再戦!!
城まであと少しとなったある日のこと
竜将軍は翔大と共に虎の餌をやるため陣の中を歩いていた
「お!!いたいた!竜将軍!!」
呼び止められる声に振り返ると副官をつれた李将軍が歩いてくる
「李将軍。」
「やっと見つけたぜ。ったく、治療室だと阿宗将軍に追い出されるし、夕方いくと王の天幕だし見つけるの大変だったんだぞ」
李将軍は何気なしに話しかけてくるがその周りの副官は竜将軍を睨みつけている
「あの後は大丈夫でしたか?」
「キサマ!!」
「ふざけるな!あのような無礼!」
あの戦いの後李将軍の治療を阿宗将軍に任せていたので、その後を知りたくて聞いてみたが、副官が噛み付いた
今にも飛びかかりそうな副官達を
「黙れ!」
李将軍の声に副官達は後ろに下がったが手は剣に触れている
「ったく。すまねぇな。部下は海賊上がりが多いんだ。血の気が多くてな。すぐ喧嘩しちまう。まぁ、俺もそうだけどな。」
カッカッカッと笑う李将軍
「それでよう。手治ったか?」
包帯に覆われた左手を見つめてくる
「傷はふさがった。開かないように包帯をしているだけだ。いつでも戦えます。」
「そりゃあ良かった!再戦だ!まさか、剣術じゃなくて、体術でくると思ってなかったからな。あん時は油断したが次はやられはしない。」
「それを言うなら、あなたこそ、手を抜いたではありませんか。」
「なんのことだ?」
「あの時、手に怪我をしていたから同じ突きしか繰り出さなかったのでしょう?あなたほどの方が同じ相手に同じ技を最初に出すとは思えない。手を抜いていたことは確実です。」
「確かに。あん時は手負いの奴を倒してもつまんねぇからな。だがなあの突きは自信があったんだぞ。それを簡単に避けるとはなぁ。あんたは強い。だから倒しがいがある」
獲物を狙う猛禽類のような李将軍の覇気にブルブルと震える翔大を背に隠して
「では、手合わせをお願いしたい」
真っ向から竜将軍は受けて立った
「あぁ!今からいいか?」
「結構です。」
「だったら、こっちだ!」
李将軍に連れられて、副官達と竜将軍と翔大は歩き出した
連れてこられた場所は陣から出た場所だった
雑草が生えた平らな場所で将軍二人は真っ向から向き合った
離れた場所で副官達と翔大、噂を聞きつけた野次馬達が周りを囲んでいた
「でっ、武器は棒でいいのか?」
「殺し合う試合をするわけではないから、これでいい」
棒を前に尽きだし構える竜将軍に応えるように李将軍も剣を構えた
ピリピリした緊張感が包む
お互いに間合いに入る一歩手前でお互いの動きを見つめる
見守る兵士が息をのんだ瞬間
「「はっ」」
お互いに動いた
竜将軍は剣の刃の部分を避け柄の部分に棒の切っ先を向ける
それが分かっていたのか、李将軍は棒を斬りにかかった
それに気づくのが遅れた竜将軍の棒の切っ先は斜めに切り取られた
パサッと落ちた棒の切っ先が二人の間に落ちた
棒は半分以下の長さになり、50センチ程しかない
「負けを認めるか?」
ニヤリと笑う李将軍に副官達も歓声を上げる
勝利を確信しているのか、歓声が大きく上がる
「まだ早い。これでも武器だ。俺に負けを認めさせたいなら、地面に平伏させてみろ」
「そう言うと思ったぜ!!」
笑みを浮かべ一気に間合いを詰めた李将軍は剣を振り上げた
それに応えるように竜将軍も懐に飛び込んだ
下から突き上げるように棒の切っ先を向けてくる
普通であれば上段と下段の刀が重なり合うところだが、竜将軍が持つのはただの木の棒
このままでは顔面に刀が当たってします
そのことが李将軍の手を鈍らせた
ガキィィィィン
金属の音が響く
「なっ!!」
「嘘だろ・・・」
ザワザワと野次馬達は見ているものが信じられなかった
李将軍の剣は竜将軍の仮面に当たっている
だが、李将軍の首には竜将軍の棒の切っ先が当てられている
少し刺さっているのか首には血が滲んでいる
「ふっ」
李将軍は笑って剣を退けた
それに合わせて竜将軍の棒も退く
「あはははははは!!負けだ負け!!強いなぁアンタ!全く負けだぜ」
豪快に笑って竜将軍の背をバシバシと叩く
「な!李将軍!!」
「そんな!今のは李将軍の」
「黙れ!!俺が認めた!!負けたことを認めたんだ!!誰一人として文句は言わせん!!」
不平を言う副官達を李将軍は一喝して、向き合った
「アンタホント強いな。まさか仮面で剣を受け止めるとは思わなかったぜ。それほどまで、命をかけられる存在か?」
「あぁ。」
「分かった。だったら、俺はアンタを近衛兵隊長に認めるぜ。」
竜将軍に前に跪き、頭を垂れた
こうして、竜将軍はまた新たな地盤を手に入れた
この李将軍、アホのように見えるが凄腕の船長である
璉国の水軍全てを管理する将軍であり、他国でも知れ渡っている
また、剣術の腕なら璉国で5本の指にはいるほどの剣術使いである
彼に認められることは並大抵のことではない
彼が認めた以上彼の兵達は竜将軍に忠誠を誓うしかなかった
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