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王の竜玉  作者: ito
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戦いの準備


自分の天幕に戻ると翔大が虎たちに食事をさせていた


「あっ!将軍お帰りなさいませ。」


天幕をあげて戻ってきた竜将軍に近づき背中と羽織を脱がすのを手伝って貰う


だいぶ従者として慣れたのか、私が欲しいものを迷いながらも差し出してくるようになった


「翔大・・次は確実に戦場の前線に私は行かなければ行けないだろう。お前には「ついて行きます!!」


「翔大」


竜将軍の羽織を握りしめた翔大は震えながらも真っ向から見つめ返してきた


「俺、さっきの戦いで竜将軍について行くことが出来ませんでした。戦うことはイヤだけど・・・俺は・・竜将軍の部下なんだ!何処までもついて行きます!!しっかりと旗を持ちますから連れてってください!!」


90度に曲げられた礼に溜息を吐いた


「・・・分かった。だが、絶対に私のそばから離れるな。必ず守るかな。」


「はい!!」


満面の笑みを浮かべた翔大に苦々しく口角をあげて


「それより私の羽織を綺麗にしておいてくれよ。」


「えっ・・・あ!あぁぁぁあぁ!!」


力強く握りしめた羽織は無惨にもシワシワになっていた



それからもう間もなくで太陽が傾き空が赤くなり始める頃に騎馬軍の準備は整った

馬上に乗り整列した軍に対して竜将軍は


「そなた達は璉国、いやいかなる国の猛者より馬術がうまいと聞く。」


「おう!その通りだ!!」


兵の中には声をあげて賛同する者もいた

その声にニヤリと笑みを浮かべて


「そうか。では、そなた達には松明片手に敵陣に前方まで走って欲しい。敵陣に着いたら囲って威嚇してやれ。あまり近づくなよ!敵の矢の的になるかもしれぬからな!出立は今より一刻の後、戦闘開始は朝日が昇ると同時に攻め入る!ついてこれぬ者はすぐさま馬から下りていろ!!」


誰一人として馬から下りないことを確認して


「健闘を祈る!!」


竜将軍の声に唸るような声で兵達は応えた

兵達に背を向けてこちらを試すように見ている紅将軍の傍へと歩みを進める

真っ向から対峙するにはいささか緊張もするが竜将軍自身この紅将軍には絶対的信頼を置いていた

閃が王にたったとき傍で王を支えたのはこの男だった


「紅将軍、では私は和平交渉に行く。騎馬軍を任せたぞ。」


「お一人で行かれるのですか?」


「部下を連れて行く。単騎の方が動きやすいから、この方がよい。それと、敵軍は必ず降伏させる。それまで攻めはいるのは待ってくれ。太陽が昇るまでで良い。待ってくれ」


「必ずとはどれ程の保証がありますか?」


「我が名にかけて」


意志のあるはっきりとした声に歴戦の将である紅将軍でさえ息をのんだ


「分かりました。ご無事のご帰還お祈り申し上げます。」


「あぁ。互いの無事を」


竜将軍は歩き出した

もう一つしなければいけないことがあった

今回の計画で最も重要となる作戦だ


(この計画が成功するかどうかはあやつの忠誠心と私の統率力が問題だ・・・・。でも決めた以上やるしかない・・・)


竜将軍は歩みを止めることなく歩兵部隊へと近づいた


「これはこれは竜将軍。もうお発ちになったのかと思っていましたよ。」


隻眼の将軍である黒の将軍玄偉将軍が残された右目で睨みつけてくる

黒い羽織を纏い黒の甲冑を纏った姿は黒の将軍にふさわしい風貌だった


こちらを探るように淀んだ瞳は憎悪が含まれている

隠そうともしない感情に相当嫌われているのが分かる

されど、この戦勝つためには歩兵部隊の力が必要だ

意を決してその憎悪に真っ向から向き合った


「玄偉将軍に歩兵部隊の収集は出来ているか?」


「お望みの通り。」


指さされた方には軍の6割を占める歩兵部隊が列をなしていた


「兵の皆よく聞け!!今より騎馬軍が出撃の後、お前達には松明を持って一斉に山を駆け下りて貰う!!」


竜将軍の言葉にざわつきが起こり始めた


「夜の山を駆けろだと!!」

「そんな無茶な!!」

「危険じゃねぇかよ!!!」


夜の山といえば夜行性の猛禽類が目を覚ます時間帯だ

ましてや歩兵部隊は一番下位の兵達からなるためほぼ平民や徴収された農民で構成されている

武人として育ってきたわけではない者達に考えなしとも思える命令に批難があがる


「確かに、夜の森は危険だ。されど皆には松明を与える。それを持って駆け下りて貰いたい。大軍で動けば、森の動物たちも襲っては来ないだろう。それに、敵情前の陣に早く付けた者から褒美を取らす!!制限人数は決めておらんから早く来た者には我が部隊の入隊も考えよう!!」


竜将軍の部隊

近衛兵隊の部隊

軍最高の部隊に軍最下位の自分たちがもしかしたら入れる

夢のような話しに兵達は活気づいた


「皆の健闘を祈る!!!」


竜将軍の声に兵達は怒濤の声をあげた

「よろしいのか、その様な嘘を並べて?」


「玄偉将軍。私は嘘はつかない。褒美のことは考える。私はただ一つ勝利を信じて戦うまでだ。それはあなたも同じでしょう?」


仮面越しから見つめると玄偉将軍は苦虫を潰したかのように眉をひそめ、


「軍の用意がありますので失礼。」


そういってさっさと自分の天幕へと去っていった


「失礼ですね!!玄偉将軍って!!竜将軍あれでよかったのですか?」


翔大がシワを伸ばした羽織を抱えてボソリと呟いた


「私はまだ若輩者だ。睨まれることはよくある。されど、王が信頼して軍を任せて貰った以上私はそれに応える。例えどんなに暴言を吐かれようとも認めさせてやる。・・・それより、準備はよいか?いくぞ。」


「はい!!用意は万端です!!」


すり寄ってくる虎の頭を撫でてスルリと跨った

それに見習うように翔大もよじ登って虎の背に跨る


「はっ!!」


竜将軍のかけ声と共に二頭の虎は主と従者を乗せて森の中を駆けていった





次の話からちょっと地震に似た表現のある話しになります。

時期的にとても書いていて不安になってしまい書くスピードが落ちていました。


未だ震災の傷が癒えぬ今、不適切だと思い少し考えさせてください。

いずれは載せるつもりです。それまでお待ちください。

拙い文章に評価や感想をありがとうございます。

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