奇策を用いて敵を討て!②
地図を見ながら浮かぶ考えは一つ
正に運を試される一手に決心が鈍ってしまう
だが王城に残した閃が心配だ
地図から視線をあげて将軍達を見渡す
こちらを品定めするような視線や好奇の視線、心配する視線など様々だが真っ向から向き合った
「この戦い・・・・火を使う」
「ふっ・・・」
「何か言いたげだな、呂将軍?」
竜将軍の発言に露骨に噴き出した変わり者で有名な黄の将軍、呂鐘元が礼をとっている
「竜将軍。よろしいでしょうか?」
「発言を許可する。言いたいことがあるなら顔を上げてはっきり言え!腹芸は好かん。」
「それでは申し上げます。竜将軍は武芸に秀でているようですが、策略はもう少し慎重になさった方がよろしいですよ。」
「というと?」
「はい。風は山から吹いてございます。もし火を使うようなことがあれば火は風下であるこちらに向かってきます。つまり我々の方にです。お解りですか?」
最後を誇張をしたような言い方に明らかにこちらを馬鹿にしていたが、竜将軍はピクリとも動かなかった
「その様なことそなたに言われぬとも分かっている。」
「なっ!!!」
逆に竜将軍から馬鹿にしたような発言に呂将軍は顔をゆがませる
「李将軍!!そなた確か水軍なら天候を読むのがうまいと思うが、どうだ?」
「お、俺かよ!?」
呂将軍と竜将軍の真っ向からの対決にニヤニヤと見つめていた李将軍はいきなり意見を求められて驚きはしたものの
「うーーーん。確かに今は山側から風が吹いて天候は二、三日乾いた晴れ間が続くと思うぞ。だけどよ・・・」
「そなたは気づいているのだな。西側の空に浮かぶ雲は季節の変わり目の雲か?」
「おおおっ!?気づいてたのか?すっげぇな!!あの雲を見分けられるなんてそこらの水夫より天候読めるじゃねぇかよ!!」
「話を戻せ李将軍!それで風向きは変わるのか?」
「あぁ。変わるぜ!保証する。山に向かって吹く風に変わる。」
「なっ!!」
「まさかそんな!?」
水夫以上に天候が読める人間は軍の中ではなかなかいない
李将軍は特に天候を読むことに優れている
その彼が認めたとなるとざわつく天幕内で確信を得た竜将軍は
「この戦い火を使う。されど森を燃やすわけではない。将軍達に告ぐ、これよりある物を兵達に採ってきてくるように命じてくれ。森なら必ずある物だ。」
ニヤリと口角をあげる竜将軍に歴戦の将軍達も背筋がヒヤリとする
この将軍は一体どれだけの知恵を持っているのか
幼げな風貌でこの迫力、誰もがその魅力に引きつけられた