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王の竜玉  作者: ito
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王女の想い①

私は藍光国第一王女紫翠。王家に生まれし者は国のため、民のために望まぬ結婚が迫られるのが世の常であることは理解しております。

ですが、まさか私の嫁ぎ先が璉国とは、あまりの非道に父を心から憎みました。


我が藍光国は他国との和睦などは行っておらず独立国家として成り立っております。他国と貿易をせずとも我が国は豊かな森に豊かな海があり、それは天然の防壁ともなり我が国は確固たる地盤のもと繁栄をしてきました。

しかし、近年隣国である露国の情勢が焦臭く、国境である森付近で事件が多発し、多くの犠牲者が出始めました。

すぐに我が国の軍が動きましたが、戦闘の場数が違いすぎて連戦の敗戦を強いられました。

王である父は源、惷や采駕の国々に助けを求めました。

交流がなくても、7カ国は昔から何処かの国の危機に遭遇せしときは他の国が助けるべしという暗黙の了解がありました。

それを父は頼りました。ですが、結果は一切の返答がなかったのです。

我が国は多大なる被害を受けました。


多くの村が襲われ、多くの男達が殺され、女達は奪われ残された子供や老人達はボロボロの状態でした。

ですが吉報がやってきたのです。我々の救済を無視した源、惷、采駕の3カ国が璉国に倒されたという報告でした。

半年ほど前に新しい王が就いてからと言うもの璉国は見る見るうちに成長を成し遂げています。あれほど疲弊していた大国がここまで持ち直すとは藍光始まって以来の最年少の宰相である陽月ですら予想だにしていませんでした。

ですが、璉国は立て直していましたが、連戦の戦闘を繰り返しているとも聞きました。

戦は命を奪うだけではなく、国自体を疲弊させ、国自体をダメにしてしまいます。

だから璉国国王が非道としか思えません。


それなのに、いきなり父親から言われた言葉に呆然としました。


「璉国国王閃王陛下の元に嫁げ」


王女として望まぬ結婚があるとは頭では分かっていましたが、心は違いました。

何度泣き叫んで、止めるように求めましたが既に決定事項だと言われました。

それも身分の低い寵妃以外は側室もおらず、正妻の座も空席のままだという。

そこに王家の娘が嫁に来るとは正妻に迎えるように無言の圧力をかけるようなものだ。

信じられなかった。実の娘にこのような非道が行えるのかと。

璉国にはいるまで毎日泣き暮らした。

この命を捨て去ることも考えた。

だがそうなれば5つ下の妹にお鉢が回るかもしれないと思うと、捨てるに捨てられなかった。


璉国に着いた日、その日は戦に行っていた軍の大将が勝って凱旋をする日だったようです。

大国だけあって都に真っ直ぐ一本通る大通りには両脇を多くの民が歓迎し、花吹雪が待って将軍の凱旋を喜んでいた。

戦をする人の凱旋を喜ぶなど考えられぬと、喜んでいる民の顔を嫌悪の思いで見つめていた。

そして、凱旋の祝いに宴を開くこととなり、その時に私も献上されることとなった。

それも鳥かごに入って献上されるなど、ここまで来れば諦めもつく。

心を壊し、何も見ず、何も聞かず、全てを塞げばいい。

そんな想いで私は鳥かごの中に入った。


黒い幕が張られ、外の様子を窺い知ることは出来ないが、持ち上げられていた籠が下ろされたのだ。宴の中央に下ろされたのだろう。

陽月のくぐもった声が聞こえる。

もう間もなくで幕が取り外され辱めを受けるのだろう。

ただ怖かった。

膝の上に置いた手がカタカタと震えている。握りしめすぎた手が白くなり、血の通わない死人のような手になっている。

バッと暗い闇から差し込む光。

そして真っ正面に見える玉座に座った氷のように冷たく狂気に満ちた目がこちらを見下ろしていた。

必死にふるえを押さえようと唇を噛んだが、王の冷たい目は一向に変わらない。それよりさらに怒気や殺気やどす黒いものが向けられてくる。

呼吸すらうまくできない。のど元に冷たい刃を突きつけられたように一歩でも動けば殺されると感じた。


そして命じられた。


「殺せ」と。



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