152話 ヒラギス国境の砦
フライで山を越えると、そこには広大な難民キャンプが広がっていた。
「おお……でかいな」
しっかりと様子を見るため、リリアに一旦止まってもらう。
眼下に見える難民キャンプの、その左手にある城壁がブルムダール砦だな。右手遠くに見えるのは元からある村だろうか、難民キャンプに飲み込まれそうになっていた。大きな川が横切るように流れていて、渡った向こう側は山岳地帯で、山を越えて行けばヒラギスなのだという。川向うはきっと魔物が出るのだろう。人が住んでいる様子はない。
「話には聞いていたけど、ちょっとすごいわね……」
アンは当然何か奉仕活動をする腹積もりだったのだろう。俺としてもその手伝いはするつもりではあったが、ちょっと手に負えそうもない規模に見える。
難民キャンプはシオリイの町が二、三個は入りそうな広さがありそうだ。一体何人くらい人がいるんだろう? 五万か? 一〇万か?
それにしてもちゃんとした壁がないな。申し訳程度に木の柵があるだけで魔物を防げるのか?
川沿いだから水の供給は問題ないだろうが、食料事情が悪いのは聞いている。だが何万人規模だと俺たちの手持ちの食料じゃ焼け石に水だな。
小屋は総じてボロく、石造りならいいほうで、ただのテントや柱と屋根だけなんて小屋も多くみえる。
住む場所はもっとちゃんとしたのが必要そうだが、これだけの人数分を用意するとなると……
一〇万人いるとして、二〇人が住める長屋を五〇〇〇軒で一〇万人分。一時間に一〇軒建てれば一日一〇〇軒。休みなしで五〇日か。お風呂やトイレもいるだろうし、もっと時間がかかるか?
だが魔力が尽きなくとも、魔法の行使にも疲労が伴う。一日一〇時間も魔法を使いっぱなしとなると、疲れて他のことはできなくなるな。
食料はどうだろう。一〇万人が一日二食として二〇万食。一匹のオークから平均して五〇キログラムの肉が取れるとして、一食一〇〇グラムとして五〇〇人分。毎日四〇〇匹狩ればいいのか。
無理かと思ったが案外いけそうだな? 家は一応もうあるし、狩りの合間に農地を作って収穫ができるようになれば、狩りは減らせる。その気になれば一〇万人でも養える。
だが途中立ち寄った村みたいに気軽に手は出せそうにもないし、俺たちがそこまでやる義理もない。
剣の修行も予定しているし、エリーの実家にもいかなければならない。それに最大の問題はこんな人の多い場所で派手にやって、魔族側に俺の存在がバレたら困るってことだ。
「何かやるにせよ、まずは状況を確認してからね」
やる義理はない。しかしできることはできる範囲でやっておくべきだとは思う。
「そうだな。もしかすると平和で何事もないかもしれないし」
俺の言葉にアンは頷いた。ヒラギスが滅んで五ヶ月くらいか? その間ここは誰かの手で運営されてきたのだろう。それが適切であるなら俺たちがあえて手出しする必要はまったくない訳だし。
「予定通り明日はまる一日は休みだ。宿を取ったら各自自由行動にする。行こう、リリア」
当初は物資を置いて用事を済ませたらさっさと移動するつもりだったが、みんなの疲労が溜まってきているので、一日休むことにしたんだが……これって俺は休めるのか? 何かやることになったら休息している暇はなくなりそうだ。
降りられそうなところが見当たらなかったので、砦にほど近い、難民キャンプのちょっとした空き地に着陸することにした。砦の門の周囲は難民対策か警備兵もかなりいて、うかつに空から近づくとトラブルになりそうだ。
着陸すると近くにいた人たちに驚かれたが、アンが愛想を振りまくと特に騒がれることもなかった。
「シラーが先頭でウィルが殿で」
まさかちょっかいをかけてくるとは思わないが、念のためだ。人が多すぎて怖い。シラーちゃんに喧嘩を売ってくるやつもそうそういないだろう。
シラーちゃん愛用の暗黒鎧だが、どうにか修行中ぶっ壊そうとしてみたが、さすがはエルフ職人謹製品。なかなか頑丈な上、シラーちゃんも手強くなってきて、結局あちこちが凹み、傷がついたくらいで、見た目がさらに凄惨になってしまっただけという結果になった。
まあ慣れてくるとデザインの酷さは気にならなくなるし、こうやって役に立つこともあるし、本人が気に入ってるなら、無理に交換する必要もないのかもしれない。
ウィルの鎧も似たような状況なのだが、こっちは安物ゆえの悲しさ。ベコベコになっても買い換えられずに我慢して使ってるという雰囲気を醸し出している。歴戦の冒険者に見えなくもないが、エルフに頼んであるのがそろそろ完成している頃だろうし早急に交換してやるべきだろう。
ゆっくりと難民キャンプの様子を見ながら歩く。ほとんどの人が着の身着のまま逃げてきたのだろう。身なりがよろしくないな。小さな小屋に何人もの人が寝転がっていて、死んだような目をしている者も多い。活気というものがまるでない。
「食料は足りてるのかな?」
かなりやせ細った感じの人が目につく。
「神殿も帝国もちゃんと支援はしているはずだけど……」
アンはそういうが、本人も疑わしげだ。
「長期滞在も考える必要があるかもな」
当座の目標である神託ではヒラギス国民の去就に関しては触れられてはいないが、さりとて無関係とも言い切れない。ヒラギスを救おうというのに、その国民が死にそうでは話にならないだろう。
「その時は妾がフランを送って行ってやろう」
「そうね。私もついていって、ついでにそのまま私の実家に向かってもいいわね」
少人数なら移動も早くなるし、あとでエリーに転移してもらえばいい。あまりパーティは分けたくないが、そっちのが全然楽でいいな。
「私のことは気にするな。急ぐ旅でもないし、貴様らといるといい修行になる」
ここ数日、ちゃんと相手をしてやったのが裏目に出たかもしれん。まあ俺にボコボコにされてからはほんとに大人しくしてるし、あえて排除の必要もないか。
難民キャンプの間を抜けて、砦へと続くメインストリートに出た。道幅は広くて両側に屋台や露店もぽつぽつと並び、そこそこ賑わっている。
満足に食べてない人は多いようだが、普通に屋台でご飯を食べてる人もいて、別にキャンプ全体が飢餓状態ってわけでもなさそうだ。
「いい匂いだな。なんか食ってく?」
砦に入ったら忙しくなるかもしれないし、食える時に食っとかないとな。
「やめときなさい。こんなところのは高いわよ」と、エリー。
「どうせ砦で買っても値段は同じじゃないか?」
アイテムボックスの買い置きで済ませてもいいが、出来立てが食えるならそっちのほうがいい。
それで目に入った串焼きの屋台で値段を聞いてみたが、そう高くない。やはり前線だと供給が多いから、肉の値段は安定するようだ。
ちなみに帝国の通貨は王都で入手済み。単位も同じで、コインの意匠が違うくらい。交換レートは王国通貨のほうが少し安かったが、ほぼ一対一で計算して間違いない。
王国通貨そのままでも大きな商いをしているところなら普通に使えるし、冒険者ギルドや商業ギルドですぐに交換してもらえて不便はさほどないらしい。
串焼きを一本試しに買って試食してみる。塩とコショウ、それと何かのスパイスでしっかりとした味がついている。肉は少し硬いが一口サイズに切ってあって食べるのには困らないし、噛めば噛むほど肉の味が口の中で広がる。
「なかなかいける。おばちゃん、そこにあるの全部ね!」
二〇本ほどあったから一人二本。でも一本ずつが大きいから間食には十分だ。
みんなで食べながら残りが焼けるのを待っていると、サティにちょんちょんと突かれた。
「ん、どうした?」
サティの目線の先では小さいネコミミがよだれを垂らしてこちらを見ている。
七、八歳くらいか? 獣人は集落でまとまって住むことが多いらしく、町で見かけるのは大人ばかりで、子供の獣人を見るのは初めてだな。どことなくサティに似てて、小さくて可愛らしい。
ここまでシラーちゃんに恐れをなして誰も近寄ってこなかったが、食欲が勝ったのか。
サティに一本串焼きを渡してやると、サティがその子に串焼きを差し出した。おそるおそる近寄ってきて串焼きを受け取る。
喉をごくりと鳴らして焼き立ての肉にかぶりつこうとしたが、すんでのところで食べるのをやめた。
「どうしたの? 食べないの?」
そうサティが聞くと、お母さんと妹に持って帰るという。よし、それなら二本追加だ。
「あ、ありがとう」
そういうと小さいネコミミは串焼き三本を大事そうに持って、走っていってしまった。よく見たら裸足だよ……
「なあおばちゃん、景気はどうだ? ここの人はちゃんと食えてるのか?」
「そうだねえ。飢えるほどじゃないけど、楽じゃあないね。私は屋台があるから食うには困らないけど、仕事もそうそうないしねえ」
だいたい見たまんまの話だな。
「それに動ける人間はあらかた兵隊に取られちまって、うちも商売上がったりだよ」
徴兵か。そうだよな。国を取り戻す戦いに否応もない。
おばちゃんによると一応強制ではないらしいし、申し訳程度の支度金ももらえたというが、冒険者ギルドの緊急依頼以上に拒否権はないようだ。
「はー。ここもどうなるのかねえ。偉いさんは近いうちに必ず取り戻すって言ってるけど……」
「さてね。俺たちここにきたばっかだし」
任せとけとか、そんなことを簡単に言えるわけもなし。
「冒険者のお兄ちゃんに言っても仕方ないか。ほい、これで最後だよ」
おばちゃんと話し終わって串焼きを全部もらうと、サティが獣人の子供に囲まれていた。座り込んでふんふんと子供たちの話を聞いている。耳に入る内容からして、さっきの子から情報が伝わったようだ。それでエサに釣られて集まってきたのか。
「それはもう食っちゃって」と、アンに残りの串焼きを渡す。どのみち獣人の子供たちに配るには手持ちの串では足りないし、アイテムボックスにご飯は大量に入っている。それを少しくらい分けてやればいいだろう。
「マサル様。みんな、この人がわたしのご主人様です。すごい魔法使いでAランクなんですよ」
様子を見に行くと紹介された。おおー、と歓声があがる。
ご主人様じゃなくて主人、旦那様なんだけどな。
「う、後ろの鎧の人は?」
俺に付き従ってきたシラーちゃんを見て、子獣人の一人が少しビビりながら言う。
「私の名前はシラー。私もマサル様の配下だ」
子供たちはこの情報にえらく感銘を受けたようだ。問答無用に強そうな見た目というのも結構な利点があるな。
まあ実際シラーちゃんは見た目に引けをとらない強さはあるんだけど。
「で、何を集まってきたんだ?」
聴覚探知で聞けた話で想像はつくが。
「みんなお腹が減ってるって……」
おやつがほしいのか、ガチで飢えてるのか? それが問題だ。
「食べ物は貰えるんじゃないのか?」
「帝国の配給だけじゃ足りないし、神殿のやってる炊き出しで俺たちは……後回しなんだ」
「それほんとう?」
様子を見に来たアンの言葉に頷く獣人の子供たち。
神殿の炊き出しで獣人は列から排除されるそうだ。後ろのほうに並べたとしても、炊き出しは滅多に最後まで回ってこない。全体に行き渡るだけの量がないのだ。
だけど炊き出しは数日に一回のことだし、このことで少数派の獣人が人間族にケンカを売ってまで主張することでもない。問題は帝国の配給のほうだ。そう一番年かさらしい子が説明してくれた。
最初のうちは配給は十分あった。仕事もあったし、足りない分は自分たちの稼ぎで補えた。
だが二ヶ月ほど前に仕事――砦の改修や難民キャンプの建設作業が終わってしまった。その上、働き手が兵士としてごっそり連れて行かれた。
そして人が減った分か、兵士に食わせるためか、食料の支援が減らされたらしい。ゼロになったわけじゃないようだが、ギリギリだったのを減らされては、減った分飢えるしかない。
どうにかしようにも、元気で戦えそうな者ばかりを連れて行かれてしまっている。
残っているのは現役を退いて久しい老人と、戦ったこともない女衆と、成人前の子供たち。
狩りに出る計画もあったが装備は兵士に行った者たちが全部持って行った。それにいくら身体能力が高い獣人でも、魔物狩りは素人が訓練もなしに出来るようなものじゃない。ましてや装備がないとか死ににいくようなものだ。
もちろん帝国やヒラギス公国の上層部に掛けあったり、帝国にいる獣人に支援を頼む使いを出したり、なんとか畑を作ってみたりと色々方策はうってみたが、いまや飢えで死人が出るか、誰かを奴隷として売り払うかの瀬戸際らしい。
で、子供たちはというと小遣い稼ぎが出来る仕事か何か食料が手に入るあてでもないか、難民キャンプをうろついていたところだったと。
「じいちゃん、ワシはいいからってもう三日もご飯食べてないんだ……じいちゃん死んじゃうよぅ」
そう言って一人の子が泣き出した。
「なあ兄ちゃんたち、お金持ちなんだろ?」
「あー、まあそこそこな」
Aランクだし、俺たちは装備も身なりもかなりいいほうだ。
「じゃあ俺を買ってくれよ! 冒険者になって一生懸命戦うからさ!」
無茶を言う。一〇歳にも満たない子供に冒険者が務まるはずもない。
「お願いだよ。なんでもするから!」
なんでもするからと言われても男の子ではさすがに食指は伸びない。
「お前、名前は?」
「カルル。兄ちゃん、俺を買ってくれるのか?」
「いやいらない。だがその心意気に免じて飯くらいなら食わせてやる」
「俺たちだけ食えても……」
「わかってる。ここの獣人は全部で何人くらいいるんだ?」
「えっと……たぶん千人くらい?」
さっき計算したら一〇万人でもいけそうだったし、千人程度なら余裕だな。なんなら俺のお小遣いだけでも足りそうだ。
だがもし援助するとしてもあまり目立つ行動は取りたくない。この状況で大規模な食糧援助なんかしたら恐ろしく目立つだろう。
獣人はエルフみたいな完璧な情報統制が期待できるだろうか? それとも当座凌げるだけの食料をまずは渡しておいて、残りは神殿経由の匿名の援助ってことにアンに頼んでできるだろうか?
まあそこら辺はおいおい考えるとして、とりあえずはすぐにでも助けないと死人が出そうだ。
「いいだろう、カルル。俺が助けてやる」
「ほんと!?」
「マサル様がこう言っているのです。もう安心ですよ」
「そうだぞ。主殿に任せておけば万事間違いない」
だがまずは相談が必要だな。
フランチェスカをのけて、みんなで小さく寄り集まって顔を突き合わせる。内緒の家族会議だ。
「食料はたっぷりあるし、いいことだと思うわ、マサル」
アンの言葉にみんなもうんうんと頷いた。
「それでなるべくひっそりとやりたいんだけど、獣人もエルフみたいに秘密を守れるかな?」
「うーん。千人も居てはあまり期待しないほうが……」
シラーちゃんは否定的か。
「どのみちヒラギスでは派手になるんだし、もう多少はいいんじゃない? それにもしかすると獣人から加護持ちが出るかもしれないわよ。そう思って俺がやるって言ったんでしょ?」
そうエリーが不安そうにこちらを見ている獣人の子供たちをちらっと見ながら言った。
加護か。考えなくもなかったが……
「千人くらいなら俺のお小遣いだけでもいけるかなって。剣闘士大会の時のお金があるし」
剣闘士大会で手に入れた一億円。千人なら一人頭一〇万円使える。道中の狩りの獲物と合わせれば何ヶ月間かは余裕で暮らせる額だ。
「アン、支援を神殿経由でこっそりとできないかな?」
「できなくはないけど、情報が漏れる対象が獣人から神殿になるだけで、あんまり変わらないと思うな」
それもそうか。神殿は信頼できる組織ではあるのだろうが、信用できるかって言うと、ちょっと怪しげだ。むしろ一番俺の情報が漏れちゃいけない場所でもある。
「なんなら俺が実家に言ってみますか?」
ウィルの伝なら絶大だし、裏から手は回せるだろうが、こいつは家出中だ。
「他にどうしようもないような時まで、それは取っとけ」
さて、どうするか?
ひっそりと支援するか? 加護を目当てに出来うる限りの支援をやってみるか?
でも加護を目当てにってのも何か違う気がするな。単に腹をすかせて泣いている子供を助けようと思っただけで……
ふとじっと俺を見てるサティと目が合った。さっきの子供、出会った頃のサティと被るんだ。それを見てしまった以上、見過ごすことは精神衛生上よろしくないな。
細かいことは脇に置いておこう。
「決めた。多少目立つのは気にしないでやれることをやってしまおう」
難民キャンプ全体をどうにかしようっていうならともかく、千人程度のグループを助ける程度なら、さほど大きな騒ぎにもならないだろう。
「マサルだけでやるの?」と、アン。
「わたしもお手伝いします」と、サティ。
「サティとシラーはもちろん連れて行く」
「じゃあこっちはこっちで動いておくね。何かあればすぐに言うのよ?」
「もちろん頼りにしてるよ」
道中に狩った獲物は全部使ってもいいと言われたが、とりあえず半分だけ使うことにした。難民キャンプ本体にも援助が必要かもしれない。
冒険者ギルドのことは物資保管用の倉庫作りも含め、エリーがやってくれることになった。俺は後から行って物資を放出するだけでいい。
旅行の日程は変えないことにした。もしかすると俺は移動できないかもしれないが、その時はフランチェスカだけ送ってあとで転移で適当に合流すればいい。
最後に連絡用にティリカに召喚獣のねずみをもらって鎧の中に隠しておく。本当は俺のも出して連絡を双方向にできるようにしたかったのだが、俺のはレベル1でもふくろうで、フランチェスカのことを抜きにしてもちょっと目立ってしまう。
「じゃあがんばってね、マサル。ああ、フランチェスカはこっち。彼らのことはマサルに任せて私たちは砦に行くから」
そう言ってアンがフランチェスカを引っ張っていってくれた。
「よし、カルル。獣人まとめて面倒見てやるから案内しろ」
「でも……なんで助けてくれるんだ? 獣人は貧乏でお金なんかどこにもないぞ?」
歩きながらカルルが不安そうな表情で聞いてきた。都合が良すぎるんじゃないかと、今になって思ったのだろうか。
「俺は獣人が大好きなんだよ」
「それだけ?」
すごく大事なことだと思うんだが。
「心配しなくても、お前を買おうだとか見返りを寄越せとか言わないよ。この前賭けでかなり儲けてな。お金に余裕があるんだ」
「サティ姉様と主殿は王国の剣闘士大会に出て大活躍したんだ。特にサティ姉様は大穴で優勝したから、賭けておいてすごく儲かった」
「王国って結構大きい国だろ? すげー!」
「うん。決勝トーナメントに残ったのは皆、私などは足元にも及ばない戦士揃いで、そこで勝ち上がった二人は本当に強かった」
「え? そっちの小さい姉ちゃんのほうが強いの?」
「サティ姉様も主殿も、一人で巨大なドラゴンを倒せる実力の持ち主だ。私など相手にもならん」
「ドラゴン倒したことあるの!?」
「あるぞ。話を聞きたいか? そうかそうか。俺が最初に倒したのは飛竜で、あれは半年くらい前――」
これくらいの子供は簡単に俺の話で喜んでくれて実に楽しいな。