3「始めるのは容易だが、終わらせるのが大変だ~世界は広大です~」
3「始めるのは容易だが、終わらせるのが大変だ~世界は広大です~」
「私達は、‘神の代理人’と呼ばれるんだ。神ではない。ただ、神が成すことの無い仕事をこなすのが私達の役目。例えば、世界の終末を招き入れたり、さっきのみたいに堕ちた神様を更生施設までお送りしたりね」
お送りという名の強制送還な。
俺は心の中で突っ込む。
「しかし、そもそも俺達は在ってはならない存在だ。考えて見ろ。世界の運命をも左右する生物がその辺でうろちょろしてんだ。野放しの核ミサイルのスイッチと同じようなものだぞ。危険極まりない」
自分でいうか?それ。
「で?なんでそんな危ない存在が俺の目の前にいるのかな」
はあ、と本日何回目か分からない溜息をつき、目の前の二人(心なしか顔が似ている)を見やる俺。本当にこれは夢じゃないのか。
「・・・・・全てを統括しておられる神様が、ご自身の公務を楽にする為俺達の封印を解いた」
「全く勘弁してもらいたいよねぇ」
そんな理由で・・・・。開いた口が塞がらない。
お前ら神様には、頭がパーな奴しかいねぇのか。そうか、と俺は無理やり納得して、再起に成功する。
「そんな危険な俺達は基本的に、必要なときに解印されるべき存在なんだがな」
「なんてったて神様はまだ幼いからねぇ。遊びたいんでしょ」
「残業代、でると思うか?」
冗談のつもりなのだろうが、その表情からするに冗談には取れない。
俺は取りあえず、今一番の疑問を口にした。
「なんでお前らみたいな超人が市井に紛れてい居るのかはよく分かった。だけど、神官っていうのがよくわからない」
「ん~?要は人間と私達神の代理人の間にいる人物。仲人さん?」
あ、この人、自分でも理解してないんだな。
「俺達は正式な神ではないから、普通一人の神官しかつけられない。だから人選はあれ程重要だといっただろうが!!いつまでも神官を選ばないと思ったら、よりによって神とは何の関係もない小僧を選びやがって!!せめて、神社の息子とか、そういうのあんだろうが!!」
「五月蝿いぞ!森田ァ!!お前みたいなホモに言われたかねぇ!!!」
またもや、言い争いの予感・・・・。むむ。
「と、まぁ森田の神官様は、美少年で女装癖のある人なんだけどね。まっつんもあってみたらわかるよ。別に神官だからって神々しい雰囲気はいらないから。ちょっと試験に合格してくれればいいから」
「まぁ小僧。お前はまだ神官(仮)なんだから、舞い上がったりすんじゃないぞ」
勝手によく分からない神官にされて舞い上がる馬鹿がどこにいるんだよ。
「という訳で、森田君は学校へ戻ろうか」
戸田さんはそう言って、指をパチンと鳴らした。
頭の中がぐわんと音を立てるように歪んで、視界がぐにゃりと曲がった。
「おーい!まっつん、今日はなんだか上の空だなぁ!!」
同じクラスの倉持が俺の肩をトン、と叩いてきた。というか本当に皆の脳みそからは、さっきの惨事は残ってないんだな。
「それは・・・・」
言いかけて俺は口を噤んだ。
というか話がぶっ飛びすぎて、隣のクラスの戸田立春がとんでもない奴だったとは言えない。絶対信じてもらえないから。
「今日の目玉焼きの卵、孵化してたんだよ」
適当に答えとこう。
「そーなのかー。それにめげるんじゃないぞ!!」
「分かってる」
こっちの会話も違う意味でぶっ飛んでるわ。
「あ、それ戸田のストラップと同じ奴じゃん」
そういって俺の携帯のストラップ(というか何時から付けたんだ。あのアマ)を指さす倉持。よく見るとどことなく戸田さんにそっくりな顔立ちのペンギンのストラップ。結構大きめで手のひらサイズ、だが、これってからかわれて面倒くさいパターンじゃねぇの?
「まっつん・・・・お前、まさか」
「ちげぇ。アイツが勝手につけてったんだ、というかお前もなんで戸田さんのストラップ知ってんだよ」
「お前、知らない方が珍しいぞ!このペンギンは戸田のお兄さん、即ち戸田郁人・・・・・ペンネームはイグ・トアーの人気作品、‘北極征服’の主人公、ペンタだぞ!!」
「そんな殺伐とした題名の漫画の主人公なのか?というかえらくぶっ飛んだペンネームだな。患ってるのか?」
「トアー先生は患ってるのがウリだからな。いいなぁ。お前、それ数量限定なんだぜ」
そう言われて、俺は少し考えた。
ここでこのペンギンをぶん投げて、倉持に進呈してもいいのだが、なんにせよ後が怖い。
「このペンギン気に入った。ありがたくもらっとこう」
「いーなー」
俺は携帯をポケットにしまって、自分の机へどかっと腰かけた。
~(なけなしの)人物紹介~
松谷 楸 (まつたに ひさぎ)
・誕生日 7月8日
・年齢 17歳
・身長 172㎝
・体重 トップシークレット
・好きな物 横スクロールのゲーム、炒飯、あんかけ焼きそば
・苦手な物 数学、理科
・得意 体育全般
【家族は姉、柊と母、恩、父、哲孝。姉とは一つ違いで、まるで友達と接するような感じで、話したりする。ひょんなことから立春に神官と指名されるが、本人にその気はない】