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王の竜玉  作者: ito
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壊れだした歯車③


4つめは何と言っていいのか分からないが外交面の変化だ。

外交と言っていいのか分からないが、藍光の紫翠姫と惷国の礼音は未だこの城に留まっている。

引き留めているわけでもなく、彼らが居座っているわけでもない。

だが一国の姫と王子だ。

無下に扱うことも出来ずにその接待を竜将軍である私が行っている。


だが、どちらも難攻不落の城のように攻略は難しい。


藍光との和睦はとても魅力的で紫翠姫を無下には扱うことも出来ずに「お会いしたい」という書簡が来れば無理に時間を作ってご機嫌伺いするしかない。

王妃へと望んでいる今、王のことを知ってもらおうと話をするが、何故か姫は私のことばかりを聞いてくる。

暑苦しいほどの熱視線を送ってくるが、まさかなッと思って気づかないフリをするがいつの間にかいなくなる藍光の侍女や陽月に舌打ちがしたくなる。

一応男としているのに何故に姫と二人っきりの空間を作るのだ。


というか、姫どうか体を押しつけないでください!!

腕に押しつけられる柔らかな感触は男じゃなくてもヤバイです!!


不自然じゃない動きで姫との空間を空けながら何とかその感触から逃げ出した。

といか、何故に出されたお茶に痺れ薬や媚薬などのヤバイものが混じっているのだろうか。

媚薬の時は本当にやばかった。

部屋をすぐさま飛び出して、後宮へと逃げ帰った。

そして頭から冷水を被って、火照る体をさまして部屋に鍵をかけて閉じこもった。

後から来た閃に開けるように怒鳴られたが、今彼を見たら自分から飛びかかり、思いを打ち明けてしまいそうで、必死になって言い訳をして何とか彼をなだめた。


それ以来藍光から出されるものには口にしないように決めた。

それなのに次はお香ときた。淫靡な香りを嗅がされたときはすぐさま部屋の窓や扉を開けて換気した。


全く藍光が何を考えているのか分からないが、閃の王妃に相応しいか少し疑問に思ってしまう。


それでもやはり藍光との交友関係のために竜将軍の客人である以上私がもてなさなければならない。


外交関係でもう一つ問題は礼音だ。

露国についての話し合いは璉国の古狸より厄介だ。

いざ話し出そうとすると

「お茶でもどうですか?」

「国からおいしい果実を送ってきたんです。いかがですか?」


最初は物珍しい菓子や茶で興味を惹こうとしていたが、さすがに二度目に剣を抜いたことが功をそうしたのか、次からは国に伝わる秘伝の治療法の書簡を取りだした。

これはさすがに私も押し黙った。


それは何十巻もある薬草図鑑で医師や薬草を扱う商人や薬師なら喉から手が出る程欲しい一品だ。

これでも医師の端くれ。

それを目の前に出されたとき、しぶしぶ長々と礼音と茶をするしかない。

茶をするといっても私がただ、書簡を読みそれをただ礼音が眺めるという無駄な時間である。

ある時も持ち帰って読みたいということを頼んでみたが


「一国の国宝を貴方に貸し出すことは出来ませんよ。それなりの対価がいただけるなら別ですが。」


「対価には何を望む?出来る限りは考慮する。」


ニヤリと嫌な笑みを浮かべて礼音がスルリと手を伸ばしてくる。

頬に触れるか触れないかの距離で手が止まると


「愛しい人の顔が見たい」


「!!!!」


ザッと後ろに下がるが、礼音の手が腕を掴んで距離が取ることが出来なかった。


「選ぶのは貴方ですよ。・・・神楽様」


パァーンと高い音が響いて赤く頬を腫らしたやはりうっすらと笑っていた。

掴まれた腕とは逆の手で礼音の頬を打ってしまった。

一瞬手を見つめて悩んだが


「・・・戯れは止めろ!!今日はこれにて失礼する!!」


身を翻して後宮まで去った。

高鳴る胸がイヤだった。

閃とは昔からの付き合いで女扱いなど受けたことがない。

(これを知ったら閃は泣きそうだが・・・)


それなのに礼音の前では女である自分が出てしまう。

嫌な寒気がブルリと震えを誘う。

それを誤魔化すように腕をさすり、考えないようにしている。

本当に外交って難しい。



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