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王の竜玉  作者: ito
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拷問の昼食

閃視点になります。



閃は目の前の光景が信じられなかった。

今閃がいるのは執務室の隣の王専用の休憩室。

そこで神楽と夫婦水入らずの昼食を取ろうと約束し、朝から古狸たちと会議や仕事やり遂げたというのに、神楽は一人でこの部屋にやってこなかった。


「紫翠様、お味はどうですか?璉国の味はお嫌いではありませんか?」


愛しい妻が男装をしてるだけで十分おかしいが、夫である自分を差し置いて別の女、それも俺の愛人候補でやって来た女の世話をしている。

視線で人を殺せるなら俺は確実にこの目の前にいる藍光の王女を八つ裂きにしているだろうが、その前にいる妻の神楽こと竜将軍が防波堤になり、その視線が和らいでいる。

というより、藍光の女は俺なんぞに目を向けずに神楽に熱視線を送っている。

傍に控えている藍光の宰相は何も言わずに木偶の坊にように立っているだけ。

何とか言えよ!!お前のとこの王女が落としに来たのは俺だろ!!なのに何で神楽に視線を送ってるんだよ!!馬鹿だろうお前の所の女は!!


どれだけ心の罵倒しようが、誰に聞こえるのでもなく煮えたぎるような想いが空気を重くする。


「陛下。昼食にそのような雰囲気を出さないでください。せっかくの料理がまずくなります。」


やっとこっちを向いたかと思えば何故俺が怒られなければならない!!

幼子をしかりつけるような竜将軍の叱咤に目を反らして反抗すれば

ヤレヤレといった竜将軍の溜息が聞こえた。

誰も好きこのんでこのような態度を取っているのではない!!


俺が苛つくのはこのほかにも理由はあった。昨日から神楽の様子がおかしかった。

初めて俺の手を拒絶した。

イヤ確かに俺が急いだのがいけなかったのかもしれないが、色々と分かって欲しい。

恋求めた相手が1ヶ月ぶりに目の前にいる。

二人っきりの空間で風呂上がりの濡れた髪に、薄手の寝間着を羽織り濡れた目をして立っていれば、成人男性として不能なわけではないので色々な事情があるんだ。

つい、手を伸ばして抱きしめたとき神楽からふんわりと匂う甘い匂いに俺の理性なんてものは吹っ飛んでしまうかと思えた。

だがそれから先には進めなかった。

俺が抱きしめたことを「戯れ」と神楽は言った。信じられるだろうか?夫が妻を抱きしめることが戯れだと?

既に結婚して半年が過ぎ、契りは行ってはいないが、それなりに神楽へ愛情表現をしてきたつもりだ。それなのに戯れだと?

神楽には俺の愛情は一切伝わっていなかったのだと痛感した。

手を伸ばして触れようとした手を避けられたときは目の前が真っ暗になった。


俺をすり抜け寝台に横になり背を向ける妻に、俺は危機を感じた。

こんなに傍にいるのに妻の心が遠い。離れていきそうで、怖かった。

だから抱きしめて眠った。これ以上離れていかないように。遠くに行ってしまわないように懐に入れて守れるように抱きしめて眠った。

俺が眠ったふりをすると、妻が触れてくるのが分かった。

そしてまた涙を流す。

俺はその涙をいつかぬぐえることが出来るのだろうか?

いつか妻は俺の前で堂々と泣いてくれることがあるだろうか?

愛しい存在をただ俺は抱きしめるしかなかった。


昨日のことを考えると頭が痛い。そして目の前の光景が信じられずに、あまり箸を付けずに早々に立ち去った。

妻に対して恋慕の気持ちを抱く者の様など見たくもない。

いや、妻を誰の目にも触れさせたくない。藍光の国の女の目玉をくり抜き八つ裂きにして国に送り返しても良い。戦になろうが構わない。

どれだけの人が犠牲になろうと構わなかった。

そんなどす黒い気持ちが溢れてくる。

それを悟られまいと席を立った。


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