プロローグ
*プロローグ*
その日は、のどかな村に住んでいる少年の、10歳の誕生日だった。
彼は家族のほかに、村人全員から祝福され、盛大なパーティーまで開いてくれた。小鳥たちまでもが、「おめでとう」と言っているかのように朝から歌を歌っている。
小さな村ではあるが、村に住んでいる人みんなが優しく接してくれるこの場所が、少年にとって安らぎの場所であった。いつもは仲の悪い両親も、今日は笑顔だ。
彼は幸せの絶頂にいた。そう、少年のように明るかった太陽が沈むまでは―――――。
盛大なパーティーが幕を閉じ、少年は親に頼まれて暖炉に使う薪を集めに村から少し離れた森へと向かった。
「よしっ。」
ある程度薪が集まり、森を抜けたその時だった。
バァァァン!!
巨大な爆発音とともに、地面が揺れた。なんだ?何があった。少し先をみると、村があった場所が真っ赤に染まっている。
少年はしばらく呆然としていたが、村人たちの甲高い叫び声や悲鳴が耳に入り、我に返って村に向かって走り出した。
村の目の前まで来た。燃えていた。しばらく言葉をなくし見つめていると、深紅の炎のなかで、黒い影が揺らめいた。
「・・・?」
コツコツと足音を立てて近づいてくる、その影の正体は、見知らぬ女だった。
その女はクスリと笑うと、
「・・・生き残り・・・か。運がいいわねぇ、あんた。」と、呟いた。
女のニヤニヤと笑う顔を見て、少年は悟った。こいつが、みんなを・・・。
ふっと突然女の顔から笑みが消えた。
「―――何よ、その顔は。」
低く、殺意のある声に少年は震え始めた。涙が出るのを必死にこらえて、彼は女に問う。
「お、お前が・・・皆を・・・こ、殺したんだろ・・・?お前・・・誰なんだよ・・・?」
おそらく、彼は女を知らず知らずのうち睨んでいたのだろう。言い終わらないうちに、女の腕がシュッと伸び、目の前が一瞬赤くなった。
少年は、始め何が起こっているか分からなかった。
女の手には血まみれになった何かを持っている。そして、視界が悪い。どうしたんだ・・・?
彼女はゆっくりと手を開く。なかにあったものは―――少年の左目だった。
「私はね、魔女って言ったほうがいいかな?まぁ、生きているだけありがたく思いな。あんた以外はみぃーーーんな死んじゃったからね。」
女はそういうと、耳をつんざくような高い笑い声をあげながらその場からいなくなり、少年だけが残された。
日が出てくるにつれ炎は弱まり、焼けただれた村のなかへ少年は入っていった。
しばらく歩いていると、何かが足に当たった。それを拾い上げ煤などの汚れをふき取ると、それが母の持っていたブローチだとわかった。
家族モ、優シカッタ村ノ人タチモ、ミンナイナクナッテシマッタ。僕ダケヲ残シテ・・・。
涙が出た。残った右目から大粒の涙がこぼれ出て、拭いても拭いても止まらなかった。
この日の朝は、小鳥の歌ではなく、憎しみのこもった少年の叫び声が響き渡っていた――――。