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王の竜玉  作者: ito
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竜の涙2

更新を遅れましたこと大変申し訳ありません。


薄い扉の向こうで声を抑えた泣き声がした。

微かな声は聞き取りにくいほど小さくか細い。

薄く開いたドアから中を覗けば、湯浴みが終わったのか薄い寝間着が体に張り付き、伸びた髪からポタポタと雫を垂らしていた。

その細い肩は小刻みに揺れ、必死になって声を押し殺していた。

気づかぬふりをして、


「神楽!!戻っているか!!」


そう声をかければビクリと体を震わせ目元を拭いている。

それから数秒して扉に手をかけて中に入り込むと、何時もと同じように薄い笑みを浮かべて微笑む妻がいた。


「宴は終わったのですか?」


あれから勝手に宴を退出してしまったが、戻る気はしなかった。

閃の警護をしたかったが、何より敵国のレオンに正体がばれている以上彼に不用意に近づきたくなかった。


「あぁ。狸共と呑んでも面白くもない。そうそうに出てきた。」


頭に乗った冠や装具を外しながら疲れたと言わんばかりに神楽に甘えてくる。

昔からこうやって疲れを見せ甘える閃は変わってはいない。

その行動に笑みを浮かべながら閃の上着を預かりシワにならないように折り畳んでしまい、新しい寝間着と帯を持ってくる。着付けの手伝いをしながら、息が掛かりそうなほどお互いを密着させる。最後の締めとばかりに腹側に留める帯を締める。ふとおでこに掛かる閃の吐息に気づかないふりをしながら一生懸命に手を動かしている。

帯が締め終わり離れようとした瞬間、ギュッと抱きしめられた。

目の前には閃の少し弛んだ寝間着の向こうに着やせした体が垣間見える。

ドクドクと全力疾走しているかのような鼓動音が聞こえる。それは自分の音なのかそれとも閃のものなのか分からない。

ただいきなりの行動に頭が混乱し、振り払うように閃の体を押し退けた。

スルリと離れた閃の体

ふと目が合う閃は悲しげな表情で見てきていた。


「・・・た、戯れは止めて閃。・・もう疲れたの・・休みたいの・・」


その目を反らして、下を向きながら言い放つと


「・・そうか・・すまなかった。休むが良い。」


そういって伸ばされた手にビクンと反応して、その手を避けて寝台に横になった。横向きになり閃に背を向けながら必死になって目をつぶった。


異常なまでに心臓が高鳴っている。音のない静寂の中ただ自分の心臓の音だけが大きく聞こえた。

だがその音も逆側の寝台が沈むギシッという音によってかき消された。

パサリと布団が捲られ、閃が寝台に入り込んでくるのが分かった。


「お休み神楽・・・」


そういって背中に閃の熱を感じた。背中から抱きしめられ腹部に回された閃の大きな手。

耳元には正しい呼吸音が聞こえ閃が寝ていることが分かった。


神楽はゆっくりとその手に触れて、声もなく泣いた。

この温もりを他の誰かが知るかもしれないと思うだけで嫉妬の情念で身を焦がしそうになる。この暖かな腕の温もり、包み込む暖かさ。

だが、その熱に愛しく思うと同時に離別を早くせねばと思う気持ちも強くなる。

この温もりを手放せなくなってしまってはいけない。

あまりにも不釣り合いな自分。一刻も早くここから出て行くことを決めながら、今だけはこの温もりに抱かれていたい。

閃の温もりに包まれながら疲れからかすぐに意識は暗闇の中に落ちていった。


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