運命の出会い⑤
とたとたとた
「お義母さん!!患者さんきたよ!!あ!起きたの?」
いきなり入ってきた少女に今度こそ閃は大きく咳こんだ
「おやおや・・・。すまないねぇ、神楽。ここは任せてもいいかい。私は患者さんを見に行くから」
「はーい。」
腰を上げようとしたお婆さんの服を閃は縋り付く気持ちで掴んだ
そんな気持ちを察してか
「大丈夫。大丈夫。」
閃の頭を撫でゆっくりと閃の手を放した
お婆さんの去る音を聞きながら、閃は顔を上げられなかった
そんな二人の静寂を破るようにクゥーーと音が鳴った
閃が顔を上げると真っ赤な顔した少女がお腹を押さえていた
「き、気にしないで!!何でもないの!!」
慌てて手を振るがまたクゥーーとお腹が鳴る
そのあまりにマヌケな音に閃は吹き出してしまう
「笑う必要ないじゃない・・」
頬を膨らませる少女が何とも可愛らしい
「・・・ありがとう。君のおかげで体もう痛まないよ。」
治療をしてくれたのはそう言えばこの子であった、と思いだした閃は真っ直ぐに頭を下げた
今度は少女の方が笑い出した
「な、何がおかしいんだ?」
涙を浮かべて笑う少女に今度は閃が眉をひそめる
「あはは・・・ご、ごめんなさい・・・、はぁはぁおっかしい。だって、私の治療ってかなり痛いらしいから喜ばれるより、怒られることが多いんだ。だから、凄く嬉しい。こちらこそありがとう。」
満面の笑みの少女にドキリとした
顔が赤くなるのを閃は自覚した
二人して目が合うと、お互いがおかしくて笑った
「そう言えば君は何て名だい?僕は閃よろしく。」
「私は神楽。よろしくね、閃」
これが二人の出会いである
二人はこの村で出会い、育っていく
互いに惹かれあい、その運命に翻弄されて行かれることも知らずに・・・