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Wahnsinning  作者: 廻廻風
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4「勉強は嫌いです」

4「勉強は嫌いです」

 ぴぴ。

 すこしくぐもった様な機械音が部屋に響いた。

(げ、メールだ)

 今日は疲れてんだよなぁ・・・。とか思いながら、携帯を開く。因みに俺の携帯はまだまだ現役ガラケーさんだ。


=まっつんへ=

 明日は、私の家に来ること。

 こなければ、お前を一片の肉塊も残さずにこの世から消し去ってしんぜよう。


「くううううううう」

 俺は自室のベッドで、一人頭を抱えて唸っていた。

やっぱり夢じゃなかったかぁ、と布団の上でごろごろする。もう一生ニートがいい。

すると突然、こんこんという窓を叩く音がした。

【おい、小僧。中に入れろ】

 森田がガラス越しにそう言っていた。

「・・・・・」

 俺は少し静止してから、無視を決め込むことにした。この手のボケには、無視で対応するに限る。

 決して振り向いてはならない。

【おい、小僧!!あと五秒後に窓を開けなければ強行突破だぞ!!】

「・・・・・」

 俺の脳内で、窓が派手な音を立てて森田が格好よく登場する映像ヴィジョンが流れ込む。それは気に食わない。

 俺は仕方なく、窓のロックを外してやった。

「調子に乗るんじゃないぞ、小僧・・・・」

 森田の目は怒りに燃えていたが、俺はあえて気付かない振りをした。

「というか何でお前らはいちいち窓から登場するんだ」

「その方が格好がつくからに決まっている」

 俺は仮病をたててでも、布団にもぐりこみたくなった。

 森田は、我が物顔で俺のベッドに腰掛け、あたりを見回していた。そして、何か思い出したように、はっと顔を此方に向けたと思ったら、

「おい、小僧。客人にもてなしの一つもないのか」

 と言ってきた。

「勝手に入っておいてよく言うぜ。全く」

 つくづく自分勝手な野郎だな、と俺は冷蔵庫から適当にひっぱって来た酒饅頭を投げた。

 それを、ぱしっと音を立ててキャッチする森田。

「お前、なかなか分かってるじゃないか」

 何がだよ!!とツッコミたくなる。

「で、何をしに来たんだよ」

 俺のプライベートの時間まで侵害しやがって!!という皮肉を込めて俺は言った。

「いや、立春にプロポーズ紛いのことをされて舞い上がってる小僧に一つ忠告を、と思ってだな」

「いやいや。舞い上がってませんし。プロポーズじゃないですし」

「即答しなくてもいいだろう」

 何を言い出すと思ったら、実にくだらない。そう思う俺を余所に、森田のほうは肩を竦めて、「これだから人間は」とか意味の分からないことを言っている。

「小僧、何で立春がお前に執着するか知りたくないか?」

「別に、気にならない」

 俺がそう答えると、森田は泡を食らったように困惑しているようだった。さては予想外の受け答えか。

「さあ、用事が済んだなら帰ってくれよ」

 俺は手で森田を「しっし」と追い払うと、さっき饅頭と一緒に冷蔵庫からひっぱってきたわらび餅の包装を剥いだ。

「くっそ・・・。何処までも生意気な小僧め・・・・」

 部屋の隅っこの方で森田は地団駄を踏んでいる。迷惑だ。早く帰ってほしいと思う。

 ゴミをゴミ箱に投げ、何個かわらび餅を爪楊枝でさした。そして森田とわらび餅を2、3度見比べて、それを口に運んだ。

 そして丁度五個目の頃かな。また窓の方から声が聞こえた。

【お~い。光さ~ん】

 次は誰だ?と思って窓の方を見ると、巫女さんコスの少年(性別は判別できない)が、へばりついていた。

「・・・・。お前の連れか?」

 部屋の隅っこに向き直ると森田は既に立ち直っており、シャキっとした足取りで窓へ向かい、鍵を開けていた。

 あくまも確認の為に言うけど、此処は俺の部屋だからね?そして二階で、窓のある壁には動物の通れるような足場はないからね?

「はあ~。この方を立春様が神官として選ばれたのですか?」

 そうこうしている内に、巫女コスが勝手に部屋に侵入していた。止めてくれ。本当。

「実に不服だがな」

「光さん、嫉妬?嫉妬はよくないですよ。堕ちてしまいますって」

 俺はあえて気が付いていない振りをする。わらび餅うめぇ。

「おい、小僧。何、うちの神官様を無視してやがる。脳天ぶち抜くぞ」

「光さん、それはいけません。立春様に一生嫌われますよ」

 最後の一つを喉に流し込み、俺は空になった容器を、ゴミ箱に放った。

「で?何をしに来たんだよ。馬鹿主従」

 俺は巫女コスのほうをちらりと見て、尋ねてみた。

「あ、申し遅れました。私の名前は露地永良。光さんの神官です」

 あの女装癖って呼ばれた神官様ね。

「今日、まっつん様の元へお邪魔したのは、言うまでもありません!!」

 おお。こいつ俺のプライベートを邪魔しているということをよく弁えているじゃないか。だが、迷惑極まりないので、願わくば帰って頂きたい。

「まっつん様には、これから先、暫くは神官試験に向けたお勉強をなさっていただきます!」

 ぐほお。

 俺は無意識に咳き込んだ。わらび餅がのどに引っかかった気がする。

「おい、小僧。うちの永良に汚い物を見せるんじゃないぞ」

 結局俺の心配なんてする気はないんですね。はい、わかります。

 というか、なんだか悪徳商法に引っ掛けられた気分だな。

「大丈夫。お勉強っていっても、本当に基本的な知識を試されるだけです。学校の勉強みたいにノートを取ったりなんかしません!!」

「まあ、お前は運がいい。神官育成委員会きってのエリートに教育してもらえるんだからな。なぁ永良」

 隣では森田が腕を組んでうんうんと頷いている。切実に殴りたい。


(・・・いや。俺神官とか興味ねーし)


~人物紹介~

戸田 立春 (とだ りっしゅん)

・誕生日 秘密

・年齢不詳

・身長 160㎝ ※変化自在

・体重 45㎏ ※変化自在

・好きな物 音楽、美術

・苦手な物 体育、大根

・得意技 ???

【成績優秀で、早くも次期生徒会長候補。しかしその裏の顔は、神の(無茶な)依頼をこなす神の代理人。本編ではまだその能力を明らかにしてはいない。モテる(主に森田から)ので、彼氏いない歴は殆ど1、2週間間隔。しかし、彼氏の大半は性格破綻してしまう、という謎の噂もある】

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