか」

「不吉なことをいってると凍らせるぞ」


 そんなやりとりの後ルルムは部屋の外へと出て行った。

 俺が向かう先は……この国から徒歩で半日もかからずに行ける魔物のいる森だ。

 何故といわれれば戦争中にわざわざそんな所にくる兵をさくとは思えないのと俺も数ヶ月とはいえこの世界で戦うための感覚を取り戻さなければいけない。

 後は、魔物はこの世界で一番進化する可能性が高い生物だ。現在の状況を知っておきたい。

 深夜の3時、俺は静かに音を最小限に押さえて部屋からでて廊下を歩いて行く。

 目指すのは正門じゃなく裏口だ、最悪水路に飛び込む方向でもいい。


「あ、あなたは勇者の1人の、こんな時間に何かありましたか?」


 だが途中で見回りをしていた兵士にあってしまった。まあ想定内だ。

 そしてこいつはどもった――つまりは兵士内でもそれなりに勇者の優劣も広まっているということだろう。


「いや、少しね」

「このような時間だと、少し怪しまれてしまうかもしれませんのでお部屋にお戻りになられたほうが」


 テンプレのようなセリフだな。まあいい、俺はその言葉を無視して兵士に近づいていく。

 兵士は何やら緊張したように背筋が伸びたな。


「安心しろ。悪いようにはしない……取引をしないか」

「え?」


 兵士の肩に手をおいて耳元で俺はそう言ってやった。大声を出されるのは困る。


「お前たちは勇者の中でも落ちこぼれに近い俺をなきものにするもしくは国からでていかせたいと俺は仮定してる」

「そ、そんなことは――」

「唐突かつわがままな話だが、俺はこのまま国からでていく。口止め料としてこれだけの金銭をやる。だからお前は今俺を見たことをなかったことにしろ」


 そうやって一つの小袋を見せてやる。俺がその中に入れたのは日本にして10万ほどの金だ。


「どうする……?」

「わ、わかった」

「もののついでに見張りに出会わないで外にでれる道を教えてくれると嬉しいが」

「い、一方通行なら倉庫の中にある通路を使えば外にはでられる」

「ありがとう」


 俺は兵士に金を握らせてそのまま静かに倉庫へと向かっていく。

 予想以上にでかい金は人を無言にさせる。魅了の魔法よりも立派で合理的なものだな。



「外にでれたか」


 城の外の茂みの中から俺は現れる。当たりはまだ早朝で霧がかかって視界が悪いが後ろを見るとでかい城が見える。

 倉庫の中の荷物に隠れていた道使って外へとでることができたのだ。

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