表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王の竜玉  作者: ito
7/87

運命の出会い④


「っは!!」

閃は文字通り飛び起きた

はぁはぁと荒い空気を吐き出す

周りを見渡すと悪夢の続きのようにつんとくる匂い


がたっと音の響いた

その音に反応して閃の肩がビクンと震えて音の方に目を向けると

つぎはぎの見える服を着た目尻のシワが印象的な70歳位のお婆さんが立っていた


「あぁあぁ、目が覚めたんだね。どうだい、もう体を動かしても傷まないかい?」

ニコニコと笑みを浮かべ、閃の寝ている布団の横に座り温かく見つめてくる


閃はぎこちなくなってはいたが、ふと思い出すと先ほどまだ指一本すら動かすことの出来なかった体が、腕を回しても、立ち上がっても痛まなかった


「な、なんで?」

立ち上がったまま呆然と零した閃の声にお婆さんの目尻のシワはさらに深くなる

「ふふっ、それはね。神楽のおかげだよ。あの子はね、今では私を抜いての薬師だよ。ただちょっと難点はかなり痛みを伴うと言うことなんだけどね。」


笑いながら、持ってきたお盆の上にあるおむすびを閃に差しむける

「お腹すいてるだろ?食べなさい。」


母から施しなど受けるなと強く教わっている閃は首を振ろうとするが

空腹を訴えるお腹はクゥーーとSOSを出してくる


「ふふっ。元気になるにはたくさん食べる必要があるよ。」

そう言われると閃の手は伸びていた

おにぎりを掴むと急いで口の中に入れた


閃の瞳からボロボロと涙が溢れてきた

初めて閃は温かな心に触れた


閃親子がこの村にきた頃、璉国は混乱していた

長い歴史により人口の増大、異常気象により作物の不足に伴う食糧難

また、他国の不穏な動き

そして相次ぐ王の死去である


閃の父親である70代目が死去した後、その嫡子が71代目を継いだ

されど、その数日後に何者かにより暗殺


第二太子がその後を継いだが、武力を好んだ王となり国の抱える問題は他国を滅ばせばよいと号令を出し戦争が始まった

その後は坂を下るように璉国は陰りを見せはじめた


いかに素晴らしい軍事力を持っていてもそれを操れる者がいなくては意味がない

その証拠に戦闘は連戦連敗


軍事の士気は下がる中、72代目は豪遊に走った

後宮に寵妃を100人以上抱え財務は一気に困窮した

そのツケは民に回った

一気に税率が上がり、冬を越すために溜めていた食料をことごとく奪い去られた

民の不満は一気に高まった

一人の将軍が反旗を翻し、この72代目皇帝を暗殺した

その後は血を血で洗う戦いが続いた


そして民は王家に対して失望を抱いた

村から多くの働き手である男達を奪い、作物を奪った


民達は自分たちが生きていくのが必死になり、誰かに優しくすると言うことを忘れてしまった


閃親子はこの村で白い目で見られてきた

そんな村で初めて優しくされた

色々な感情が入り交じって閃の瞳には涙が溢れた


「ぐっ、ごほっ・・ごほっ・・」

急いで詰め込んだため気管に入ってしまい咳き込んでしまう


「ほらほらゆっくり食べなさい。ご飯は逃げないわよ。」

お茶を用意し、閃の背中を撫でる

その笑みに閃はまた嬉しくなる



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ