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王の竜玉  作者: ito
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久しぶりの朝食


朝日が昇る前に目が覚めた。

昨日泣いたせいか、ぼんやりする頭で今日の事を考えた。

今日、明日と休みは貰っている。建設中の病院や学校の視察に土木場の視察。

兵達の様子に黒の将軍の様子も気になる。彼の背後を調べなければいけない。それに藍光国の姫のこともある。

休みが休みでなくなったなぁと考えながら腹部に回った閃の手を外して寝台から起きる。


「うんっ」っと閃が温もりを探すように手を動かすのを見て愛おしく思ったが、それを振り切り傍にあった水桶で顔を洗う。ひんやりとした水は霞が掛かった頭を一瞬で晴らした。

乾いたタオルで顔を拭いた後、いつものように仮面を被る。

そして音をたてぬように扉から出て下の階へと移る。竜将軍のための部屋として用意されており、寝間着を脱ぎ、小振りではあるが女の証である胸を平らにするためにサラシを巻く。そしていつものように簡易の軍服を着て下へと降りていく。

門を開けるといつものように朝食が入った箱が用意されており、

平伏している兵に対して


「ありがとう。」


と礼を言ってまた扉を閉める。

朝食の入った箱を持ちながらまた上へ上へと上がっていく。何時もと同じ行動なのに何処か違う。ふと考える昨日のことが心を引き留める。


昨日流した涙を聡い閃なら気づいたかもしれない。気づいて欲しいという気持ちと気づかないで欲しいという気持ち。葛藤する気持ちが足を鈍らせるが、最後の扉にたどり着くと吹っ切るように深呼吸をして部屋に入った。

まだ閃は目覚めていないようで、寝台が膨らんでいる。

朝の弱い閃の事思い出して出ている口の口角が少しだけあがる。

閃の為に朝食の用意をする。備え付けの机に箱を置き取り皿を並べお茶の用意をする。

お茶のいい匂いが部屋の中に充満し始めた頃寝台の上の住人が動き始めた。


最後の抵抗のようにモゾモゾと動く姿寝起きの悪い子供のようだ。

最後のあがきに終止符を打つため鉄格子のついた窓を開けた。朝日が昇り窓から入った光が寝台の住人に起きるように警告している。

それでも閃は起き上がろうとはしない。布団を被り必死の抵抗を示している。

ヤレヤレと溜息を吐いて気合いを入れる


「閃起きて!朝ですよ!」


「あと・・少しだ・・・け・・」


モゴモゴと布団の中で抵抗を示す閃に


「ならご飯は一人で食べてくださいね。私は先に出ますので、さようなら」


「はい!起きます!!今すぐ起きます!!すぐご飯食べよう!!」


今まで寝ていたのが嘘のように飛び起き、配膳された机へと真っ直ぐにかけていく。


「閃。先ず顔を洗って。それからご飯にしましょう。」


「うーー。まだ食べないでいてくれる?」


「えぇ。待ってますから、早くしてください。」


バッとかけだし水の入った桶で乱雑にバシャバシャと顔を洗い、手近にあった手ぬぐいでグイグイと顔を拭いて、ものの5秒もかからずに戻ってきた。

水桶も手ぬぐいも散らかっているが、閃の犬のようにパタパタと尻尾を振っているような光景にクスリと笑った。

閃と真向かいの席に仮面を外しながら座り共に朝食を取った。

久しぶりの朝食。久しぶりに味のある朝食だと思えた。

戦場では贅沢な食事などそうそうに食べれるものではない。

ましてや、閃と離ればなれの食事は全く味気なく食欲もなかった。だがこうやって久しぶりの食事で互いに今日のことを話し合い、どうするかを決める。共に考えるべき案件があるなら休みといえど閃の執務室に出向くことを約束した。


何時も道理の1ヶ月前と同じ食事を風景にホッとした。閃が昨日のことを気にしていないことが、何より嬉しかった。問い詰めればギスギスした空気になるのは分かっていた。だからあえて言わない閃にホッと溜息を吐いた。




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