互いの利害①
さてこれからどうしよう。視察も終わり閃との昼食もとった。
といってもかなり時間を費やしてしまい、日もだいぶ傾き始めている。
後やるべきことといえば先の戦いで分かった三老の一人燕長官と黒の将軍玄偉宗卓の敵との密約についてだ。
これはまた難しい問題だ。
武官と文官は国を支えるという名目は同じだが常に対立する者同士
確実に互いを忌み嫌い合った手いる。もしどちらか一方に偵察をしに行けばトカゲの尻尾のように切られるだろう。
それがあってはダメだ!!璉国の膿を一度に王の手によってだすことで国は変わる。
人が変わる。閃が英雄として名を上げることが出来る!!
敵を利用しようとしているのはこちらも同じか。
自嘲めいた笑みを零して、武官は文官どちらを調べるかは大きな分かれ道だが竜将軍は、迷っていた。
「おやこれはこれは、麗しの竜将軍ではないですか?」
後ろからかけられた声に今日は厄日だと思えた。
振り返りたくもないがこちらに近づく足音。
いくら傘下におさめたとはいえ一国の王子を無視することは竜将軍にはすることは出来ずに、イヤイヤながらに振り返ると
いつもにもまして色気をまき散らす礼音王子がいた。
簡素な紺色一色の服装に見えるが、生地は絹から作られているのか光に当たると光沢が見える。
今神楽が着ているのは簡素な綿生地の服装。軍のトップである竜将軍が何とも嘆かわしい格好だが、いずれ去る身で豪華な衣装などは必要ない。そんな費用に充てるくらいなら薬草の肥料や王都で働く者の賃金を少しでも増やしたい。
故に公式の仕事以外は簡素な衣装を何時も身に纏っている神楽にとっては、礼音の着る服は質の違いを見せつけられて、嫌な気分になる。
「これは礼音王子。何用ですか?用がないなら失礼したいのだが。」
これ以上ないほどの嫌みを言いながらもそれを気にした様子はなく礼音は竜将軍の前で高位の婦人に対する礼をした。
「どういう意味です?返答次第で殿下を侮辱罪で処罰できますよ。」
「深い意味はありませんよ。ただ女性に対する礼をとっているだけですよ。あなたなら良くお解りのはずだが?」
何でも知っているような目が竜将軍を見つめてくるが、何ら思うことはない。
「それより、竜将軍は源国について何か探っておられるようですが、お力になれませんか?」
ニヤリと笑う礼音にヒヤリと嫌な汗が背筋を流れる。
確かに源国と黒の将軍と燕官吏の不正が見つかっている。それの情報集めをしていたが隠密に行動している。なのに何故他国のそれも王子が知っている。
先ほどから変わらない礼音の様子に手合わせはしたことはないが強いと感じる。他国を探っていたなど褒められたことではなく、どう言い逃れをしようかと沈黙を持って考えていると
「別に言い訳など無用ですよ。私も源国の焦臭い行動は知っていました。そこでたまたま貴方が探っているのが見えたので。互いの利害は一致してると思いますよ、どうですか?」
「利害とは?」
「源と惷国は隣国です。昔から因縁のある同士なのですよ。今回は同盟で一緒に戦をしましたが、隙があれば因縁つけて源国と戦していたでしょう。まぁ互いに貴方に負けましたが。」
一ヶ月ぶりぐらいの更新で申し訳ありません。
上半期の締めの9月を何とか乗り越え執筆できました。
今月の間に5~10話ほど掲載予定です。
そのあとまたお休み期間をもらって執筆して怒濤の勢いで上げる予定です。
最後の締め当たりは出来ているのにそれまでの道のりが長い!!
ここまで読んでいただきありがとうございます。