1「始めるのは容易だが、終わらせるのが大変だ」
1「始めるのは容易だが、終わらせるのが大変だ」
男教師の声がやけに教室に籠り、何人かの生徒がうっつらうっつらしながら始まる五時限目。
そんないつもの風景に、普通ではないものが舞い降りた。
―Wahnsinnig―
「おーい。じゃあ、ここの問題。松谷、解いてみろ」
「はい」
先生はチョークでびしっと俺の方をさす。
だから俺は仕方なく、教卓と黒板の方へ足をすすめる。
あー。今の席後ろの方だから面倒なんだよなー。黒板まで歩くの、なんて思いながらゆっくり歩く。
黒板まであと一歩というところでクラスのお調子者、河瀬の声が耳についた。
「おい、窓の方見ろよ!なんかいるぜ!!!」
驚いてビクついた俺はさて置き、河瀬はわざわざ窓へ駆け寄った。
「ほらほら!」
それにつられ、他の男子達が窓に駆け寄る。そして口々に歓声をあげていくので、更に女子達も集まる。
「お~。河瀬、俺にも見せてみろ」
それまで黙っていた先生であったが、突然立ち上がったと思ったらそれだった。
なんだよ、なんだよ。俺は二の次か?と先生にツッコミを入れたくなったが、俺も窓の外に興味を惹かれ、吸い寄せられるようにそちらへ針路を変えた。
「なんだ・・・・。あれ」
不意に俺の口からはそんな言葉が漏れていた。
と、同時に本能的な恐怖が身をよじった。
(あれ、ヤバい奴じゃねぇの?)そんな思考が頭をぐるぐると這いずり回り、余計に恐怖心を煽っていた。
窓の向こうに広がるのは、美しい海の風景・・・・と空をうねって蛇行する黒い蛇の様な何かであった。
「あ、皆!こっちに向かってくるぞ!!」
河瀬が窓から身を乗り出して、蛇もどきの方向を指差している。
先生もなんだかもの珍しげにそっちを眺めてるし、俺以外の誰もあの蛇もどきに恐れ慄いてなどいなかった。
(お気楽モードか!?)
そして蛇もどきがぐんとスピードを速めたであろう瞬間、隣のクラスから派手な音がした。どうやら窓ガラスが割れたようだ。
皆その音に気を取られて、教室の中に一斉に視線を移した。というか今の俺にはそんなことどうでもよかった。今見ておくべきなのは謎の生命体の方だ。
そして、その時を見計らったかのように、蛇もどきはあり得ない速度でこちらへ向かってきた。
と、悠長に説明しているが、実際蛇もどきがうちの教室の窓ガラスを突き破って入ってきたのは、俺が速度上昇の確認をした後、瞬きをして直ぐのことだ。
ほんの一瞬の事過ぎて俺にも、誰にも状況の整理は出来ていない。
しかし割れた窓の方から聞こえた声が誰のものかくらいは判別できた。
「あっちゃ~。ちょっと派手にやっちゃたねぇ。あ、皆下がっててね。じゃないと命持っていかれても文句なしだよ~」
辛うじて枠についていたガラスを手で全て取り払い、「よいっしょっ」と窓から侵入した女子。おいおい、此処四階だし。
皆はぽかんと口を開けて、女子・・・・隣のクラス(さっき窓が割れてたクラス)の学級委員長、戸田さんに視線を奪われていた。
「はいはい。命の惜しい人は教室から退室願いまーす。あ、まっつん以外ね」(まっつんっでいうのは俺のあだ名ね)
さらっと俺以外の全員を安全な場所に促す戸田さん。「もしかして俺に恨みでもあんのかな」なんて考えるのに一秒、「あ、昨日部活で間違えて三角定規で頭さしたの怒ってんのかな」っていう考えに至るのに零.五秒。「あ、そうかそうか。そういうことか」と納得するのにさらに一秒かかった。
「まっつん、ちょっとこっち来て~」
しゃがみこんで蛇もどきを興味深そうに見つめる戸田さん。
その蛇もどき、よく見ると髭みたいな触角があって、鬣もあった。蛇というよりは東洋の龍みたいな姿形だった。・・・・・真っ黒だけどさ。
「怖くないよ。大丈夫」
といわれても足がすくんで動けない。
「あー!!もうじれったい!!」
何も言わない、しない俺にしびれを切らせた戸田さんは、俺の方に飛んできて・・・・飛んできて?
「ちょっと格好悪いけど我慢してくださいよ!」
なんて言って俺をオヒメサマダッコして戸田さんは窓に足を掛けた。
「え、っちょ!?」
これってドキドキしなきゃならない展開なんだろうが、驚きの余り俺は切れ切れにしか言葉が出ない。うむ。真に残念だ。
「飛びまーす。気分が悪くなったら言ってね」
俺には拒否権なんてなかった。
言うや否や戸田さんは窓を蹴って・・・・見事に空中浮遊した。
閲覧、有難うございました。どうも、作者のくるくるです。
拙い文面で読みづらいでしょうが、この作品のテーマは「狂気と愛憎」。
そんなにどろどろしたものにするつもりは微塵もございませんが、いつのまにやらそうなっているかも知れません・・・(汗)
因みにまっつんの下の名前は「ひさぎ」と読んでやってください。ちょっと変わった名前の子を出したかったんです。(別に私が患ってるとか、そういうのでは・・・決して・・・・)
いつか投稿したいなー。でもなー。そんなことを考えてはや三か月。
遂に投稿しました、オリジナル小説!!
初投稿ですので、文法無視や誤字などは大目にみてやってください。
それでは、また次の話でお会いしましょう!!Auf Wiedersehen!!