001 東照凱人01
前回は俺の他にも数人見知らぬ人間がいたわけだが、今回は一応知っているクラスメイトだ――3ヶ月程度しか知り合ってから立ってはいないがな。
しかし、毎回思うが城の王の間的なところに召喚陣を床にかくのはどうなんだ、せめて地下とかに書けよ。
目の前にいる王と王女、そして俺の周りではクラスメイトが動揺している。女子のいち部については怯えている――当たり前だとは思うが正直どうでもいい。
ちなみに俺の性格は別に鬼畜とかそういうんじゃなくてひねくれてるだけだ。あとは金が好きだ。
「よくきてくれた、異界の勇者たちよ。我はこの大陸の3大国の1国“カルドアル王国”の王である。そなたたちを歓迎しよう」
「わたくしは第1王女、メルニアです。この度はよくぞ来てくださいました」
メルニア、たしかそんな名前だったな――俺が初対面でこの少女に抱いた感想は“子供っぽくて愛らしく可愛らしく親に愛されて育てられてどこか不気味”という感じだ。
だが、俺は勇者として3年間旅をして成長した。俺がこの少女に抱いていた不気味という見当違いも甚だしい感想を訂正しようと思う。
そうだ、この少女は――子供っぽくて愛らしく可愛らしく親に愛されて育てられて――気持チ悪ヒ――まさに王女になるために育ってきたか国のためといいながら何かに従い続けて作られたような人間だという印象だ。
まあこの際、今はどうでもいいだろう、そんなことは。
王女がそう言うと周りの騎士や大臣っぽい中年どももこちらに頭を下げている、寒気しかしない。
「実はそなたらを呼んだのは他でもない。この国を救ってほしいのだ」
この後、数分にわたって現在の状況が説明された。
簡単にまとめると今この国は魔族との戦争をしている。そして獣人族もなにやらきな臭い動きは見て取れた。
戦争の原因は不明だが、5年前に終わったはずの戦争を掘り返されて攻撃をされているんではないだろうかと思ってる。
そして国――いってしまえば人族全体は苦戦を強いられている強いられているということだ。
馬鹿らしい。
俺はその感想の後にすぐに別の考えをしていた。
前に勇者として俺たちが戦争を集結させたのは俺の体感時間で言えば現代に戻る1ヶ月前程度だ。魔王と勇者の一騎打ちで戦争の勝敗を決するという形で戦争は終了、俺が覚えている限りはほぼ同士討ちに近い形を俺がとってその瞬間に現代に戻った。
そして現在人族の国ががこうやって残っていることを考えれば魔族の勝ちにはなっていないとかんがえてそれが5年前ということは時間が若干ずれてるな。
「お任せください。俺たちは王の力となり使命を果たすためにここに来ました」
クラスの人気者でRPGゲームの主人公みたいな奴がそんなふうに王に返事しているがどうでもいい。
あの時点で実際は人族の軍には余裕があったはずだ。なぜなら魔族側が疲弊したのは潜入してわかっていたことだからこちらも嘘を流したからだ。
金になるから俺がやったわけだ。
そういえばあの時の報酬もらえるのか……いや、そもそも俺は金さえよこせば動くが戦争を止めるために動いていたせいで嫌われていたから俺がいなくなったのは好都合として扱われていたか。
まあ期待はしないでおくか。
まあ要するに人族軍が5年程度で魔族が戻した軍事力で苦戦を強いられるほどの戦力しか残っていないはずはない――つまりこの理由は嘘か。
まあ嘘じゃなくても別に構わんのだが嘘だと思っておこう。
「ありがとうございます。勇者の皆様!」
王女がそんなことをいっている。
何の会話をしていたかは聞き逃していたが気づけば感銘を受けたのか主人公に流されたのか周りのクラスメイトたちもうなずいたりやる気を出したりしている。
数人を覗いてだが――魅了魔法でも使ってるのかと疑うところだ。
戦争ときいて人殺しの可能性も考慮しないアホはいるかもしれないが全員ではなかった記憶があるのにほぼ満場一致になってるのは魔法でも使ってるからだろう。
まあ、魅了系の魔法は使用者を信頼していることや精神状態が深く関わるから俺には効いてないみたいだが――どうせ王女だろうしな。
まあそんなことがあり、たとえ魔法の効かなかった数人がいたとしても多数決という悪魔のシステムで決まったわけだ。
今は適正の検査をしている。魔水晶の一つに触れた人間の魔力と属性を見るものがあるわけだ。
この世界に存在する魔法の属性は“火・水・風・土”の4属性を基本としている。
「凄い魔力量……そして属性も3属性使えるとは、聖剣もお持ちになられているようで
すばらしいです!」
主人公はどうやらかなりの才能の持ち主らしい。
勇者として召喚された時、俺たちの体はある加護を受ける。
身体強化と世界への体の適応だ。これによって魔力や食などでも拒絶が起きなくなり戦闘もこなせる体ができあがる……が、個人差は存在する。
そしてもう一つが聖剣か特異能力が発現するのだ。
ちなみに俺は聖剣のほうなわけだ、あれは魔剣だけどな。
こんなことをいっているうちに他の奴らも終わったらしいがかなり適正の高い奴らが多い。
「大丈夫だよ。俺が守るから」
「あ、あはは。ありがとう」
クラスのアイドル的な女子、阿多野愛菜を覗いて――。
俺の番がやってきて水晶に触れる、そしてその反応を見ると王女の目つきが変わった。ゴミを見るような目だ。ちなみに俺の目つきはかなり悪い――ツリ目で怖いとかそういうのではなくただただ不気味というタイプと言われた。
その目つきがまた王女の気に触れたのかさらに目つきが変わる。
なんだ、思ってたよりも人間らしさも持っているじゃないか。
「魔力量はこの世界の一般人より少し多い程度ですね……ま、まぁ魔力は素質も関わってきますしこういうこともあります。本日はこれで終了になります、お部屋を用意させてますのでご自由にお使いください」
聖剣持ちだということには触れもしないか。まあ聖剣は魔力と比例することが多いから仕方ないだろう。
ちなみに実際俺の魔力は少ないほうだ。ただ無理やりある人物に叩きこまれた我流剣術と聖剣の能力が強いため前回は勇者として魔王と戦うレベルまでに至ったのだ。
まあ実際には弱いから魔王も俺の前に別の勇者が戦ってくれてなかったら負けてたけどな。
とりあえず戦争に無償ででるなんてごめんだから役立たずとして追い出してくれるならそうしてくれ――と思ったが気が変わった。明日にはでることにするか。
「おい、東照!」
死ねばいい――おっと間違えた。俺をサンドバックなどにしている小川とそのとりまきがやってきた。
いいぜ、最後の俺殴りを存分に味わっておいてくれよ。