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小説になりきれない小説群  作者: ちゅうか
18/20

酔っ払いのおっさんが赤ちゃんにした話

先生だったかもしれない

ある日の昼間、赤ちゃんを抱っこして電車に乗ると、明らかに酔っ払ってるおっさんがいて、眠ってた。

おっさんの両隣は空席で、子供が数人近くに立っていた。

私が隣に座って間もなく、赤ちゃんがおっさんに向かいウッキャオワッキャオと、テンション高く話しかけ始めてしまった。

おっさんが眠そうに目を開け、ぼんやりと赤ちゃんを見つめるので、私は必死に赤ちゃんを宥めつつ、申し訳無ありませんと伝えた。

すると。

「皆の言う事を何でも聞いてくれるもの。何だと思いますかーっ!?」

おっさんは何故か近くの子供達に向かい、大声で謎々を出した。

最初はキョトンとしていた子供達だったが、

「お母さん?」

「友達?」

「家来?」

「ペット?」

と、ぽつぽつ答えた。

私は赤ちゃんが静かになったのでホッとして、考えて無かったけれど。

「ブブーッそれは、皆の手足でーすっ!」

おっさんが答えを言うと、子供達が感心したように急に手を見始め、思わず私も自分の手を見てしまった。

おっさんは続ける。

「手は人を殴る為にあるのではありませーん!手は物を持ったり作ったりする為にありまぁーすっ足は人を蹴る為にあるのではありませぇーんっ!足は歩いたり走ったり、移動する為にありますよーっ!口は人を傷つける事を言う為にあるのではありませんからねーっ!口は物を食べ、人を励まし楽しくさせる事を言う為にあるんですーっ分かりましたかーっ!?」

はいっ分かりました!と、一人の子供が返事をすると、次々と子供達が私も俺もと続く。

おっさんは少し悲しそうな目で私の赤ちゃんを見つめて、

「最近、平気で人を傷つける人が増えた気がするなぁ。手足、そして口の正しい使い方を知らない人が増えてる。実に悲しい…嘆かわしい。いいかね赤ちゃん、単純だし、知っていて当然の事なんだが、忘れやすい大事な事だからな…よく覚えておくんだよぉー」

その後、おっさんはフラフラした足取りで電車を降りてしまったけれど、一連の会話がすごく心に残って。

だから、いい機会だから書いてみたわ。

私は虐待事件とか嫌なニュースを見る度に、このおっさんの言葉が浮かぶ。

そして思う。

あのおっさんは何者だったのかしら?

…この加害者達は、手足口の正しい使い方を理解してないんだろうな…って。

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