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王の竜玉  作者: ito
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不穏な動き


神楽が後宮に戻らなくなったある日のこと。

日が落ちるのも早くなった秋の夜

肌寒くなった部屋で一枚羽織を羽織りながら緊急を要する採決の仕事ではなかったが持てあました時間を潰すために、執務室でいつものように仕事をしていた。


足下に横になって欠伸する虎の頭を時折撫でながら、ただひたすらに仕事をしていた。

欠伸の途中で虎がふと何かを察したのか、入り口の扉をジッと見つめピクリとも動かない。その反応に竜将軍も入り口に目を向けると誰かが走ってきている音がする。

バタバタとこんな夜に何かあったのだろうかと、持っていた筆を置き

すぐさま叩かれる扉に向かって


「入れ」


と招き入れた。


「はぁはぁ・・大変です!竜将軍!!ついに露国が!!露国が動き出しました!!」


荒い呼吸を押さえるように大きく肩を動かしながら翔大が叫ぶように報告した。


ガタリと手に持った筆が落ちて書き上げたばかりの書簡を黒く汚していく。広がる墨は不安を煽るかのように黒々と書簡の文字を飲み込んでいった。


「馬鹿・・・な・・。あり得ない・・。将軍達に三老を集めよ!!」


露国が動き出すことはあり得ないことだった。

そうあり得ないことだったが、そんなことは言ってられない。敵国が動き出した以上何らかの手を打たねばいけない。


すぐに頭を切り換えて、発して命令に翔大は転びそうになりながら走っていった。


(・・落ち着くんだ竜将軍!!落ち着いてよく考えなさい!ここで焦ってはいけない!!)


焦りを隠すようにどっしりと椅子に座り込み、組んだ手を仮面に押し当てて考える。

自分を竜将軍として第三者の視点になって考えれば焦っていた感情が落ち着きを取り戻し、ゆっくりと考えに浸かれた。


(露国は藍光の隣国。先ず攻めにはいるなら藍光に攻め入ることになるだろう。だが何故今の時期に?

藍光と露国には国境には高い山があるはずだ。今の時期は秋。山ならば既に冬に近い状態のはずだ。その状況下で軍を進めるなど、正気の沙汰とは思えない。


攻めはいるなら雪解け後の季節だと思っていた。それまでに備蓄なのどの整備をきちんとしたかったのに、準備は整っていない。

それに秋は兵を徴集できない。みな村に帰り刈り入れ時だ。安定した食糧の自給を獲るためには兵の徴集はするわけにはいかない。


ちくしょう!!何故この時期なんだ!!時期があまりにも悪すぎる!!)


いくら考えても答えは出てこない。

ただ敵国が兵を出し友好国に手を出してきた以上何らかの手を打たねば、それこそ他国に示しが付かない。

友好を結んでおきながら、被害が出ても何もしなかったとなればせっかく結んだ他国との友好が一気にダメになる。

ダンと拳で机を叩いた。

大きな音にビクッと身を縮こまらせる虎。


「クゥ~ン」


私の怒気にやられたのかヘニョリと垂れた耳と尻尾。

こちらを覗うようにゆっくりと近づいてきて、慰めるように机の上で固く握りしめた拳をペロペロと舐めてくる。


「フゥ~~。すまん八つ当たりした。ごめんな。」


解いた手でガシガシと頭を撫でるとゴロゴロと虎が鳴いた。



(どうやらまだ落ち着いてないみたいだ。ッたく、部下に心配させるなんて上官失格だな)


ふと口元が弛んだが、それも一瞬。

しっかりと結び直して、椅子から立ち上がる。


「来るなら来い。閃の国に一歩たりとも踏み入れさせはしない」


暗示のように囁いて、しっかりとした足取りで部屋を出た。

例えまた戦いになろうとも、閃のいる国を守るだけ。

それだけが私の使命なんだ。



更新が遅くなり申し訳ありません。ストックが溜まらず今月の更新は5話ほどの予定です。

亀さん更新なのですが拝読いただければ幸いです。

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