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王の竜玉  作者: ito
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次世代のために

閃を見送るときに虎を一頭付けた。視察があるので閃の傍にはいられない。警護を虎に任せた。それを理解しているのか、虎もゴロゴロと喉を鳴らして閃に付いていった。


神楽も竜将軍としての休みをとるため、簡易の軍服に何時も道理の面を付けて、外へと出た。出兵のためとはいえ途中で投げ出したような状態だった土木現場が気になっていた。


いくつか門を越えると聞こえてくる男達の威勢のいい声。それは外に向かうにつれてどんどん大きくなる。

壁の向こうには1ヶ月前にはなかった建物が出来上がっていた。まさかとは思ったが、その建物へ向けて足を向けると大勢の怪我を負った兵士達が良い笑顔で仕事をしていた。

すると、門近くにいた片腕のない男が


「あぁぁ!!竜将軍!!!」


とデカイ声をあげた。すると一斉に向けられる視線。厳つい男達の視線に本当に仮面があって良かったと思った。ポーカーフェイスを保ちながら、


「おはよう」


と声をかけた。


「おかえりなさい!!竜将軍!!」


「おかえりなさい!!見てくれ俺たちが建てた物を!!」


「がはははは!!竜将軍どうだ俺たちも捨てたもんじゃないだろう!!」


木材を持っていた奴らや道具箱を持っていた奴らそこら辺にいた兵士達が一斉に竜将軍の元に集まり、取り囲み一斉に話し出した。

何を言われているのか分からなくなるほどあちらこちらから自慢する声や笑い声、迎える声に泣きたくなった。

1ヶ月前とは明らかに表情の違う者達で溢れていた。戦争で足がなくなり、腕がなくなり絶望を浮かべていた男達が良い笑顔で笑っている。そして「おかえり」といって迎えてくれた。途中で投げ出すような形となり、心配していたがそれは杞憂に終わったようだ。


「ハイハイ、お前達。それじゃ竜将軍に何も見せられないじゃないか!ほらほら退いて!!退いて!!」


竜将軍の周りを囲んでいた男達にパンパンと手を叩きながら退けて進んでくる者がいた。

人垣が分かれて目に見えたのは白の将軍阿宗将軍がいた。


「阿宗医師。おはようございます。」


「おはようございます。竜将軍。いやービックリしましたよ。たった1ヶ月でここまで出来上がるとは思っても見なかった。素晴らしい采配じゃ。」


ニコニコと笑う阿宗医師に仮面から出ている口元の口角があがった。


「それよりも中を御覧ください。多くの子供達が来ておりますぞ。それに薬草も出来ております。」


「本当か!是非見てみたい!!」


阿宗医師に促されまま出来たばかりの建物に入った。そこには部屋に溢れんばかりのボロボロの服を着た子供達が先生である官吏の役人に勢いよく質問をしていた。

先生である官吏も負けじと色々なことを教え、白熱するバトルのようで喧嘩腰の授業だ。

先生と目が合うとすぐさま平伏をしてきた。キョトンとした子供達が廊下にいる人物に目を向けた。

好奇心の塊の子供達の視線にドキリとしたが


「キャーーーー!!竜将軍だ!!」


「すげぇーーー!!本物見ちまった!!」


「本当に仮面付けてる!!!」


「すげぇ!!格好いい!!」


先ほどと変わらず今度は子供達に囲まれた。先生が必死になってとめようとしているが、好奇心の塊の子供達は目の現れた国の英雄に釘付けだった。


「フォフォフォ。竜は子供にも人気ですなぁ。ここでは話もできんので別の場所に移りますかのう。」


さっさ逃げた阿宗医師が笑いながら指さす方向に歩こうとするが子供達が行く手を阻む。


「子供達よ、聞きなさい!!」


はっきりと言い放つと、子供達はびしっと背筋を伸ばして固まった。英雄の言葉を一区一言聞き逃せまいと静まりかえった。


「ここで多くのことを学がよい。お前達には多くの可能性を秘めている。次世代をになう子供達よ。大きくなれ!」


「「「「はい!!!」」」」


大きく返された言葉に頷き返し、今度は歩き出した。握手を求められたりペタペタと触られたりしたが、怒らずにクシャクシャと頭を撫でてやった。


何とか建物内から逃げ出し、木陰にて阿宗医師と並んで立った。


「良き目をしておりますなぁ~。」


「あぁそうだな。可能性を秘めた目だ。」


「違いますよ。あなたですよ。全く持って良い目をしております。」


「??そうか?」


「えぇ。貴族官吏の中からまさか平民の子供達を教える先生を選んだとき、無理だと思えました。身分社会の強い中で貴族の物が平民、農民の子供達に教えられる者がいるとは思えなかった。それなのにあなたは見つけていた。これほど良い目をしている者はおりませんのぅ~。まさに竜の目といったところですか?」


「ふっ、何を言うかと思えば。思い違いをなさっておられる。いとも簡単なことですよ。たしかに今の官吏のほとんどが貴族ですが、その中でも身分はある。虐げられている者もその中にはいるのです。経費削減のときに色々な部署を見に行ったときにそこでそのような者達と多くの人に出会った。上司の過度の命令に屈服せずに反発して頑張る者達を何人も見てきた。その反発精神を次世代の子供達にも養って貰いたいと頼み込んだのですよ。最初は断られもしましたが、何度も何度も次世代のためだと頼み込んだら、なってくれました。あとは子供と何処まで向き合えるかです。そこは一種の賭でしたが、私は運が良いようです。」


「こりゃまた凄い発言だ!確かにあなたは運が良い!!そしてこの国も。あなたとそして良き王が国をになう逸材になってくれた。私たち老いぼれは次世代である貴方たちに座を譲るべきなのでしょうかね?」


「そうなれば、すぐにでも子供達の先生としてこき使いますのでよろしくお願いします。」


「おやおやまだこの老体を鞭を打てと?人使いの荒い方じゃ~。ならまだまだ現役じゃのう。」


「ハイ。よろしくお願いします。」


「どっちもどっちじゃ。」


ゆったりとした時間を過ごしていた。戦いのときやその後の治療という戦いの中、忙しなく動いていた時間がゆっくりと流れている。つかの間の平和がとても愛おしく、そして学ぶ子供達の声や生きる喜びを知った男達の声が安らぎになった。


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