外野「とある王国にて」
ちょっくら外野の人々の話。
そのうち本編とつなぎます~。
外野「とある王国にて」
「お前をこれ程恨んだ日はないわ」
女は、その背格好に似合わない大剣を杖に、緋色の女に吐き捨てるように言う。女の闇に解けるような黒髪は冬の木枯らしに巻き上げられて、時折怪しげに光を受けてきらきらと艶やかに光っている。
「当然だ。私の庇護に隠れ、政務を厳かにし、王をいう立場を散々利用していたのはお前だ。国がここまでもっていたのは私のお蔭。恨むどころが、感謝して欲しい位だ」
緋色の女は月を背にしていたので、その表情は逆光に陰り、よく分からなかった。しかし、それが余計に大剣の女の苛立ちを煽り、その中の何かを触発させた。
「恩義に背いたのはお前の方よ」
女は大剣を緋色の女の方に突き付けて、思いっきり笑った。
「道端に転がっていた、汚らしい小娘。そんな浮浪児を助け、綺麗な服を与え、食事まで恵んでやったのはこの私。私なのよ!!それを・・・、お前は恩を仇で返すというの?」
「お前に助けを乞うた覚えなど無い」
緋色の女の瞳は一切揺るがなかった。それが孤高の軍人の貫録であり、プライドだった。
「言っておこう。私はこの生で一度も、他人に物を乞うたことはない」
「嘘よ・・・!!」
大剣の女は掠れた声を、必死に振り絞って叫んだ。
「嘘よ!!お前は私に恥をさらしたくないから、そんな嘘をつくのね!!」
女は大剣を力任せに振った。もう何もかもが自棄だった。国王軍は、すべて緋色の女の管轄。自分の身辺警護の者までもが、首を狙おうとする。ただ他人の努力を貪り、その蜜を吸うだけの王は、とうの昔に見捨てられていたのだ。
「さて、幾代にも続いた姫王の血もここで根絶やしとなるのか・・・?」
緋色の女は口角を三日月のように吊り上げた。心のそこからこの状況を楽しむように。
力任せに振り切られた大剣が通過した箇所は陽炎のようにゆらゆらと揺らめき、それでいてキラキラと細かい粒が光っていた。
「さあ、もう終わりにしよう。悪しき女王は斃れ、新王が誕生する」
緋色の女の高笑いを聞きながら、大剣の女は唇をかみしめていた。
「お前があの玉座に座るのだけは、許さないわ」
また恨めしそうに緋色の女の方を見上げて、そう呟く。
しかし、緋色の女は全く以て予想外の答えを返した。
「何を言っている。玉座の眺めを望むのは私ではない」
緋色の女の瞳には、明らかな軽蔑の色が宿っていた。それは、相手に対する怒りの表れなのか、それとも嘲りの証なのか。もしくは両者か。
「間もなく新しい民族がこの国を手中に治める。お前の祖父が禁忌とした戦闘民族だ。何、戦ばかりの国にしようなんて彼等の中のだれも思っていないさ。ただ、彼等は不思議な魔法の継承を許されていてだな・・・って。死人にそんなことを言ってもしかたあるまい」
「まだ生きているわ」
「それは失礼した。女王陛下」
緋色の女は、わざとらしく一礼した。
それに腹を立てても、女は何もしなかった。否、する力、余裕など無いに等しかった。
「それじゃあ、天国の弟さんによろしく言っとくんだな。ただお前が天国に行けるとは思えない」
緋色の女は、口角を吊り上げた。
「じゃあお前も一緒ね。いずれ私と地獄に堕ちるの」
せめてもの抵抗にと、女は緋色の女を見やった。
しかし、強大な力に抗うことは許されなかった。
「馬鹿め・・・・・・」
何処からか、そんな声がした。
「おい、皆。聞いてくれ。たった今、愚王の首を取ったぞ。これで、国は安泰だ!!今日は宴だァ!!!」
最後には緋色の女の、高らかで、軽快な笑い声が国に春を訪れたことを知らせた。
さて、この国の人々に本物の安寧は約束されたのか。
それは誰も知らない。
~人物紹介~
露地 永良 (ろじ えいら)
・誕生日 4月30日
・身長 160cm
・体重 47kg
・好きな物 コスプレ、光さん、立春様
・苦手なもの 機械、マジックテープの音
・得意技 女装
【天真爛漫な女装美少年。名前は立春にもらったそう。日本人のようであるが、実は韓国人。ちょっとした経緯があって、今に至るのだがそれは又今度】