207話 伝わる言葉
ここまでのあらすじ
・ヒラギス奪還作戦三日目、バルバロッサ将軍にからまれ手柄を掻っ攫う
・出張コームの町剣術稽古
エルド将軍の部隊には二万人いるそうだ。といっても直属の配下だけだと四千人ほどで、あとは臨時の徴募兵らしい。直属の配下は常日頃から訓練を重ね、練度も高いし装備も良く士気も高い、いわゆる正規兵、職業軍人である。
剣聖が見ていて張り切ったのだろうが、丸一日戦ったその日のうちに剣の稽古をしようなどという傍迷惑な兵士たちはこいつらだ。
対して徴募兵は装備もばらばらで練度もお察しだし、報酬は出ても雀の涙程度。しかも死ねばそれすら貰えず、ただ死亡の連絡が故郷に行くだけである。
「もちろん拒否なんか出来ませんよ!」
サティたちとお風呂でちゃぷちゃぷしながらミリアムが説明してくれる。年齢的に同世代かすぐ上の世代が一番の徴募対象で、この手の話はよく聞いてきたのだそうだ。
哀れな徴募兵にも救いがあるとすれば、いきなり魔物にぶつけるなんて真似はさすがにそうはなくて、運用は補助と支援的なものとなることだろうか。
部隊単位で槍でも持たせて突っ込ませれば素人でもそれなりの戦闘力は見込めるし、まったく戦わずに済むということはないようだが、物資の輸送や土木工事、使いっ走りや常備兵の身の回りの世話、防衛なら夜間の警戒などすべき雑用は多岐にわたる。そうして運が良ければ一度も魔物と矛を交えず故郷へと戻れることもあり、食事は確実に出るし些少ながらも現金収入もある。よく働いたと褒美が貰えることもある。決して悪いことばかりでもないようなのだが……
「それでいくと今回は最悪じゃないでしょうか」
ヒラギス全土を奪還するまでどれだけの期間拘束されるか。その上もともと厳しい戦いが予想されていたところに、北方軍と南方軍ともに初戦での不手際である。徴募兵の絶望感はいかほどだろうか。
バルバロッサ将軍の配下とて、そんな徴募兵が半数以上を占めるのだ。しかも将軍の出世争いもかかっている。さぞかし張り切って人を集めただろうとミリアムは言う。
「ですから……」
「我らが活躍すればそやつらは大いに感謝するし、エルフひいては我らの声望になるのじゃな!」
そういうことでもないんだが、そういうことにしておこう。人の死は疲れた時に考えるには重すぎる話だ。
「念の為バルバロッサ将軍の動向も注意しておこう」
部隊が別れても多少の情報は入ってくるだろう。エルド将軍に情報提供を頼んでおけば大丈夫だろうか。明日の予定はまた朝にエリーたちと合流してオレンジ隊の入れ替えをして……
あー、いいや。しんどい。面倒なことは明日また考えよう。参加者が四千人全員じゃなかったとはいえ、一〇〇人抜きなんて話にならないくらい戦わされたのだ。サティなんて途中で面倒になったのか、五人ずつ相手にしていたほどだ。
「明日以降も戦闘はあるんですが」
そうこっそり師匠に進言してみたら、それは兵士たちも一緒だろうと言われて納得しかけたのだが、三人対四千人じゃ負担が違いすぎる。まあ俺は実戦では魔法で後衛をしてればいいし、防衛戦ならサティたち前衛の出番も弓くらいだ。多少の無理は平気といえば平気な気もするのだが。
結局見学エルフちゃんの「二〇〇人目ですよ、すごい!」という言葉で、時間もかなり遅くなったし切りもいいので引き上げることにしたのだ。エルド将軍から夕食の誘いもあったが、疲れたからと断って、宿舎で簡単な食事を済ませようやくお風呂にたどり着いたのだ。
後は寝るだけと疲労と眠気でふらふらしつつ部屋に戻ると、さすがにお風呂の同伴はお断りした見学エルフちゃんたちが、部屋の隅っこに毛布で寝床を作っていた。
「そこで寝るの?」
「お構いなく~」
見学エルフちゃんの長女ちゃんがそう答えた。三人は姉妹でチームを組んで、獲物回収競争を勝ち抜いたんだそうだ。その末っ子ちゃんがちょっと小さいんで教育上悪そうだとお風呂はお断りしたのだ。
まあいいか。さすがに今日みたいな日まで無理してナニすることもない。日誌だけ書いたらもう寝よう。
日誌を書き始めたところで見学エルフちゃんが、当然興味を持ってそろそろと覗き込みに来た。
「見たことのない文字です」
見学エルフ姉妹の次女ちゃんが言う。日誌のことはエルフにも知られてないのか。
「これは俺の故郷の文字で、毎日の出来事を書いてるんだ」
「ああ、日記ですか」と、長女ちゃん。
「日誌かな。神様に日々の報告を上げてるんだ。たまに返事も来るよ。あ、これ内緒ね。他の人に教えちゃダメだよ」
「「え……ええええええー」」
「君らのことも書いたから神様が読んでるかもね」
たぶんちゃんと読んでるはず。日常的なことの合間に何か重要なことを書いても、きちんと返事がくるもんな。
「あ、あの! わた、わたし、お礼を……」
ほとんどずっと二人の姉の後ろで大人しくしていた末っ子ちゃんが珍しく何かを訴えかけてきた。
「お礼?」
「ありがとうございます。マサル様を遣わしてくれて。ありがとうございます。精霊を与えてくれて。感謝してます。すごくすごく感謝してますって」
「いいよ。書いておく」
俺が頷くと末っ子ちゃんは感極まったのかぽろぽろと泣き始めた。エルフの里に神殿はないが、エルフも確固たる信仰を持っている。かつて人族に魔法を与えたのは神様と言われているし、虚弱で迫害されていたエルフを哀れんだ神様が、精霊をくだされたのは間違いない事実として伝承されているそうだ。だからエルフは神殿など通さずに、神様に直接祈る。割と好き勝手にで教義などない原始的な宗教らしい。それとも原初の本来あるべき自然な形の宗教とでもいうべきか。ただ神に感謝を捧げる。
リリアにはそういう面はなかったが、末っ子ちゃんは宗教心が強かったのだろう。
「君の言葉は神に届いた」
ノートを閉じてそっと言葉をかけた。サティたちがベッドで待っている。今日も長い一日だった。ようやく寝られる……
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
朝起きたら末っ子ちゃんが加護持ちになってた。
ここのところの朝は早い上にいつもばたばたする。オレンジ隊の入れ替えに、エリーたちと合流しての朝食を取りながらの情報交換と会議。気がついた時にはもうエリーが来ていて、まさか移動しながらの発表もなかろうと後回しにすることにした。
「そっちは予定通りね」
エリーのほうの状況はティリカの召喚でだいたいのことは把握しているので、俺たちの状況説明がメインである。まずはバルバロッサ将軍との顛末を話すと、エリーはにんまりして言った。その後はエルド将軍配下との稽古。
「またそんなことして……怪我とか倒れるようなことは絶対しないんじゃなかったの?」
「頑張って一発も貰わなかったぞ」
はい、わかってます。そういうことじゃないですよね。でもどうしようもなかったんですよ、アンジェラさん。
「まあその分今日はなるべく休んでるよ」
進軍に備えて兵士たちも休息が必要だろうし、今日明日はいくら師匠でも無茶は言うまい。あとは魔物の動き次第だが、新しい加護持ちのテストと経験値稼ぎも兼ねて末っ子ちゃんに働いて貰えば俺は休める。待望の二人目の風精霊持ちでもある。加護も付いたしリリアの負担が減るだろう。
「それと後もう一つ。ええと、こっちに」
部屋の隅っこでいつも通り控えていた見学エルフちゃんたちを食事テーブルに呼び寄せる。朝食はパンとスープを貰って立ったまま素早く食べていた。俺の様子を一瞬たりとも見逃すまいと必死なようだ。それで肝心の末っ子ちゃんは寝不足なのか寝起きが弱いのか、目をしょぼしょぼさせて次女ちゃんに掴まってようやく立っている。
「なんでしょう、マサル様」
代表で答えるのはだいたい長女のマルグリットだ。次女で眠そうな末っ子ちゃんを気にしてるのがキアラリア。そして末っ子がシャルレンシアちゃん。名前は昨日暇な時間が結構あったんで、少しは交流しておこうと聞いてあった。加護が既に付いてるのに名前を尋ねるところから、なんてことにならずに良かったよ。
「ご褒美でマサルに付いて回っているオレンジ隊の娘らね?」と、エリーが首をかしげる。
「紹介するよ、三人は姉妹でね。この娘は末っ子のシャルレンシアちゃん」
「シャルレンシアはこれでも優秀な風の精霊持ちでな。戦場に出すには少々幼いのじゃが、二人の姉が付いておるし良かろうと……まさか昨日のかや!?」
リリアはすぐに昨日の寝る前のことを思い出し、どういうことか察したようだ。
「うん。加護が付いた」
「へ?」
次女ちゃんにすがりついていて、俺の顔を見ていた末っ子ちゃんがきょとんとしている。
「やはりか! なんとめでたいことじゃ!」
「昨日のってまさかマサル、こんな小さい子に手を!?」
「えっ、えっ?」
突然巻き起こった周囲の混乱もあって末っ子ちゃんは理解が追いついてないようだ。
「シャルに加護が付いたんだよ、良かったね」
次女ちゃんが冷静に末っ子ちゃんに言い聞かせている。
「ほんと? ほんとに?」
「本当だとも。あとで相談しながら加護をあげよう。あと、そこ。手は出してないから。指一本触れてないから」
だいたい一時も離れずみんなと居るし、見学エルフちゃんも三人セットだし、目を盗んで何かするなんて無理だってば。とりあえず濡れ衣を晴らすためにも昨日の寝る前の日誌の話を簡単に話しておく。
「ふうん。やっぱり側に置いたほうがいいのかしらね?」
「でもこれ以上人を増やすのもなあ」
ただでさえ嫁が二桁に届こうとしてる上に、村に戻ればメイドちゃんが十数人いるし、オレンジ隊も二〇〇名。新規追加も加えれば四〇〇名にもなる。加護持ちが上手いこと増えたからって、ただでさえごたついている今の体制をいじるのも考えものだ。
「村に残したメイド部隊を連れてきておく? 雑用係が居たほうがいいでしょ?」
「コームに居るのもあと二日だし、その後は移動と戦闘だろ。現状維持でいいんじゃないか?」
当面は防衛に専念する北方方面ならそれもいいかもしれないが、オレンジ隊から加護持ちが出たんだし、今はオレンジ隊との交流を深めつつ、メイドちゃんたちとは落ち着いてから、改めてじっくりたっぷり親睦を深めればいい。
そしてエリーたちと話してる後ろでは、三姉妹が最後の別れのような一幕を演じていた。
「リリア様やサティ様の言うことをよく聞いて、マサル様に迷惑をかけないようにするのよ?」
「うん」
「それと朝はちゃんと起きて……」
「いや、待って。君らはとりあえずは三人一緒でいいよ」
「え、いいんですか!? やったー!」
「シャル、ずっと一緒にいられるって」
何故かもうシャルレンシア一人で嫁にでも来るつもりだったようだが、サティより小さいのだ。他の娘と同じ対応はちょっとまずい気がする。
「そうじゃな。三人はオレンジ隊から抜いてマサル専属ということにしておくかの」
「じゃあ改めて三人は自己紹介だな」
ようやくコームの町に戻って防衛部隊の様子を見に行くことが出来た。いつもの城門の上にはすでにオレンジ隊の数人が詰めていて、現状を報告してくれた。今のところ魔物の動きは鈍いようだ。
今日から町の防衛は東方国家群のとある国がメインで担うのだという。俺たちが協力すると言ったら諸手を挙げて大歓迎してくれたそうだ。とはいえ魔物が大挙して来なければ俺の出番はない。ミリアムを城壁のオレンジ隊に預けるし、オレンジ隊も黒の魔法兵団程度の仕事は出来るのだ。
「そういえば屋台が出てましたよ。見に行ってみては?」
オレンジ隊の一人がそう教えてくれたので見に行くと、町の広場はたくさんの屋台と露店で賑わっていた。
「商魂たくましいなー」
食べ物が中心で戦地だけあって価格はずいぶんと割高だ。俺もやろうかな。輸送費用もかからないし、ボロ儲け出来そうだ。
でも実際にやるなら北方か? コームの町は制圧した翌日には盛大な市場を形成出来るほど後方の拠点に近いし、すぐにまた移動で商売出来る時間は少ない。対してラクナの町は峠を超え、荷運びには護衛も時間も相当かかる。
しかし普通の食料品だと売れ行きはそれほどでもないようだ。なにせ昨日大量の食料が手に入ったばかり。需要があるのは贅沢品で、酒とか甘味。あとは手間のかかった料理だろうか。うちでのお酒の生産はまだ始まったばかりだし、手間のかかる料理には人手がいる。簡単に儲けることは難しいようだ。
露店な酒場はやはり人気なようだ。キレイなおねーちゃんが数人、兵士たちの相手をしていた。見てるとその一組が連れ立って建物の中に入っていく。娼館も兼ねてるのか。戦場では一番の贅沢品だな。俺もちょっとムラムラしてきた。
他に戦場で需要のあるサービスって何があるんだろうな。武器屋? 鍛冶屋か。しかし前線の兵士の武器を修理して金をむしるのもな。あとは雑貨か。行軍があるし、旅に使うようなグッズとか替えの下着や靴なんかも売れそうだ。
あとは銭湯なんかどうだろう。でも需要はありそうだが、あまりお金は取れないか。
まあお金稼ぎはやろうと思えばどうにでもなるんで、命がけで戦地まで来ている商人の邪魔をすることもあるまい。
「宿舎に戻って休憩してよう」
昼寝……お風呂もいいな。宿舎は城壁に近いから変事があればすぐにわかるし。
だが宿舎に戻ってみると師匠が居た。
「暇か?」
暇だけど暇だと答えるとまた修行とか言い出しそうだ。
「時間はありますけど、今日は体を動かすのは嫌ですよ? お休みです」
「エルドが会って話したいと言っておってな」
ふむ。そろそろちゃんとした会談は必要だろう。と、その前に師匠に聞くべきことがあった。エルド将軍はどの程度信用できるのか。
そもそもだ。何故かまだ俺たちの正体はばれてないようなのだ。鎧から耳や尻尾を見せているサティとミリアムと違って、俺は謎のエルフ。エルフの守護者ということになっている。秘密に出来るなら秘密にしておいたほうがいい気がするし、エルド将軍への対応は師匠に確認しようと思っていたのだ。
どこまで話すのか。話せるのか。信用してもいいのか。
「話のわかるやつではあるが、言ってみれば俗物じゃな。お前らのことは利用出来るなら利用しようとするだろう」
だが、と師匠は続ける。
「ワシには逆らえん。黙っていろと言われれば黙っているだろうさ」
何しろエルド将軍の部隊の主力はビエルスの剣士たちだ。エルド将軍は自らの剣技と、配下の剣士の実力でもって軍組織で成り上がって来た。つまりそれは師匠の人脈でもある。師匠に逆らっては組織自体が立ち行かなくなるだろう。
「わしらの助力はやつにも利益のあることだ。余計な欲をかかねば問題なかろう」
まあ一番重要な部分、加護や使徒なのがばれなければ他はさほど重要でもない。報酬や褒美や、功績や出世の一切合切は関係ないし、協力して戦えればそれで十分なのだ。なるようになるだろう。
「ようやくゆっくり話すことが出来るな!」
部屋に入った俺たちにそう言って、エルド将軍は豪快に笑った。立派なヒゲが何かに似てると思ったら三国志の関羽だわ。それでバルバロッサ将軍が張飛。鎧もこっち風だし、顔も彫りの深い西洋風なんで単体で見るとそうでもないけど、二人とも体格はいいし、並べて見るとはまり役である。
今回の会談の同席は師匠に将軍、俺とリリアにサティに見学エルフちゃんからシャルレンシア。皆いつもの素顔を隠すスタイルだ。
そして最後に二刀のアーマンド。アーマンドにはさすがに俺たちのことがばれたようだが、師匠が言い含めておいたから気にしないでいいそうだ。
心なしかアーマンドの機嫌が良さそうなのはお役目から解放されたからである。剣聖の後継者探しと銘打って、しばらく世界各地を放浪させられていたそうだ。普通に旅してたらビエルスから王国まで来るのでも大変だもんなあ。歩いて王国に帰れって言われたら、俺なら絶対嫌な顔するわ。
「どうやらバルバロッサの阿呆が迷惑をかけたようだな。部下が無能だと指揮官は苦労する。そうは思わんか?」
「そうじゃな。頭の一つでも下げておれば何かと助けてやったものを、まったく愚かな奴じゃ」
二人してうんうんと頷いている。昨日の短い接触同様、エルド将軍の感触はよろしいようだ。
「さて、手短に行こう。お師匠様から話は聞いている。うちは剣士ばかり集めてたもんで、どうしても魔法使いの戦力が足りん。そこを補ってくれるならこれ以上ない話。この頭で良ければいくらでも下げよう!」
そう言ってぐいっと頭を下げた。
「うむ。遠慮なく頼るが良いぞ。黒の魔法兵団の一〇倍の働きを見せてくれよう」
「おお、そいつは頼もしい限り。それで報酬の話なんだが……」
うちはタダ働きが基本なんだが、さすがに師匠もそこまでの話は勝手にはしてないか。
「一切不要じゃ。補給も自前ゆえ、ただ敵にぶつけてくれれば良い」
「それではいささか俺の側ばかりに話が旨すぎるのではないか?」
贈り物には対価が、働きには褒美がいるのはどこの世界でも変わりがない。まあそれも対等な相手であればと続くのだが。
「得るものはある。妾はエルフが帝国や周辺諸国で、亜人だ下賤だなどと二度と蔑まれ、見下されぬだけの声望が欲しいのじゃ」
「なるほど。むしろここまでの戦果を見るに、エルフの力が見過ごされていたのが不思議なくらいであるな」
「それはじゃな……」
「ハイエルフか」
俺のほうを見て言う。秘密だって言ってんのにもうここまで話が漏れて来てるのか。まあラクナの町でハイエルフのことを話した時、リゴベルド将軍配下の幹部っぽいのが勢揃いしてたしな。漏れるだろうとは思っていたし、もともと広めるつもりだったから都合はいい。
「話を聞いた時は特別な力を持ったエルフなどと眉唾だと思ったが、実際に力を見ると信じざるを得んな」
「ハイエルフは別格じゃ。じゃが魔法に限れば並みのエルフでも人族の中でも随一。それを此度の戦いで存分に証明してくれよう」
「相分かった! エルフの力、せいぜい派手に喧伝すれば良いのだな? 任せておけ!」
「いや、見たままでいい。いらぬ虚飾は不要。それで十分伝わるだろう」
俺の言葉にエルド将軍がまた豪快に笑った。
「さすがはエルフの守護者殿。アーマンドを一瞬で倒してのけただけのことはある! いいだろう。まったくの飾り気のない、事実のみが伝わるよう取り計らおう」
会談はこれで終わりかな。そうそう、バルバロッサ将軍のことも確認しておかないと。
「奴とは随時連絡を取り合う手筈だ。別行軍とはいえ、ヒラギス南部の制圧ではある程度の連携はせねばならんからな。バルバロッサの軍に何かあればすぐに伝えよう」
「それでいい。では俺は宿舎に戻る。ここは戦場から遠すぎる……」
そう言って立ち上がる。領主の館は町の中心部で外の探知がほとんど出来なくなる。それに今日はまた蒸し暑い。戻ったらまずは入ろうと思っていたお風呂だ。
「あれがエルフの守護者……あの体格で大した迫力ではないですか?」
部屋を退出する俺の耳に、エルド将軍の声が聞こえてきた。小さいは余計だ。
「ずいぶんと入れ込んでいるようで。ついに探しものを見つけましたか、師匠?」と、これはアーマンドだ。
「そうさな。求めていた者とは少々趣が違うが、あれこそが――」
最後の言葉はよく聞こえなかったが、まあどうでもいいか。お風呂だ、お風呂。シャルレンシアはともかく、上の二人なら大丈夫かな。当分一緒にいるんだし、誘ってみてもいいかもしれない。加護持ちを増やすために交流を深めるのはとてもとても重要なことだろう?




