表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

眠れない!!

作者: 頭山怛朗

ヤフー・ブログに投稿予定です。

「1:35」 おれがトイレを済ませたからデッドに入ってからわずか一時間ぐらいしかたっていなかった……。

 結局、あの男のくれた薬(?)は効かなかったのだ……。まぁ、いい! 変な副作用が無かっただけマシとしよう。

 おれはそう思った。

 おれはトイレを出て、居間に立ったとき奇妙なことに気づいた。冷房がかかっている。寝る前は暖房がかかっていたはずだ。窓の外は雪景色のはず……。いや、月明かりの外はとても冬景色とは思えない。夏だ!

 寝室に入り隣のデッドで寝ている妻の寝顔が窓から入る月明かりで見えた。

 何年ぶりだろう、おれは妻に欲情した。おれは妻のパジャマのボタンに外し始めた。

「あなた、目が覚めたの?! 」と、妻が驚きの声を上げた。何の事だ! おれは構わず妻のパジャマを剥ぎ取った。おれの下半身の愚息ははちきれそうになっていた。

 それに気づいた妻は、素直にそれを受け入れた……。

 都合、三回連続して妻はおれのそれを受け入れた。三回目が終わった時、夜が明けようとしていた。


 <事>が終わって、妻の話を聞いておれは驚いた。おれは三年五ヶ月と十三日眠り続けたというのだ。そして、何の前触れもなく、突然、目覚め妻の体を求めたというのだ!

 信じられなかったが居間のテーブルのフォト・フレームの孫娘達を信じられ大きくなっていた……。一番上の孫娘は来年から小学校だという。おれの知っている孫娘はまだオムツをしていた……。

 その日、平日にもかかわらず息子夫婦・娘夫婦が孫達をつれてやってきた。親父の代からのかかりつけの医者もやって来た。医者は大分老け込んでいた。

 医者は言った。「詳しいことは精密検査をしないと分かりませんが、さしあたり問題はありません。三年半近く眠っていたのですから、体力が落ちていても少しも不思議でないのですが全く問題ありません。三年半近く眠り続けた事も信じられませんが、仮に目覚めても体力が落ちて身動きできないはずです。医学的常識に反します。まるで一夜眠って目覚めたようです」

 それを聞いて、息子夫婦も娘夫婦も安心してくれた。ただ、残念だったのは約三年半振りに会った孫娘がまるで異星人でも見るような眼でおれをみたことだった。

 マスコミもやってきた。三年半前に何があったのか聞かれ、怪しげな男のことを思い出したが記憶が曖昧で「何も変わった事は無かったと思う」と言った。眠っている間のことも聞かれたが、全く記憶がなかった。

 何時、目覚めたのか? ……についても多少訂正した。夜中の一時半に目覚めたけれど妻と“三連戦”を交えた。<事>が終わったら夜が明けていた……。

 …なんてとても言えなかった。


その日の夕方にはマスコミも消え、息子夫婦・娘夫婦も帰った。

 夕食は妻にしてみれば三年半ぶりに夫婦で食べたが、おれにとっては昨日の夜と同じだった。

 その後、いろんな話をした。息子夫婦・娘夫婦のその後、孫娘達の話……。

 時計が翌日になって、妻が「もう寝よう」と言った。毎夜、私達夫婦が寝る時間だった。しかし、おれは少しも眠くなかった。そう言えば、近頃の日課になっていた“昼寝”も今日はしていない……。

 でも、今、頭は冴えている。少しも眠くない。それどころか、おれの下半身の愚息も冴えてきた。

「いい加減にしなさい! 」と、妻が言った。その眼は昼間の孫娘の眼と同じだった。


 結局、妻は一人でベッドに入った。しようがないので、おれは自分の部屋で済ませた……。

 それで愚息は眠ったが、おれ自身は少しも眠くならなかった。ベッドに入ったけれどやはり無駄だった。

 それは、次の日も、次の日も、その次の日も同じ事だった。


 老いた医者が言った。「それはそうでしょう。あなたは三年半の眠り続けたのです。“寝貯めはできない”が医学界の常識ですが、あなたに医学界の常識は通用しませんから当分眠れないと思いますよ……」

 それから医者は、孫娘と妻と同じ眼、あの眼でおれを見つめた。


 結局、おれの「眠れない」は少しも解消していない……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ