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王の竜玉  作者: ito
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いざ虎穴の中に!!①

今回の話しは少しではありますが揺れについての表現があり、この度の震災を思い出されて不快に思われる方がいるかもしれません。気分を害する恐れもありますので、すぐさま戻られることをお勧めします。一切の責任が持てませんのでよろしくお願いします。

竜将軍と翔大が森を駆け下りた頃にはすでに日は落ちていた

片手に松明を抱えて敵軍がいる城へと虎を走らせた


松明の火に敵軍の城の兵達は慌ただしく


「敵襲!!」


と叫んでいる


矢で威嚇されるもののスルリと避けて


「我ら璉国からの使者である!!お目通りを願いたい!!和睦を求めに来た!!」


高らかに叫ぶ声に矢は飛んでくることはなく

ゆっくりと城門が開いた


「翔大、これより本気で覚悟を決めろ。」


ゴクリと息をのんで


「は・・・はい。」


震える声を押し隠してしっかりとした声で応えた翔大に部下の成長を嬉しく思う


「では行くぞ。はっ」


虎は声と同時に駆けだし開いた城門をスルリと潜った


城門を潜るとあからさまな好奇の目にさらされた


「オイオイあれ誰だ?」

「璉国って子供が兵隊さんなのかよ?」

「虎に乗るなんて一体どんな奴だ?」

「可愛いねぇ!!俺たちの夜の相手をしてくれよ!!」

「そうだそうだ!!お偉いさんが終わったら俺たちの相手してくれよ!!」


小柄な背丈で仮面を纏った竜将軍の格好はまるで将軍達の稚児のような存在と思った敵軍の兵達はあからさまに侮蔑の言葉を投げかけた


「あいつら!!」


先ほどのおびえなどはなくして今にも飛び出しそうな翔大を押さえて


「翔大。旗を持て。」


「あっ!はい」


脇に抱えていた棒に巻き付けていた布をクルクルと捲り、竜将軍の旗印を掲げるとその声は驚きの声に変わった


「なっ!?あれって?」


「敵大将の旗印じゃ?」


「まさか?敵大将が殴り込み??」


一触即発の空気を破るように


「道を空けよ!!!」


道が開いた先には高官らしい格好をした武官が部下を引き連れ歩んでくる


「璉国の使者とはあなたのことですか?」


「はい。私璉国は閃王の近衛兵隊隊長、竜と申します。」


その応えに兵達のざわつきは大きくなる


「静かに!!」


「璉国の使者よ。我らの将軍もあなたにお会いしたいとのこと、ついてこられよ」


囲まれていた人垣は分かれて道を造った

その道を迷うことなく歩き出した

翔大と虎達も習うように抱えた旗を倒さぬように竜将軍の一歩後ろ歩んできた


通された場所は城の中枢部なのか大きな窓もなく閉鎖的な空間だ

ただ通ってきた道は城を襲った後の血糊や傷が多くあり、死臭まで漂っていた


「使者をお連れいたしました」


道案内のものが上座に向かって声をあげると好奇な視線が一斉に向かってくる


「ほぅこれはこれは、このような稚児しか璉国にはおらぬのか?」

「可愛らしい兵隊さんじゃ」


ニヤニヤと笑う敵軍の将達に嫌気がさすが冷静さを保ちつつ、真っ向から見つめ返した


「夜の来訪を許可いただきありがとうございます。私、璉国は近衛兵隊隊長竜と申します。今回全軍の指揮を任されております。」


「「「なっ!?」」」


「「「こんなガキが!?」」」


あちらこちらから声が上がった

璉国の近衛兵隊といえば軍の最高位だ。

それが目の前にいる


ここでこの者を討ち取れば、この戦は勝利と同じ意味をなす

だが、そんな奴をわざわざこの和平交渉に先陣切ってくるだろうか?

答えは否だ

あり得るはずがない。

ここはどうすべきかとここにいる誰もがお互いの顔を見合わせてどういう対応をとるかを牽制し合う


(どうやらこちらの思うとおりになっているようだ・・・)


お互いの顔を見合わせた時点で何とかなりそうだと思えた


「今回参りました訳は、明白かと思いますが降伏を勧めるためです。無駄な血を流したくないため即刻の武力解除を願いしたい。」


優雅に礼の姿勢のまま言葉と同時に懐から和睦文書を差し出した


「なっ!!ふざけるではないぞ!!何故我々が降伏せねばならぬ!!」

「無駄な戦いが嫌ならそちらが降伏すればよいではないか!!」

「そうだ!!それにそなた一人で我々を脅せると思っていたのか!!!」


プルプルと怒りに震えながら叫び出す者

激高して剣を持ち出す者

その様子を観戦する者

様々な思いで張り詰めた空気が包み込んでゆく


「静かに!!!」


その空気を破ったのはやはり竜将軍だった


「みんなさんは私が何もせずにここにやって来たとお思いですか?これでも一国の軍の将です。自分の意味をしっかりと理解しております。それ故にみんなさんに降伏文書を渡す役目を受け持っただけです。それに・・・・聞こえませんか?我が軍の足音が?」


仮面から見える口が鮮やかに弧を描く

ドキリと心臓が嫌な音を立てる


「あ、足音だと??」


ズーン・・・・ズーン・・・


最初は聞き取れるかどうかの小さな音だった

音の出所を探ろうと不安げな声を出した男の傍にあったグラスの水が波紋を広げる

小さな波紋がどんどんと数を増やしてグラスを揺らし始める

カタカタカタからガタガタと音が大きくなる


独りでにガタガタと揺れて歩き出したコップはテーブルの端まで行き着くと自らテーブルか飛び降りた。


ガシャーーーーン


音を立てて割れたコップは粉々に砕かれ、中の液体も飛び散った

壁の石がギシギシと鳴りだして、灯り火が揺れる

照らされた影が部屋全体に揺れる

揺れは大きくなりこの部屋にいるものの誰もが感じられた


窓もないのにドドドドドドドドドッ部屋全体が揺れる

誰もが机の下に逃げたり、互いに支え合ったりその揺れに抵抗する


「大変です!!!!火が火が迫っています!!まるで竜だ!!竜が攻めてきます!!!」


転がり込んでくる伝令兵に竜将軍は笑みを濃くする


「どういう事だ???」

「な、何が起きているというのだ??」


誰もが未だにとまらぬ揺れに顔面を蒼白にさせる


「先ずは自分の目でご確認したらどうですか?」


全てを知っているかのような竜将軍の声に将達は我先にと部屋から飛び出して外の様子を探りに出た



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