008 東照凱人08
服をもらっている間、水面に「お前、前以上に暗くなったな。戦闘狂で刺激でも足りなくなったか」とか言われたから「それはない」と正しく俺は否定をしておいた。
水面の中での俺の評価は「そうだな、それなりに明るくて、でもひねくれてて金を理由にしないと素直に人助けができないたちの悪いツンデレ」だそうだ――そんなわけがあるわけがない。
「まあ、お前もまだ若いんだ……もう少し甘えてもいいんだぞ」
「同じ時間軸だったら俺はもう二十歳こえてるぞ三十路」
「うるせぇ! それにまだ三十路じゃねえ! 今年で28だ!」
こいつといるとどうしても悪態をついてしまう、俺といる時のルルムはこんな気持なんだろう――まて、ルルムはこいつに対してもあんな感じだったな。この可能性はわずか数秒で否定された。
「あの、これって」
「獣人族の服……阿多野ちゃん、そんな感じの能力だろ?」
「そうですが……ちょっと露出多くないですか?」
「まあ耳とか爪とか尻尾とか考えられて作られてるらしいしな」
「初めて見た時も思ったけどそれで肩とか腹だしのやつきてるあいつらってどこかずれてないか」
「男としては眼福だがな」
「お前はそういう奴だったな、だからそんな目になる」
「特殊能力はオレが選んだんじゃねえよ!」
だが、阿多野が着ているのは獣人族の中では露出は抑えられてる方の服ではあるんだがな。
「それじゃあ、俺は行く」
「おう……ってこの子たちどうするんだよ」
「知らん」
「冷たいことで、しばらくこの街にいんのか?」
「……拠点にはする」
「そんじゃあようがあったらこい」
おまえに用があるならくるが、俺に妻のいる男をそんなに気にする理由は一切ないわけだが――こいつは何がいいたい。
「相変わらず察しがいいんだか、悪いんだか。わざとの時もあったな」
「まわりくどい、泡吹かすぞ」
「お前に泡吹かされた時にはもう死んでるから御免こうむる。とりあえず、しばらくはうちで預かってるからってことだよ」
「えっ!?」
「……そうか。じゃあな」
「えっ、待って!? 藤原さん!? 東照君!!?」
珍しく阿多野が驚きを隠せなくなったようにテンパっていた――が、無視して俺は街の奥へと歩いて行く事にしたわけだ。
街の奥、廃墟に近い建物も多い現代で言うスラム街へと俺はやってきた。ルールも無視されてることが多いこの地区にある酒屋の地下に俺の目的地がある。
「…………」
「…………」
途中で10にもなってないだろう子供が無言で俺を見つめてきた――が、物乞いに何かを恵んでやるほどおひとよしじゃあない。何より、周りにはまだそれなりに人がいる。一回の恵みで多くの奴らに付け入られるのは厄介だ。
俺はボロい酒場の扉を開けて中へと入る。
「らっしゃい……」
中にいるのはマスターただ一人――マスターのいるカウンター席に俺は座り“2回”指でカウンターを叩いた。
「……注文は?」
「ベリアルカッシュのブレンド」
「ベリアルカッシュのブレンド……付け合せは」
「チェリーダイヤ」
「……あいよ」
マスターはカウンターからでてきて俺の方へと来る。そして手招きをした先には地下への隠し階段がある。
「久しぶりだな」
「あぁ」
そうだ、所謂合言葉というやつだ。
俺が階段を降りていくと外からの見た目のようなボロではなくしっかりとした内装のへやにたどり着く。部屋もいくつか存在する作りだ。
「お客さんかい……ってお前は!」
「久しぶりだなガンドルズ」
「久しぶりだなガイト。見た目が変わんねえ」
「そいつは――」
俺は筋肉質なガンドルズという男に一度元の世界に戻ったことや改めて召喚された結果時間軸がずれたことなどを話した。
「そういうことか。やっぱり召喚術はなんでもありだな」
「本当にな……それで俺が聞きたいことがある」
「なんだ。久しぶりだが昔世話になってるしはずむぜ」
ここは盗賊ギルドの一つ《シャドーイーグル》だ。盗みなどは働かないが情報取得については違反すれすれまでするギルドで俺は昔からかなり世話になって世話をしている。
「まあ簡単にいえば……今の世界の状況だ」
「5年もずれてるしそうなるよな。これくらいなら凱人のたのみだし、何よりこんな誰でも知れるような世界状況で料金とるほど俺らも困ってねえ」
「そんじゃあ教えてくれ」
脳筋のように見えるがこのガンドルズはかなり隠密能力が高く頭も冴える方だ――ちなみにだがこいつはこの世界の人間だ。
「まずは戦争については知ってるみたいだが……そうだな、じゃあ魔族の状況についてだ」
「魔王はどうなった?」
「一応生きてるが……なんか知らんが魔王はわりと穏便派らしい。今、魔族の中でも3つに分かれているらしい」
「戦争中にか」
「あぁ……“人族侵略”、“戦争停戦”、“連合協定”だ」
「人族侵略はわかるが、戦争停戦は?」
「ガイトたちの侵略で削られた軍力をこれいじょう減るくらいなら停戦を申し出るってやつだな、ただでさえ今は問題が起きている。連合協定もその問題があるからできた派閥だ」
魔族側では何かを察知しているのか。いや、まて俺は同じ話を何処かで聞いたか――あの王が行っていた獣人のきな臭い動きか。
「獣人族はどうなってる?」
「察しが良いな。獣人族はこの問題を解決するべく動きたいが戦争が行われているせいで動けないでいる。獣人族の考えでは人族を手伝って侵略が始まってもあの王だからな」
「まあわかるが」
「そのせいで人族内での反乱軍との内乱も度々起きてる」
となると、次に重要なものがある。
「その問題ってのは何だ?」
「あぁ、そいつだ。実は今大陸の人族と魔族領地の間のだだっぴろい荒野での戦争になってるだろ。ここで何やら厄介な現象が起きてるらしい」
ガンドルズは国などの周辺の地図をだして戦場に印をつける。
「ガイトはアンデットのできる原理はしってるか?」
アンデット――その名の通り死者や亡霊だ。魔物に近い存在ともされているがゾンビやスケルトンなどの人の死体などの種類も多く厳密には生きていない。
そしてアンデットは地上にある魔力を死体が過剰に吸ってしまって動き出す“現象”の一種として扱われてもいるわけだ。
「それなりにはな」
「そいつが戦場で起きてる……つまり戦死者の魔族も人族も関係なくアンデット化しちまう」
「それはあるときはよくあることじゃあなかったか?」
「その速度がおかしい。魔力量か質が変わったから何らかの細工がないとおかしい速度でアンデットになっちまうんだ……そんでその範囲が広がってるって話もある」
「そういうことか――魔剣に魔物の進化体。可能性はいくらでもあるな」
「そんで人族側のようするにあのアホ王は魔族への攻撃しか考えちゃいねえ。ただ魔族側にも人族への侵略とか報復の派閥があるから戦争がそうそうやまねえ状況になってるってわけだ」
あのアホ王は領地や金とかしか見えちゃいねえからな。
「まあ戦争を止める義理は今回の俺にはねえが……仕事場が減らされるのは困るな」
「俺たち的にも魔族のお得意様とかもいるからな……なんつうかもう理由も忘れて魔族は滅ぼすべきとかそういう考えになってるぜ。あの国は」
「だろうな……ありがとう。助かった」
「これからどうすんだ?」
でていこうとした俺にガンドルズハそう聞いてくる。
「金になるところと、とりあえず知り合いの所回ってくるか」
「ははっ、お前知り合いそんないねえだろ」
「だからこそだ。お得意様は大切にしないとな」
「その通りだ……気をつけろよ」
「あぁ、そっちもヘマすんなよ」
俺は部屋を――酒場から外へ出た。
これから何をするべきかを考えろ。
戦争終結、これは依頼されれば手伝ってやらんでもない。アンデット問題解決、これも前者につづいてだ――が、人族側から金を払って依頼される可能性は少ない。あっても前者だろう。
それなら身近な所で荷物と少し金を集めてから獣人の国でも目指すとするか――あそこには金も集めてたはずだ。
「東照君! はぁ……はぁ……」
「……阿多野」
スラム街を歩いていた俺に話しかけてきたのは阿多野だった。何故こんな所に――。
「これからどうするの?」
「……少し仕事してから獣人族の国へ向かう予定だ」
「あのさ……私たちも一緒に行っていいかな」
「――何故?」
俺はそう返した――紛れも無く大真面目にだ。
戦えもしないやつと一緒に旅をすると負担が増えるとか金を払われるわけでもないのに護衛に近い状態になるのが嫌だとかそういうこともないわけじゃないが――ここまで連れて来てやった命をどうしてそう使おうとするのかが純粋に気になったのだ。
「ただ……今はこの世界を知りたいから」
「…………2ヶ月だ」
「え?」
「2ヶ月の間にせめて小さい魔物には対処できるようにしておけ。それが条件だ」
「……わかった」
「俺はこの街のどこかしかにはいる。最悪水面に手紙でも渡しておいてくれれば届けるすべをあいつは知っている」
「わかった……2ヶ月後にまた」
「あぁ……まぁ楽しみにはしないでおく」
そうだ、この世界は弱肉強食であってそうではない矛盾に満ちた世界だ――命を守る方法というなの命を奪う方法を習得することを楽しみにしてはいけないはずだ。
俺は昔を思い出しながらそんなことを考えた。
凱人視点が一旦ここできれます




