愛と欲望の放課後劇場
ぬるいBLです。
平穏な高校生活も折り返しの二年生半ば。
俺は初めて体育館裏という場所にお呼ばれしてしまいました。
机にしのばされた手紙には一言。
『放課後、体育館裏で待っています』
体育館裏だなんてベタすぎる。
告白?ならば喜んで行くが、それなら名前ぐらい書くだろう。
脅迫とか恐喝とか?マジ帰りたい。
決闘?いやいや文芸部員と果たしあう意味がわからん。
とりあえず人気の無い場所に呼び出されるなんてろくなもんじゃない。
しかし俺は一番可能性が低いにもかかわらず、ついつい期待して体育館裏に向かった。
居たのが女子生徒ならそのまま出て行く、ごつい男子だった場合は・・・まあ話ぐらいは聞こう。
んで髪色が金色とか赤とかメッシュの男子生徒だった場合はダッシュで逃げる。
よしオッケーいくぞ俺。
そろりと壁際からのぞく。
・・・・学ランだ。
その時点で帰りたくなったが、失礼な事をして教室に乗り込まれるのも嫌なのでもっと良く見る。
背は俺より小さくて細い。髪はキャラメル色だが地毛のようだ。
そして見覚えが無い。
俺はいったん壁の影に戻り考えた。
みたところヤンキーでも運動部でもない男。用件が思いつかないぞこれ。
「あの!」
「うおっ」
いきなり声をかけられて驚いて見るとさっき向こうにいた男が目の前に立っていた。
「あーっと、呼び出したのって君?」
「はい」
こくりとうなずく。あ、なんか可愛いかもしれない。
「良かった、きてくれて。」
安心したのかやわらかく笑う目の前の男。
顔っちっせー、まつげ長ー、色白ー。
同じ男とは思えんな。こんだけ綺麗な顔だとさぞやモテることだろう。
「あの、俺の顔になにか?」
「悪い、なんでもない。」
こんな可愛い子が恐喝とか出来るとは思えないから、消去法で決闘かなあ。
いやだなぁ、俺が弱いのもあるけど、これうっかり怪我とかさせたら周りが黙ってなさそうだ。
「で、なんの用」
俺はだまって男の用件をまった。
「俺、一年の渡辺薫っていいます。」
「俺は間宮静流。ってもう知ってるか。」
呼び出したぐらいだしな。
渡辺はうなずいてからそのまま俯いて意を決したように顔を上げた。
「先輩、俺と殴り合いしてください!」
「無理です!!」
思わず敬語になったっつの。
「じゃあ殴ってください!」
「嫌だ。断る!」
もはや果し合いですらないし、そういうのは猪木に頼みなさい。
俺に殴られても気合は入らないから。
「そんなこと言わずに、一度でいいんです」
「なにがどうしてそうなった!意味がわからない!」
「言ったら殴ってくれますか!?」
「殴りません!」
「なら言いません!」
本当に意味がわからない。
しかし渡辺君はいたって真剣だなにかわけがありそうだけど、理由があれば殴るって話ではない。
「なぐってやる事はできんが、話してくれればなんかほかに解決策が見当たるかもしれないだろ。」
諭すようにいってやる。
「なら他に解決策がなければ殴ってくれますか。」
「あーもし殴る以外どうしようもなかったらな。」
逆に殴ったところで解決する問題なんてないと思うが。
「先輩のことが頭から離れないんです。」
渡辺君が俯きながら話す。
立ってるのもなんなので壁に寄りかかるように座った。
「入学式に貧血で具合悪くなったところを保健室に連れて行ってもらって。」
あーそんな子居たねえ、俯いてたから顔見てなくて気が付かなかった。校長の長話聞かずにすんで助かった。その節はどーも。
「優しいなって。それから気になって、いつも考えちゃって頭から離れなくて」
「へー」
「先輩が体育の時間とか、かっこよくて目が離せなくて」
ええええっと。
「俺、どうしたらいいか解らなくて。先輩が他の人と一緒にいるとなんか凄い嫌で、どんどん女々しくなってきて。これ以上見てたらもう引き返せなくなりそうで」
俯いているから表情はわからないが、渡辺君の耳が赤い。
俺の自意識過剰じゃなければこれって。
「だから」
顔を上げてこっちをまっすぐ見つめる渡辺君。
白い肌が真っ赤にそまっている。
「だから?」
長いまつげが震える。
なにか言いたげに開かれた唇からため息が漏れるその姿に思わず俺はゴクリと喉をならした。
「だから、本人に殴って喝いれてもらおうかと!」
男らしいいいーーーー!
見た目からは想像できない雄雄しい解決法なんだけど!
いやいや、その解決法ひりだす思考に女々しさなんてないと思うぞ。
渡辺君は何かを期待した目でこちらを見ている。
困った、話を聞いても殴ろうなんてひとつも思えないぞ。
「ってか、そこは普通に付き合ってくださいってとこじゃねーのか。」
どっこいしょと立ち上がって見下ろす。
夕日が逆行になって俺の顔は見えないはずだ。
「・・・・」
渡辺君すげえアホ面なんだが指摘しないほうがいいんだろうか。
「俺は男です。」
「俺も男だけど?」
「付き合ってくださいっていったら付き合ってくれるんですか?」
「ソレは言われてみないとわからんな。」
「ずるい、そんな答え方。」
「そうだな、俺渡辺君が思ってるほどやさしくもないし。」
それで嫌になるなら渡辺君の問題は解決だ。
それはそれでいいと思う。
そこらの女子よりよほど可愛いなとは思うが、所詮俺と同じもの付いてるし。
「わかりました。」
沈みかけの夕日に遠く聞こえる運動部の声。
あれ、わりと完璧なシュチュエーションじゃねこれ。
「間宮先輩、付き合ってください」
俺が答えようとすると渡辺君がさらにもう一言。
「付き合ってくれなきゃ先輩の恥ずかしい写真をばらまきます!」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・はぁ」
途中まではわりと完璧だったんだけどなあ。
脅迫してでも俺と付き合いたいと思ってくれるのを喜ぶべきか、教育的指導を加えるのが先か。
不安そうに俺を見つめる渡辺君。
とりあえず俺は最初に後輩の不安を取り除いてやることにした。
「俺でよければ、よろしく。」
ちなみに恥ずかしい写真は着替中の写真だった。
写真部から買ったらしい。
渡辺君よ。こんなんしっかり懐に仕舞ってる時点で十分引き返せないレベルだと思うぞ。
翌日
「はよーー、静流。」
「おー」
「昨日の呼び出し結局なんだった?果し合い?告白?脅迫?」
「んーーしいていうなら全部。」
「どういうこと!?複数人に待ち伏せされてたの!?」




