互いの利害②
「なるほど。礼音様にとって源国とは目の上のたんこぶ。排除したいもの。ここで私に源国と我が国の裏切り者の内通が見つかれば璉国は源国を撃つ理由となる。惷国にとってはありがたい存在と言うことだな。」
笑みをたたえた礼音はさらに笑みを深めて、わざとらしく拍手をする。
「さすが、竜将軍。ご理解が早い。璉国は膿の排出、我が国は源国の失脚。そして璉国とさらなる友好が結べればさらに有益。互いの利害が一致していると思いますよ。」
拍手を白けた目で見ながら竜将軍は背を向けた。
「それはどうかな?」
「といいますと?」
「確かに内通者は痛い存在だが、源国と戦う理由にはならない。私は陛下の敵となるものを倒すだけです。陛下を害するものを全て倒すのみです。貴方の手を借りずとも敵は倒します。また貴方が敵になるようなことがある場合、例え一国の王子であろうと容赦はしません。」
最後を強調づけながら背を向けて歩き出そうとしたが
「なら閃陛下の為ならどうですか?」
「何?」
足が止まった。
「色々な人が刺客を閃王陛下と竜将軍に向けて放っています。」
「知っている。すでに何名か倒してきちんと礼状と共に送ってきた相手に返した。」
「えぇ。それは知っていますが、ですが刺客の中に露国の者はいましたか?」
「何故私が貴方に陛下の刺客について話さないといけない!」
何故自国のトップシークレットの話を他国の王子に話さなければならない。意味が分からないとばかりに大きな溜息を吐きながら怒気を含ませて言い放ったが
礼音は含んだ笑みを引っ込めて表情を改めた。
ふざけた雰囲気がガラリと変わり真剣を交えるような張り詰める緊張感が礼音から放たれる。ビリビリと肌に感じる強さはとっさに剣に手が伸びそうになるが、理性が何とか止めた。周りに生き物の気配が消えたかのように静まりかえった空間で
「露国の刺客は気をつけろ。他国とは違う卑劣な強さを持っている。武こそが正義。武で成り立つ国だ。例え貴方が強かろうと油断はするな。」
礼音の声が響いた。
「・・・露国について何か知っているのか?」
礼音の強さに圧倒されながら何とか返答できたが、弱腰な返答だ。
「知りたければ、部屋に来られよ。お話ししたいことがあります。」
仮面越しに礼音の表情を覗うが先ほどと変わらず真剣みを帯びている。
何を考えているのか分からない表情に舌打ちしたい気分だ。
だが、露国は乱戦が続きまともな情報が入ってこない。
暗殺や殺し合いが日常の露国で制圧が可能だろうか?
制圧するにはその国を知らなければただ上から押しつけただけの武力の制圧だ。
露国の情報は喉から手が出るほど欲しい。
そのために虎穴に入るのか?
「いかがかな竜将軍?」
しばらくして礼音が嫌な笑みを浮かべて返答を求めてきた。
「お願いしよう」
こちらも負けずに口角をあげて笑みを浮かべた。
ふんっ!良いだろう!
そちらが何を考えているか分からないが虎穴に入らずんば虎児を得ずだ!
私は陛下の竜だ!!虎だろうが何だろうが仇なすものを倒すだけだ!!
歩みを止めていた足を再度動かし、虎穴に飛び込みに行った。